- ――当初はどんな音楽をやっていたんですか?
-
Yukko「エモーショナルなロックですね。私はギター&ボーカルでした」
nakame「入る前は普通にのあのわのお客さんとして観てたんですよね。ひょんなことから一緒にやることになって、3人揃ったのが03年。その後はメンバーがなかなか固定できず、ライヴも練習もできない暗黒の時期が続きまして……」
ゴウ「基本、家に集まってパソコンと向き合ってました」
- ――その時にチェロに出会ったんですよね? 引きつけられた理由は?
-
Yukko「やっぱ大きさですね。とにかくでっかい楽器。映画『本当のジャクリーヌ・デュプレ』を観てすごくいいなって思って。大きいのに出しゃばらす、伝わってくる音色は繊細。1年くらい恋焦がれながらやっと手に入れて、みんなの反対も押し切って。“何とかなる!”という思いだけでした」
nakame「もう“What's?”ですよ(全員笑い)」
ゴウ「基本、バンドスタイルが好きなので、ドラム、ギター、ベース、ボーカルがいればやっていけると思っていたし、抵抗ありましたね。まず大変そうだなって思ったんですよ」
nakame「そんな中、強行突破してきたんで(笑)」
Yukko「1回見せちゃったら、nakameちゃんとか“やばい、いいね”って(笑)」
nakame「新しい楽器が入ったから、他の音が出せる楽器も欲しいよねってキーボードを入れる流れになったので、チェロがきっかけで広がったところはありますね」
- ――そこからバンドとしてどう変わっていくんでしょう?
-
nakame「チェロはメロディを弾くような楽器なので、どういう場所に入れていくか、というところから始まりました。音域も中域なので、ギターともかぶるし、ベースともかぶるし、どういうメロディを弾いたらいいのか?と」
Yukko「そんな考えないで、とりあえずメロディを弾いちゃえ!みたいな」
nakame「Yukkoちゃんはそう思ってたろうけど、こっちは考えていたんだよ!?(全員笑い)」
Yukko「……ごめんね(笑)」
nakame「彼女は取り入れたあとも強行突破の姿勢を崩さなかったんですよね(笑)。で、取り入れたら取り入れたで“いけるかも”っていう手応えもあったんです。結果、ゴウちゃん(ギター)が多少引っ込んだという」
ゴウ「フレーズが飛び交ってるので、普通のバンドよりは音がケンカしてると思うんですよね。逆にそれが自分らの中ではアリだなって思っています」
- ――のあのわは転調や変則リズムも多いですしね。
-
本間「ドラマーの視点で考えるとドラマー的なフレーズになってしまうけど、逆にみんなが出してくれたものでドラマー的に見たら変だと思うものでも、あえてやってみると全体のアンサンブルが面白くなったりするんです。人と同じことをやってもつまらないし、面白いことがあったらやろうっていうスタンスでやっていますね」
荒山「キーボードは色んな音が出るし、色々なことができる。その中からどれを選んでどういうプレイをするかは相談しながらやっているんですけど……。結果的に楽曲全体に効果的な役割を担っていたりするので、美味しいポジションだなって(全員笑い)」
Yukko「いつでもチェロを全面にっていうわけではなくて、持ってない方がいい曲もあるし、私にはタンバリンというもう1つの武器があるんですけど、タンバリンで楽しさを出すこともあるし。あくまでもバンドの中の“いち楽器”という位置づけですね」
- ――みんなフレキシブルな考えなんですね。
-
ゴウ「それがモットーですね」
nakame「何でもあり。あれもしたい、これもしたいって欲張りなんです。昔は“何がしたいのか分からない”って言われたんだけど、僕らからしたら“そういうことがしたいんだ”っていうことなんです。面白いと思ったものには純粋に反応して、形にして、いいものが生まれればいいじゃないかっていう考え方なんで、あんまり束縛したくないですよね」
- ――07年末に「nawanowa demo. e.p.」(※1)の楽曲を配信してから1年を経て、2月18日にいよいよデビューアルバム『ゆめの在りか』がリリースされますが、この1年間は?
-
Yukko「めまぐるしく変わっていったので、自分たちの中でうんと葛藤した1年だったし、バンドとして曖昧にしていた部分がだんだんと明確になってきて、ライヴにおいても責任を感じる1年でもあったし。色んな人に出会って“音楽っていいな”と改めて思えたり。すごく濃い1年でした」
荒山「あっという間だったよね」
nakame「みんなですごく話し合ったし、こいつはこういうことを考えてたんだっていう再認識もできましたね。話し合ってみると意外とギャップがあったりして。バンドの意思を再確認した1年でしたね」
- ――アルバムが完成するにあたり、キーとなったのは?
-
nakame「やっぱりタイトル曲の『ゆめの在りか』ですね。自分たちにも分からなかった“のあのわって何がしたいんだろう”“のあのわってこういう感じだよね”っていうイメージの柱になってくれたのがこの曲だったんです。出来たとき、みんなピンときたよね?」
ゴウ「聴かせたときから反応が違った。“いい曲書いたんだ、俺”って思いもあり(笑)」
- ――出来上がってみての感想は?
-
Yukko「思いがいっぱい詰まっていて、終わって聴いたときには自分でもグッときました。すごくキラキラしてるし。1曲1曲の思いが蘇ってきて感動しましたね」
nakame「『nawanowa demo. e.p.』は、録音も自分たちでやってたので音楽的手法も分からないままで、斬新でありながらも納得のいかない部分もあったんですよね。そこが今回のアルバムのレコーディングで埋めることができた。同じ曲でも全然違います」
本間「デモの時点では僕は叩いてないので、アルバムが初めてののあのわのレコーディングなんですよね。まだまだ下手だなぁと思いながら聴いてましたけど、やっぱり感動しました。長い時間をかけて作った曲だし、ライヴで何回もやって思い入れが深かったので、最終的な形はこうだったんだって改めて再認識もできました」
nakame「アルバムの最後に収録されている『ハク』は、まだ3人だけだった時の最後の方に作った曲だったので、やっとか……みたいな思いもあり」
ゴウ「長かったね。歴史が詰まってる感じだね」
nakame「だから感慨深いですね。何回アレンジ変えたか分からないってくらい練ってたし、それが1つの形として見えたのは嬉しいですよね」
ゴウ「ここで一区切りつけることができて、始まりに相応しいアルバムになったんじゃないかなと思います」
荒山「僕が入ってから出来た曲、本間くんが入ってから出来た曲もあるし、今も作っているんですけど、のあのわってどんどん変わっていくんですよね。その過程の作品を、この不景気な状況の中、なすべくして世の中に届けられるのではと思っていて。聴く人の力になれるような作品になってほしいって強く思いましたね」
Yukko「エネルギーになるような。聴いて“頑張ろう”って思ってもらえると嬉しい」
本間「うん。ちょっとしたきっかけになってくれれば。音楽を届けることって、聴く人の人生にちょっとだけ介入することだと思うので、プラスの方に後押しできる何かになればいいよね」
ゴウ「このアルバムには“希望”が描かれていると思うんですよ。今の時代、“希望”とかって恥ずかしい、とっつきにくい言葉だと思うんですけど、きっと伝わるっていう自信があるので、ぜひ“のあのわワールド”に来てください」
- ――のあのわの自由な発想、音楽がどんな風に変化を遂げるのか楽しみです。
- nakame「アルバムはこれまでの集大成的な作品なんですけど、今ののあのわは着眼点がまた別なところにあって、そういう曲が溜まってきてるので、早く完成させて出していきたいですね」
- ――おぉ! すでに次なる方向に……?
- ゴウ「向かってますね。アイディアはいっぱいあります。絶対面白くなると思いますよ」
(取材・文/高橋公子)
(※1)「nawanowa demo. e.p.」の配信は既に終了しております。