「First Pain」について

TVアニメ「エレメントハンター」のオープニングテーマの話を頂いて、ちょうど今年の2008年から2009年の年が変わる年末年始、 この「First Pain」をつくっていました。「エレメントハンター」の主人公である子供達は、自分たちの星を守るために過酷な運命を受けながら奮闘し戦います。

私は子供達に「この世界はこんなに素晴らしい」と言うことを自信を持って言うことはできないし、「ごらんの通り、大した世界じゃない」とも、もちろん言えない。

すでに大人の私は「生きる」ということを、何度も自分の中で片付けてきたのだと思います。それは時に「諦め」、「受け入れる」という形で心にしまい込んでは、また出しての繰り返しだったと。何か小さな光のようなものを、幻のように見いだして生きてきたにすぎないのです。

そんな私が12才の少年少女に何を言ってあげられるか?というところでかなり考えました。
「生きる」そして「死ぬ」いつも対になってる言葉。

近年、アニメーションの曲を作らせて頂いている中、 それぞれの物語の中で、必ずこの「生き死に」が中心にありました。

その度ごとに尺度を変えながら、歌にしてきたつもりではありますが、ここに来て言葉を失った感がありました。どんな言葉を重ねても、行き着かないもの。人を変えて行けないもの。いろんな事が見え始めてくると、逆に言葉が何も浸透していかない無力さも感じたりして。
私は一人の大人として、彼らに向けての「言葉」を持っていないのです。
そんな自分の迷いやジレンマみたいなものを、そのまま歌にぶつけてみることにしました。

今、私は今しも折れそうな子供いたら、ただ抱きしめるとか、羽交い締めしてでも守る。嘘を重ねても。そんなことしか思いつかない。その場しのぎでもいいから。説教や言い含める時間などないんだから。衝動的であっても、理屈なしでこちらが動くものに対して、初めて人は心動かされるのではないでしょうか?そこに深い愛情が存在するから。それを子供たちは肌で感じることができる。

この曲は最後に「生きて 生きて 生きて」と叫ぶように何度も歌います。
今の石川智晶だったら、「生きて」という言葉も言えるかな?と思いました。
ちょっと前だったら、むしろ躊躇していたかもしれません。

この言葉は「生きてほしい」という意味よりも、 「生きてみる」という意味の方が私の中ではしっくりきます。
生きることに何かを見いださなくてもいい。
ほとんどの人が名を残さず死んでいく中で、自分の存在を存在価値にまで考えなくていい。生きているというだけで完璧なんだから。

「エレメントハンター」の子供達の背中を、少しだけでもさすってあげられるような曲になってくれればと願ってます。
この「First Pain」のPVはアイルランドで撮影もして来ました。
シングルの「誰も教えてくれなかったこと」も「First Pain」 の続編のような静かな曲です。是非、聴いていただけると嬉しいです。

「エレメントハンター」http://elementhunters.com/
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