風味堂

interview

ソロでも風味堂にいても、「渡」として同じ存在の仕方をしていたい。

—— 風味堂の活動休止から再始動までの約2年半、渡さんはソロアルバムを2枚発表し、全国弾き語りツアーも行っていましたが、この2年で自分が変わったと思うことは何ですか?

渡 まず、ライブのやり方が変わりました。風味堂の中では自分が楽曲のために演じなくてはいけないというところがあって、そこで少し疲れていて、そういうことをやめて自然体で弾き語りをやろうとソロをやり始めたんです。ひとりだからすごく緊張もするけど、続けていくうちに、何となくですけど、ソロでのライブのやり方が見えてきたんです。だから今は、ソロとして得たライブの感覚をそのまま持ったまま風味堂に戻れるなという感じなんですね。

—— そこまでの感覚が持てるまでには2年という時間が必要だったんですね。

渡 いや、2年でも全然足りないというのが実感ですね。だからまだまだ弾き語りで勉強することはあるなと思いつつの風味堂なので、風味堂にいてもソロでいても自分の色があまり変わらないようになったらいいかなと思います。「渡」として、同じ存在の仕方をしていたいんですよね。変に分けて考えるのではなくて。

—— 渡さんは、ひとりで弾き語りをすることの面白さのひとつに、曲順も好きに変えられるし、お客さんの空気を見ながら自分で流れを作っていけるところを挙げていましたよね。

渡 最初はそれが怖かったけど、いざやってみるとだんだんクセになってくんですよね。途中で音を止めたりもできる。それで好きな時に復活できたりとか。

—— 駆け引きが楽しめますよね。

渡 お客さんとのやりとりがしやすいのは弾き語りかもしれないですね。ひとりだから「ここはこうしてくださいね」という指示ができる。「ひとりだから、みんなが手拍子しないとこの曲はできませんよ」と言ってみたり、みんなの手拍子のノリが悪いと「それではできません!」と言ってみたり(笑)。そういう駆け引きがひとりだとやりやすいんですよね。弾き語りをやることによって、お客さんとの距離が近づいた感じはしましたね。編成が地味になるし、小さいカフェなどが会場になる。そういうところではお客さんはラフに楽しめるだろうというイメージを持っていたんですけど、実は真逆で、ああいうところの方がお客さんは緊張するんですよね。

—— そうですね。近いからね。

渡 だからそこを崩していくことが毎回必要だったんですけど、それができるかできないかが、いいライブかそうじゃないかというところに重なるぐらい重要なんです。だからそういう意味ではお客さんと近づく術はかなり学べたような気がします。しかも曲順も自由だし、誰に相談せずともできるというのは、物理的な意味でもラクではあるんですよ。例えば演奏が乱れても、それがいい方に転べば良かったねとなるし。でもその分この曲は決めなきゃというのがすごく重要になってきます。そういった緊張感もありつつ、外してはいけない曲と、ここはユルくやった方がいいとか、そういうライブの流れを作っていくことの面白さと難しさを学んでいった弾き語りライブでした。

—— 同時にライブは、弾き語りだけでなく、バンドでもツアーをしたんですよね?

渡 『a diary』のリリースライブでバンドでやりました。バンドも「サポートです」という姿勢ではなく、「バンドの一員」みたいな感じでやってくれたんですよね。セッションを楽しんでくれていることがお客さんにも伝わって、それはそれでまた弾き語りとは違うというか、どうなんだろう……、もしかしたら弾き語りに近いのかな。弾き語りをやってる感じのままバンドがいるという感覚でできたんです。

—— それは渡さんが以前、風味堂の中で歌っていた自分とは違う感覚ですよね。

渡 そうですね。風味堂のスイッチを入れてたあの頃とは違うんですよね。自分のペースでラクにやっているところにバンドもいてという。『a diary』の時のバンドでのライブって、自分の弾き語りでもバンドでも印象は大きくは違わないと思うんです。音数が多いか少ないかという違いだけで。あれをやってから、風味堂に戻ったから、風味堂のチャンネルにパッと戻るということじゃなくて、自分でピアノを弾いて歌う渡という人がいて、同時にバンドがいるっていう感覚になれているところがあるんですよね。  風味堂というバンドはベースとドラムにすごく個性があるので、その混じり方というのは全然あっていいと思うんですけど、自分の在り方というか、個人的に自分はこういうふうにいようというのがだんだん見えてきている感じがしますね。そう思うと、今までは考え方がすごく狭かったと思うんですよ。この曲は絶対にこういうテンションでいかなきゃダメだって思い込んでいたところもあったから。

—— それが自分を苦しめていたところがあった。

渡 そう。自分で作った曲なんですけど、毎回これをやるのもキツいなってことがあって(苦笑)。だから曲の作り方も変わったかもしれない。自分の性格とあまりにもかけ離れたような曲は今のところ作ってないですからね。

—— ということは、渡くんにとってソロの2年間は、ひとりの音楽家として自分がちゃんと立っていくことを望んでいたというところがあるんでしょうね。

渡 そうだと思います。やっぱり風味堂の頃にあれもこれもと結構雑多にやってきて、いろんなジャンルでいろんな都合に合わせて曲を書いてきたし、人格や性別も変えてきたんですね。じゃあ自分というのは何だろうということを一度振り返った時に、自分の性格や内面というものを曲に出したことがなかったなと思って。それをやることがソロの期間で必要だったことかなと思います。

3人でライブをやった時、戻ってきたという安心感があった。

—— ソロでの経験を持った上で、もう一回風味堂として音楽を鳴らした時に、全然違う感覚でメンバーとは出会えましたか?

渡 不思議なもので、先日3人でライブをやったんですけど、ライブをやる瞬間、「あ、風味堂だ」っていう雰囲気に入れたんですよね。何か、違和感とかあるかなと恐れていたんですけど、すごく自然だった。その時はアコースティックのセットだったんですけど、なんかやっぱりここなんだろうなという感じはしました。

—— 戻ってきた感じがあったと。

渡 安心感がまずはあって。3人の雰囲気や感触はやっぱり相変わらずで。しかも2人もそれぞれサポート業をやっていたので演奏の安定感は増してる感じもして、昔よりもラクに、どっしりできてる感じはありますね。僕の歌い方もたぶん変わったと思います。曲によるとは思うんですけど、歌い回しのチャンネルの数が増えたし、今の方が自然な歌い方をしていると思うんです。

カメラマン:Nohagi Naka
インタビュー:Miho Kawaguchi (SWITCH)