降 る プ ラ チ ナ

今回のアルバムでは、保刈久明くんに全面的に協力してもらいました。彼は私が表現したい音の世界をとても正確に形にしてくれました。保刈くんによると「絵を描くように音を足していった」ということです。ごく一部の人にしか理解できない抽象画ではなく、誰にでも風景がみえてくるものにしたい、質の高いファンタジー小説のように、人から人へ伝わっていくようなアルバムにしたいと、一貫して考えてつくりました。全体を通して表現したかったことは、ものごとを「浄化」または「昇華」させていく心の過程です。
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01 スプートニク
  作詞 新居昭乃 作曲 新居昭乃 保刈久明 編曲 保刈久明
毛利さんも2度目の宇宙で活躍され、スペースシャトルの打ち上げシーンも見慣れたはずなのに、地球の重力に逆らって空を目指す姿には今でも鳥肌がたちます。スプートニクは人類初のロケット。帰ってくる予定のないロケットに乗せられたライカ犬もいました。自分ではどうすることもできない運命のようなものが人生にいくつあるでしょう。イントロでのロシア語は、エフトゥシェンコの詩の世界を、セリフにしてもらったものです。「そして一人の男が死ぬとき/彼の最初の雪も死ぬ/最初のくちづけも、最初のけんかも。」曲中にでてくる「クローカ」は後にソユーズ2号に宇宙飛行士と共に乗せられたライカ犬の名前です。この曲は、先に歌詞ができて、保刈君が考えてくれたコードの流れの上で、殆どアドリブで作りました。

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02 願い事
  作詞 新居昭乃 作曲 新居昭乃 編曲 松林正志 保刈久明
恋をするといつでも、自由に心を遊ばせることができるし、勇気も湧いてくる。人々の眠る窓を全部たたいて、この人を愛してるといってまわりたい。例え思うようにいかなくてもただ単純にまっしろい気持ちで人を愛したい。それが私の願い事。葛生千夏さんのコーラスとエンジニアの松林さんのデジタル民族系(?)のリズムが、この曲を私の目指していた「奇麗なだけじゃないファンタジー」にしてくれました。

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03 ガレキの楽園
  作詞 新居昭乃 作曲 新居昭乃 編曲 保刈久明 新居昭乃
友達は純粋で、人が考えているだけのことにさえ傷ついてしまう。鏡のように、透明なガラスのように物事をみせてくれる。この友達のためなら、自分はどんなめにあってもいいと思える。そういうことを歌いたくて書いた曲です。このアルバムの中で一番力強い曲だと思います。

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04 Flower
  作詞 新居昭乃 作曲 新居昭乃 編曲 保刈久明
まわりの女の子たちを見ていると案外本当の気持ちはしまい込んでしまって、傷つくよりは何ごとも起こらないで欲しいと思う人が多いように感じます。一生涯ヒミツにするような思いを、女の子は誰でも胸に抱いているに違いありません。それは、太陽がふたつ見えるどこか遠い惑星の風景のように神秘的。そして男の子たちは、それを知っていて黙っているような気がしてなりません。ずるくて優しい、そんな繊細な心と、細見魚君が演奏するウーリッツアの音がとってもぴったり。

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05 Orange Noel
  作詞 新居昭乃 作曲 新居昭乃 編曲 保刈久明
三重野瞳さんのアルバム23.4に書いた曲に新たに歌詞を書いたセルフカバー。行き違いになってしまった男女は、森ではぐれた子供のよう。もう一度出逢えるおまじないは?それとも動かずにじっと待っている方がいいのでしょうか?

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06 愛の温度
  作詞 新居昭乃 作曲 新居昭乃 編曲 保刈久明 新居昭乃
人は死んでしまっても、愛の温度だけはこの世に存在し続けるような気がします。この曲はオケができあがって、海の底に沈んだ船が軋んでいる音に聞こえる部分からイメージして歌詞ができました。

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07 Reve
  作詞 Passiflore Baldassari
  作曲 新居昭乃 編曲 松林正志 保刈久明 新居昭乃
夢という意味のタイトル。歌詞の主人公は自分を信じて奔放に生きる少女です。10年以上前にフランス語で作ったモチーフのまま眠っていた曲を起こして、パリ在住の女性作詞家の方に歌詞をつけていただいてやっと完成しました。エンジニアの松林さんがアルバムの他の曲を聴く前に、純粋にこの曲に一番似合うリズムトラックをつけてくれて、「60年代のフレンチポップスのカバー」のようになるとおもしろいかな?と言いながら、保刈君が可愛らしく仕上げてくれました。

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08 音叉
  作詞 新居昭乃 作曲 新居昭乃 編曲 保刈久明 新居昭乃
以前、山中湖のスタジオで何気なくピアノをさわっていて出来た曲です。その後、この曲はいったいどんな風景を歌っているのだろうと3日間ずっとそればかり考えていたら、草原の上、巨大な音叉がいくつもガラスのチューブにはいって空に浮かんでいる夢を見ました。ガラスの中では共鳴することもない音叉。 でもいつかガラスがなくなり、一斉に共鳴音が鳴り響く時がきて欲しい。私は夢の中で、音叉の下をどこまでも歩いていこうとしてました。理由もない閉塞感から「解放されること」を表わしたくて、シンプルなアレンジで、広がるようにしたいと思いました。

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09 赤い砂白い花
  作詞 新居昭乃 作曲 新居昭乃 編曲 新居昭乃
去年の春、親友がモロッコのマラケッシュで結婚式を挙げることになり、総勢20名のちょっとしたツアー に参加しました。私はマラケッシュという土地に魅了され、滞在中はずっと夢をみているようでした。これは結婚式の前夜に、ホテルの部屋で作った祝婚歌です。ラクダに乗せられたウエディングドレス姿の親友は本当に、アフリカの赤い土に咲いた一輪の凛とした花のようでした。

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10 降るプラチナ
  作詞 新居昭乃 作曲 新居昭乃 編曲 保刈久明
子供の頃の私の憧れは父でした。8歳の時、父が家に帰らなくなり、その頃から私は曲を書き始めました。父が出ていったのは自分のせいだと、子供はどこかで思ってしまうものですが、去年の初夏、すべてを浄化し、許し、癒してくれるような美しい光景に出会いました。そして浮かんだのがこの曲です。チェンバロとピアノとサンプリングで組立てられた音が、その時の情景描写になっています。

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11 メロデイ
  作詞 新居昭乃 作曲 新居昭乃 保刈久明 編曲 保刈久明
誰かの存在が、私を楽器のようにしてくれて、自然に音楽になってしまう。「愛する人は音楽そのもののような存在」という気持ちを込めて、このタイトルにしました。Charaさんのサポートで知り合ったASA−CHANの繊細なパーカションと、今堀恒雄さんのギターがとても素敵です。

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