ランクヘッド

すべて（初回盤）

初回盤のみエキストラ使用：マル秘映像パートⅡ収録

これは、ランクヘッドの「すべて」である。
――これだけ書いてライナーを終えてもいいんじゃないかぐらいの気持ちである。そんだけ、能書きがいらないほどこの曲には「すべて」が詰まっているのだ。聴けばすぐわかる。みるみるうちに曲に飲み込まれて、わなわなと体が震えてくるような、凄まじい気迫。そして思わずぼろぼろっと涙が零れてしまうような、大きな愛。そんな、抗いようもない力がこの曲にはある。血も涙も肉体も記憶も志も――つまり「すべて」を掛けないと生み出せないような力が。
　あたたかなメロディにまっさらな感謝の気持ちを託して軽やかに歌い上げた『カナリア　ボックス』で、ぐっと風通しいい陽の世界に踏み込んだランクヘッド。その時のインタヴューで小高は、次作のアルバムについて「かなり腹の括れたアルバムになると思う」と話していた。とは言え。早くもシングルで、「すべて」と名付けるほどに全身全霊を掛けた曲を出してくるとは!!　彼らが登場した時には、蒼く燃える炎の様な真っ直ぐな勢いに打ち抜かれたけど、今の彼らからは、それ以上に威力がある、全方位的に飲み込まんばかりの気概を感じる。何にも恐くない。自分たちの何もかもを曝しながら突っ走っていく。そんな、底知れぬエネルギーが彼らを突き動かしているように見える。
　時に歌にならないような、ちょっぴり泣いてる様にも聞こえる声で、小高は我武者羅にこの歌を叫ぶ。うねるベース、泣きのギター、走り出したくなるドラム。感情が満ち満ちて溢れ出してしまいそうな、凄まじくエモーショナルな演奏が、最初から最後まで続く。それは激しいのに、たくさんの後悔から救ってくれるような安心感を与えてくれる。この曲は、小高が、そしてランクヘッドが、自身に向けて歌っている歌でもあるだろう。けど、この歌力で、たくさんの「あなた」に響くことは間違いない。いつの間に、こんなに強く、歌を届けられるバンドになったんだろう――。このままいくとアルバムが恐ろしいほど楽しみだが、今はまず、この曲に打ちのめされてほしい。あなたの生きたすべての日々を、強く激しくそして優しく、抱きしめてくれるこの曲に。
高橋美穂（ロッキング・オン）