ランクヘッド
体温
ランクヘッドと出会ってから1年余り。これほどまでに、自分が抱いていたバンドに対するイメージをメキメキと変えられるとは思わなかった。内省的で、何処か冷めている、そんな、この時代ならではのバンド。それが、私の当初のイメージだった。実際、楽曲も小高が心に止め処なく溢れる悩みや訴えを赤裸々なまでに綴ったものが多かった。が、しかし。最近は、バンドの本質は逆のところにある気がしてならない。そして、そういった本質がどんどんライヴで露わになってきてる気がしてならない。暑苦しくって、そこに多くの人を巻き込もうとしてて。つまり、ポップフィールドに向かうべきバンドということ。その想像は、昨年12月のリキッドルームでのワンマンを見て確信となった。フロアにはたくさんのコブシと真っ直ぐな視線、そしてステージにはただ演奏するだけではなく積極的にコミニュケーションを求めるバンド。それぞれ個で燃え上がるのではなく、全体で塊となって燃え上がっている光景がそこにあった。こういうストレートな熱が楽曲に落とし込まれ、フロアだけではなく世の中に放射される日が来ないだろうか。そんなふうに思っていた矢先、届いたのがこの“体温”。リキッドをはじめとした昨年の全国ワンマンツアーでも、「手を耳に当てたとき、生きてるって感じた」という小高の前置きつきで披露されていた楽曲だ。激しい演奏と切ないメロディが導火線を辿るようにじわじわと進んでいき、サビで爆発を起こすこの曲。虚飾も躊躇いもない展開から、ストレートに熱が胸に飛び込んでくる。そして歌詞。「君が生きているということがただもうそれだけで こんなにもこんなにも 心が震えて涙が出ることに 意味とか理由とかそんなものは要らない」――湧き上がる言葉にできない感情は、「生」という生きとし生ける者すべてが抱えるものをスケール感を以って捉えた言葉となった。これだ、と思った。ライヴで表れていた彼らの本質が、楽曲でも剥き出しになって燃えはじめたんだ。またカップリングには、今までのランクヘッドを踏襲したような内面世界が切々と響き渡る“ハイライト”と、ぬくもりが全身に染み渡る珠玉のバラード“三月”のリキッドルームでのライヴ音源を収録。触れてもらえれば、進化がかたちになっているのがわかるだろう。
2005年のランクヘッドにさらなる期待をしたくなる、大きな進化盤がここに生まれた。
高橋美穂(ロッキング・オンJAPAN編集部)