INTERVIEW

―ライヴ・アルバム『LIVE TOUR 2015‐2016 "FOLLOW ME UP" FINAL at中野サンプラザ』、ツアーでの素晴らしい光景が蘇る音源です。あらためて聴いてみていかがでしたか。

「すごくいいツアーだったので、こうして形に残せて嬉しいです。セットリストには新しいアルバム『FOLLOW ME UP』からはもちろん、“Life id good”や“ちびっこフォーク”など、かなり久しぶりに歌った曲もありましたので、それをセルフカバーみたいな感覚で今の解釈で形に残せたのも良かったなと思います。私自身、あらためてこうしてライヴ音源を聴いて、すごいミュージシャンの方たちに囲まれてたんだなって鳥肌が立ちました(笑)。歌だから音程とかリズムとか、もちろん大事なんですけど、そういうところだけじゃなくてその場にあった熱みたいなもの故に、こういう歌になっているということを、そこに居た人と近いくらいの体感でCDでも味わってもらえたらいいなと思っています」

―『LIVE TOUR 2015‐2016 "FOLLOW ME UP"』には、このツアーならではの幸せな空気感がありました。真綾さんのステージでの佇まいにも、お客さんの反応を受け止める余裕みたいなものを感じましたし、そうした変化がハッピーなムードを生み出していたのかなと。

「そうかもしれないですね。当たり前ですけどお客さんも毎回違うわけで、毎回違うその場の空気を感じながら<今日はこうなんだな>と色んなことを客観的に見てる自分がいました。それにバンドのメンバーとも一体感があって、ステージの上にいい空気がいつもありましたから、それがお客さんにも伝わってたかな?っていうのはありますね」

―初回限定盤には密着映像DVDも付きます。

「中野サンプラザ公演で密着のカメラが入っていたんですが、お客さんやバンドのメンバーのインタビューまで撮影されていることを知らなかったので、この特典映像が出来上がってから私自身、すごく楽しませてもらいました(笑)。このツアーでは色んなことがあって、どの日のステージもそれぞれに手応えがあったので、全て映像に残してれば良かったなんて思うくらい、それぞれに思い出深いです。私の中でも思い出がいっぱい蘇ってくる内容にしてもらえて嬉しかったので、皆さんにも是非見ていただきたいです」

―同日発売となるシングル「Million Clouds」の方は、TVアニメ『あまんちゅ!』のOPテーマだそうですが。それもあって海やダイビングを思わせる歌詞なんですか。

「そうですね。私自身はダイビングをしたことがないので歌詞はきっとこうなんじゃないかなっていう想像で書きました。このオープニングテーマを歌わせていただくことになって、色んな曲を聴かせていただいた中でイメージに合うなと思ったのがFrida Sundemoの曲でした。彼女はスウェーデンのアーティストですし、デモの段階ではちょっと寒い景色やクリスマスっぽいイメージが浮かびそうなアレンジだったんですよ。それを河野(伸)さんに<伊豆の海っぽくしてください>ってお願いして。打ち込み中心だったデモから弦とかの生音を増やしたアレンジになった時に、夏というよりは海や空といった大きなものに視線を向けている、すごく開けた景色が思い浮かぶような曲になった気がして。そこから歌詞がイメージしやすくなっていきました」

―歌詞の中にある、新しい私や、新しい物語を思わせる瑞々しさというのはどんな想いから?

「『あまんちゅ!』が女子高生たちの話なので、違う世代の方たちではありますが、何か新しいことを始める時の怖さと、一歩踏み出せた時に途端に世界が始まる感じ――この主人公たちはそれがダイビングなわけですけど。ひょんなことから新しいことを始める高揚感ってあると思いますし、私もいつも新しいところに足を踏み入れていく自分でありたいなと思うので、そういうところに共感しながら書いていきました」

―カップリングの「ロマーシカ」にも通じるメッセージ性ですね。

「この曲も『あまんちゅ!』をイメージしてつくったので共通のテーマを持つものになりました。ただ<ロマーシカ>の方は女の子ふたりの親友同士の友情という部分に視点を変えて書いてます」

―「ロマーシカ」はご自身による作詞・作曲ですが、開放感のあるメロディと幸福感のある歌詞というのが、やっぱり前回のツアーを経ての真綾さんな感じがしました。

「それはあると思います。<ロマーシカ>はトータルで受ける印象として走り出したくなるような曲にしたかったんですよね。歌詞の中に<君>という存在が出てくるんですけど、それは聴く人にとって親友でも恋人でも親でもいいんですけど。自分とは全然似てないけど、でも自分にはないものを持っている人。そんな人がふいにかけてくれた言葉で、ハッと全ての辻褄があるような瞬間がある。似た者同士の良さもあるけど、悩んでたことに対して全然自分とは違う視点から『何だそんなことか』って言われたら『そんなことだったのか!』って思えたりとか(笑)。自分とは全然違うタイプの人と知り合うことで世界が変わっていくこともある。そういう人間関係があるのっていいなと思いながらこの曲を作っていました」

―誰かと分かち合うことで生まれる喜びを描くというのは、ここ最近の真綾さんのモードでもあるのかなと思うのですが。

「それは願望でもあるんですけどね。たまたますごくいい瞬間を歌っているから前向きな曲ばかり並んじゃってるんですけど(笑)。私だってもちろん、毎日がこんな風に思えるわけじゃない。でも時々、思い立ったが吉日じゃないですけど、急に思いもよらないスイッチが入ってすごいエネルギーが湧いてくる時ってたまにあると思うんですよね。私もそんなにしょっちゅうバイタリティに溢れているタイプではないんですけど。なんかそういう得体の知れないちょっとしたスイッチが入って力が自分から湧き出てくるみたいな、そんな時はそのまま流れに乗ってみたいなという歌詞です。この2曲だけ聴いてると、この人、よほど前向きなのかな?っていう感じがしますよね(笑)」

―でも無理はない感じはしますよ(笑)。

「後で気付いたことですが、いつも見ているものや普通にあるものが実はすごく特別だったということを両方の曲で言っていて。それは今の私が、歳を重ねてより強く思うことですし、そういうのが出てるのかなと」

―それはまた新鮮な気持ちで音楽と向き合えているということにも繋がるんですか。

「そうですね、音楽もそうですけど日々の生活も含めて全てにおいて。だって、小さい時からこういう仕事をしてきて、30年近くずっと同じことをやっているわけですよ(笑)。もちろんそのスタイルはそれぞれに違ったりしても、寝て起きて食べて仕事して、平たく言ったらそれだけの30年ほどを、過ごしているはずなんだけど。そうなってくるとやっぱり、当たり前すぎちゃうこともいっぱいあって。当たり前になっちゃってたな、と急にある時に気付いたり。それは30歳を過ぎた頃から、そういう風に目が覚めるみたいなことは多いんですね。今は本当に、これが普通だと思ってたけどすごいことだな、と思えることがいっぱいあって、全てがありがたいなって思います。例えば、健康にツアーを全部歌い切れた、ありがたい!とか(笑)。シングルを作っている最中も、そういうことばっかり考えてたから、歌詞が<いつもあるものにすごく素敵だなって感じようよ>みたいなものになったんだと思います」

―だからこそ、また新鮮な気持ちで活動を続けていけると。

「そうですね。今回のシングルは『あまんちゅ!』に捧げるような気持ちで、この2曲だけじゃなくて『DIVE feat.GONTITI』も『はじまりの海〜Live Ver.〜』も、全部海繋がりでまとめてみました。この夏のシングルということで楽しんでもらえたらと思います!」

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