はっぴいえんど、ティン・パン・アレイ、そして様々なセッション・ワークでと、日本のポップス・シーンを支え続けたギタリスト、鈴木茂は、とてもギタリストらしいギタリストである。
決してこれ見よがしにハデなソロを取ることはないし、オレがオレがと出しゃばるタイプではないが、音楽全体のサウンドをしっかりと支え、それでいて存在感あふれるプレイは、彼の大きな魅力である。
鈴木茂は1951年12月20日、東京・世田谷生まれ。ヴェンチャーズの影響でギターを始め、中学生の頃にはすでに“天才ギタリスト”と呼ばれていた。
69年に細野晴臣、大滝詠一、松本隆と共に“はっぴいえんど”を結成して、オリジナル・アルバム3枚をリリース。アメリカン・ロックのサウンドに、日本語の歌詞を乗せた彼らの楽曲は、日本の音楽シーンに大きな衝撃を与えた。
73年に同グループ解散後は、細野晴臣、松任谷正隆、林立夫とセッション・ミュージシャン集団“キャラメル・ママ”(後に“ティン・パン・アレイ”へと発展)を結成し、日本のポップス・シーンのサウンド・クォリティを引き上げることに大きく貢献した。
75年のティン・パン・アレイのアルバム『キャラメル・ママ』は、日本ロック史に残る名盤として、今なお高い評価を得ている。そして75年からはソロ・アーティストとしての活動も始め、歴史的名作『BAND WAGON』をリリース。
また佐藤博、田中章弘、林敏明らと“ハックル・バック”というグループを結成する。同グループはわずか1年弱で解散してしまうが、伝説のグループとして今も語り継がれている。
その後彼はソロ・アーティストとして『LAGOON』(76年)、『CAUTION!』(78年)、『TELESCOPE』(78年)、『WHITE HEAT』(79年)、『COSMOS' 51』(79年)、『SEI DO YA』(85年)とリーダー作をリリースし、ソロ・アーティストとしての地位を確立していった。また70年代後半からはアレンジャー/プロデューサーとしての活動も始め、吉田拓郎からWINKまで、 数多くのアーティストの作品を手がけている。
2000年には、細野晴臣、林立夫と、ティン・パン・アレイの再編成プロジェクト“TIN PAN”を始動、アルバム・リリース、そして全国ツアーを行ない、大きな話題を呼んだ。
このCDは、そんな鈴木茂の、79年リリースのインストゥルメンタル・アルバム『WHITE HEAT』の全曲に加えて、彼のこれまでのリーダー作や、オムニバス・アルバムに収録されていたインストゥルメンタル・ナンバーを集めたコンピレーション・アルバムだ。全編インストゥルメンタルということもあって、まさに彼のギタリストとしての魅力が凝縮された作品だといえる。なお、特別に表記していない曲については、すべて『WHITE HEAT』に収録されていた楽曲で、鈴木茂のオリジナルである。ちなみに「Wild Fire」以外の『WHITE HEAT』収録曲は、今回が初CD化だ。 (解説:熊谷美広)
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