小林 香織/KAORI KOBAYASHI
KAORI KOBAYASHI
ファイン
FINE
※M3、5、7、9はカヴァー曲、<カッコ>内はオリジナル・アーティスト
●05年2月のデビュー・アルバム『Solar』に続く2ndアルバムはプロデュース&アレンジに笹路正徳を起用し、参加メンバーに笹路正徳(kbds)、村上“ポンタ”秀一(ds)、野村義男(g)、土方隆行(g)、日野賢二(b)、岡沢章(b)、カルロス菅野(perc)、さかいゆう(vo)、ストリング&ブラス・セクションも参加した強力サウンドに、スペシャル・ゲストとして日野皓正(tp)も参加した話題満載の会心作!!
ライヴ・ステージの空気感(LIVE感)をスタジオに持ち込み、パワフルでエモーショナルなサックスが響き渡ります。5曲のオリジナル曲は彼女ならではのピュアな感性溢れるバラードから、ミディアム、アップ・ナンバーまでバラエティに富んだ楽曲でコンポーザーとしての才能も発揮し、カヴァー・ナンバーはライヴで演奏していた楽曲を中心にセレクトしました。
2005年6月4日、CROSSOVER JAPAN '05でコトは起きた。デビューして3ヶ月という23歳の新人女性サックス奏者が、オーディエンスをサブ・ステージ前へ釘付けにしてしまったのである。サポート陣は村上“ポンタ”秀一(ds)、笹路正徳(kbds)、野村義男(g)、日野賢二(b)から成るスーパー・バンド。新人にとってはまさに檜舞台だ。しかし当の小林香織は、プレッシャーなど何処吹く風。たった3曲の短いパフォーマンスを堂々こなし、敏腕ミュージシャンとの演奏を身体いっぱい楽しんでステージを降りた。オーディエンスも彼女のキュートなルックスに目を奪われたり、豪華なバックに驚いたり、若手の女性サックス奏者を珍しがったりと、足を止めた理由は様々。しかしその反響はすこぶる大きく、即売ブースに用意されたデビューCD『Solar』は瞬く間に売り切れたという。これを機に彼女の知名度は急上昇。初めてのビッグ・チャンスを見事掌中に収めた。
「夢だったんです、ああいうの。ジャズ・クラブで”Yeah!!”っていうのもいいけど、私の目標はサックスで武道館をいっぱいにすることですから」
この1年で彼女は大きく成長した。それこそ本人が「『Solar』をリリースしたのが3年前みたい」とこぼすほど濃密な時を過ごし、今も成長の真っ只中。そこでこのセカンド・アルバムは、ズバリ、CROSSOVER JAPAN '05 の空気感(LIVE感)をそのままパッケージすることをコンセプトとし、ステージを共にした笹路正徳がプロデュース/アレンジを担当した。
特に小林が成長したのは曲作りだ。「作曲は苦手」と言っていた彼女が、今は「自分の作品の方がやりたいことを表現できるし、そこまでやらないと意味がない」と言い放つ。みんなで力を合わせて作品を創り上げる喜びも味わった。その成果はココに収録されたオリジナルの5曲にハッキリ表れている。
もうひとつの注目点がサックス・ソロである。自分もジャズ・ミュージシャンの端くれという彼女は、ジャズ的な即興、アドリブに対する思い入れがひと際強い。だからソロに関しては、ほとんどがリズム隊との一発録り。互いに触発し合った時のテンションを重視し、時時のグルーヴを大切にする。
「プロとアマチュアの差は精神的なもので、テクニックじゃない」と語るあたり、ミュージシャンとしてのアイデンティティも確立しつつあるようだ。
こうして生まれた第2作『Fine』には、タイトルにふさわしい明快さと飛び出さんばかりの勢いがある。そう、あの頃のフュージョンが、熱くハジケていたように。もっとも当人はそれを“古いモノ”とは思っていない。しかしプロデューサーの笹路がこのアルバムを“温故知新”と表現したように、ここには古き良きサウンドと新しい感性のキラメキが華やかに火花を散らしている。
「やっと自分を思い切り表現できたというか、今度の作品もまたファースト・アルバムの様な新鮮な気がします。1人でも多くの人の心に届いてくれたらうれしいです!」
これからの小林香織、こりゃあ大化けする日も近いかもしれない。
(音楽ライター 金澤 寿和 / Toshikazu Kanazawa)