美樹本さん インタビュー(抜粋)

___メガゾーン23はちょうどマクロスの直後になると思うんですが、その頃の経緯などを。
美樹本: 当初マクロスの劇場をやってる最中に、板野さんと石黒さんと平野さんと製作会社各社で企画として進んでたんですよ。それで僕はほとんど企画がかたまってから参加することになりました。
___で非常に珍しい、スペシャルゲストデザインとしてコアになるキャラクターの時祭イヴのキャラクターデザインをやってらっしゃったわけですが、その時どのようなオーダーが?。
美樹本: バーチャルな、実像のないキャラクターで、こういう舞台設定でっていうのを最初にいただきまして、そこから、どういう歌手であるかとか、見た目がどうであるかっていう具体的な部分を板野さんの方からいただきました。マクロスの方が完全なアイドルだったんで、もうちょっとロック調でいきたいんだつていうお話がありましたがそれくらいですね。
___ビジュアル的にはストリートオブファイヤーを意識したような舞とかですね。
美樹本: それは板野さんの方から注文が。板野さんが当時あの映画が好きで、僕も見てましたんで、そういった話はいただいたと思います。
___最初のイヴに関して美樹本さん的なねらいというのは。
美樹本: 企画の段階からお話いただいていればともかくね、実はわりといきなり来たんですよ、こちらには。当時マクロスが幸いヒットしていて、そのなかでビデオアニメを始める…今ほどビデオアニメがポピュラーじゃなかったじゃないですか。色々あったみたいなんですけれど、結局僕のところにはいきなり話が来て、発表会があるからすぐイメージボード描いてくれって。こちらもマクロスで歌手一人描いて、その後また歌手描くってのは…というのが正直ありましたんで、その作品の内容がどうこうじゃなく自分がデザインする上で歌手が一番しんどいよなっていうのがちょっとありました。ああいうキレイどころのキャラクターを何パターンも描けるほど器用じゃないですから。ねらいといえば、その中でいかにミンメイと目先を変えるかという、ほとんどの一点でしたね。板野さんからの注文を上手く生かすほどの余裕もありませんでした。正直なところ。
___ミンメイでは入ってない要素をイヴに入れてみようと。
美樹本: そうですね。だからミンメイの方がどちらかと言うと、当時は顔で言うとちょっと面長なタイプでやってまして、髪もわりと普通に黒っぽい、実際アニメ上では紺とか紫でしたけど、基本的には日本人とか中国系をイメージしたキャラクターだったんで、それととにかく引き離そうとしましたんで、イヴの方は流行りの逆三角形で、髪の毛はもう真っ白で行っちゃおうかとか、そういう程度ですね。
___アイドル系のキャラクターに関してはかなりお得意だと思いますけど、イヴでここは上出来だったなっていう部分は。
美樹本: 例えば2とか3で、アニメの画面上で作監の方がやってくださった部分に関しては別ですけど、僕個人の作業で言いますと、正直言って辛いですね。かなり後悔とか、もうちょっと何とかしたかったという気持ちの方が強いですね。ただ皮肉なもんで、サイン会とかで色紙に書く時があるじゃないですか。そうすると今でも結構イヴってのは注文が多いんですよ。で、困ったことに割と自分でも描きやすい(笑)。
___イブの絵はポスターなどにもたくさんお描きになってらっしゃいますね。
美樹本: 僕の場合、運がよかったというか表に出るパーセントが割と多いんで非常に描いてるように見えるだけで、アニメーターとしての仕事を何年もやってらっしゃる方が実際こなしている絵の量から比べたら、やっぱり微々たるものですよ。表に絵が出るようになった時点でも、他に出てる方に比べたら遥に少ない量しか描いていませんし、かといってプロになる前に、そんなに一生懸命たくさん描いていたかって言うとそんな事もありませんから。だからひどい言いかたしますと、仕事で色々描かせていただいて練習したような感じですね。色々と状況が変化しているときだからこそ許されたようなものです。まわりの人に恵まれてたんでしょうね。
___一本目ではイヴの作画でもお入りになってますね。
美樹本: 1だけは一部原画やってますね。原画とかキャラ修正をやらせていただいて。
___その中でご記憶にあるシーンとかは。
美樹本: 一応覚えてはいますけど、でも忘れたいなっていうところですね(笑)。だから当時メガゾーンに限らずマクロスなんかもでも一応キャラ修正して原画を多少いじるところもありますけど、それは本当に一部であってきちんと作画監督としてやれたわけじゃないんで。だからものすごくコンプレックスありましてね、周りには平野さんとか板野さんとか上手い人ばっかじゃないですか、だから板野さんはもちろん、平野さんのマクロスのテレビのオープニングのレイアウトと原画を見て、うわっすげえなって思ってましたから。
___そのほか作品全体で面白いシーンとか印象に残ってるシーンってありますか。
美樹本: シーンのイメージだけで言うと、1のラストの印象って好きですね。あの負け戦で終わっちゃうっていうのが。
___もう渋谷の街、足引きずりながら。
美樹本: それから絵でいうと、どのシーンってわけじゃないですけど、2の梅津さんの作画はね、印象強いですよね。やっぱりカッコいいなって思いますね。やっぱ自分にないものは羨ましいですよね。率直に言って。立場上修正入れましたけど、1でも梅津さん原画のイヴがありましていいなって思いました。
___例えばですね、メガゾーンの4がもしもあるとしたらですね、もう一回時祭イヴをっていうのは。
美樹本: 面白いからやりたいと思いますね。4でもリメイクでもいいですけど、イヴってキャラクターは今のほうが多分生かせるキャラだと思うんですよね。今の技術で映像化したら面白いだろうなと思いますね。
___美樹本さんご自身でキャラクターを3Dで構築してみる。
美樹本: 面白いですよね。今3Dのキャラクターの方何人かいらっしゃるじゃないですか、でもアニメとかマンガっぽいキャラクター性っていうかそういうデフォルメを入れつつ面白いなっていうのは少ないですよね。ごく数えるほどしかいないじゃないですか。難しそうだなとは思いますよね。
___バーチャルだから特に留意した部分というのは。
美樹本: いや当時、モニターに映るって話だけだったんで、そのバーチャルだからどうってのは全然意識してません。だけど、例えば板野さんなんかはコンピューターに詳しいんで、今やっぱり板野さんが監督でたってメガゾーン作りなおしたらかなり面白いもの作れると思うんですよね。
___ボックスのジャケットについて教えていだきたいんですが。
美樹本: どちらかというとアイドルっぽい感じではなく、もうちょっと背景にある退廃的な雰囲気みたいなものを絵に出したいなって。いままでにないタイプになってるんじゃないですかね。