INTERVIEW

――すごくフレッシュでキャッチーな仕上がりの新曲「CLEAR」ですが、制作はどのように始まっていったんですか?

TVアニメ「カードキャプターさくら」の続編を作るので是非オープニングテーマは坂本真綾で、とスタッフの方たちがおっしゃってくださって。本当に嬉しかったですし、私も長く活動してきたからこそ、前シリーズの「プラチナ」から約20年経ってまた同じ作品の主題歌をやらせていただけるんだなとご褒美みたいな気持ちがしました。本当にここ数年は<初めて買ったCDは「プラチナ」です>とか<小さい時に「さくら」が大好きで「プラチナ」を聴いていました>という方に声をかけられることが多いんです(笑)。それは声優さんだったり、色んなスタッフさんだったり、道行く人だったり。その度に「カードキャプターさくら」を見て育った人たちが今、社会に出て活躍されてることを実感して。NHKで全国放送されたアニメですし、「プラチナ」という曲がこの世代に与えた影響は大きかったんだなと。なので今回も「プラチナ」みたいな曲をみんなに求められてるんだろうなというプレッシャーは当然ありました。

――TVアニメ『カードキャプターさくら クリアカード編』の主題歌としてはどのような楽曲を求められていましたか?

監督としてもやっぱり、可愛くて元気でキラキラしてて、という曲を求めてらしたので、今の私が出来る最大限の可愛くて元気でキラキラをやらなきゃと思いました。それは必ずしも自分の最近の作品の流れとは違うかもしれないけど、「さくら」の主題歌をやるということに私は大きな意味を感じているので、方向性としてはいつも以上にわかりやすさを重視してモードを作品の世界観に合わせています。今の自分がどうとかいうことは一旦、置いておいた方が上手くいくと思ったんですよね。ただ「プラチナ」ってキラキラして可愛い感じもありつつ、大人ウケもするというか渋い主題歌だったようにも思うので。聴いて覚えやすいとか一緒に唄いやすいみたいな部分は意識しましたけど、自分がその視点に立っているように見えて、今の私自身が若い世代に言いたいことをちょっと忍ばせておきたいなと思いながら歌詞を書いていました。

―― <翼がないなら走ってくわ>という自由でパワフルなフレーズが印象的でした。

魔法を使える女の子って、みんなが通る憧れの存在じゃないですか。私にもあんな力があればいいのに、って。きっと「さくら」のことが好きな女の子は、あんな風になりたいなって思いながら見てたんだと思うわけですよ。でも自分には魔法が使えないから特別な人生にならないって、どこかで思うこともあるじゃないですか。<翼がないなら走ってくわ>というのは魔法がないなら違う方法で何かに立ち向かえばいいんだ、と思って欲しいなという気持ちを込めて書きました。今、私が常々思うのは、これからの若い世代はSNSが当たり前にあってほんとに可哀想だなっていうことなんです。だって関係ない人の色んな発言をすごく気にしながら行動していたり、人に羨ましいなと思ってもらえるようなメッセージを自分でわざと発信したり写真を載せたり、そういうことに一生懸命じゃないですか。そうやって常に人と比べて、あの人よりいいとか、あの人みたいになりたいとか、そういうことが昔はせいぜいテレビや雑誌の中との比較だったのに、クラスメイトの中にもいっぱいそういう対象がいて劣等感とかいっぱい植え付けられちゃうんじゃないかなって。自分がもしこの世代に生きていたら大変だったと思うんです。だから、あの子にあって自分にはないとか、そういうことを気にしなくていいんじゃないの?というメッセージも込めています。

――作曲は水野良樹(いきものがかり)さんで、初のコラボレーションとなりました。

水野さんとは、全然関係ない場所でちょっとご挨拶したくらいの面識はあったんですけど、前々からいつかご一緒してみたいと思っていました。今回の機会がぴったりだなと思ったのは、たまたま彼が放牧中だったのと(笑)、ポップでわかりやすくて覚えやすい曲をマストで考えていた時に、これまでもたくさんそういう要素を求められながら曲を作ってきたであろう水野さんだったら、と思って。すごくプロフェッショナルに色んなオーダーに応えてくださると思うし、今は色んなアーティストのオファーに応えることを意識的にやって自分のスキルを高めてらっしゃる期間かと思ったので。今回は水野さんにお願いした時から真摯に前のめりに取り組んでくださいました。ちなみに水野さんのマネージャーさんにも<昔、「さくら」が大好きで……!>と言われました(笑)。

――「CLEAR」の制作は、今唄いたいメッセージを込めつつ、色んな責任感のもとに人気アニメの続編の主題歌としての大役をつとめたという感じですね。

できる限りのことはやったなと思います。期待が高いということは発表された時の反響のすごさから肌で実感しましたので、プレッシャーはまだ拭えていないですけど。ただ「プラチナ」も、発表された当初よりも10年20年かけてすごく広がっていったんですよ。この曲を聴いて、作品を見て、さくらちゃんを見て好きになって、そこに自分の色んな思い出も重なって記憶としてプラスされて「プラチナ」が好きだと言ってくださる方の中に根付いたんだと思うんですよね。曲単体としての人気だけじゃないと思うから今回の「CLEAR」もそんな風に色んな人の想いを乗せながら巣立っていったらいいなと思います。

――出来上がった今の時点で「CLEAR」をどんな風に聴いてもらいたいと思っていますか?

みんなで一緒に育てて行きましょう!という感じですかね(笑)。ライブでも定番になっていけば嬉しいなと思います。

――そしてカップリングの「レコード」は大人ならではのノスタルジックで素敵な世界観を感じる1曲になっています。

カップリングは思い切り今の自分の世界観でいいのかなと思ってこの曲を作っていました。歌詞は、堂島孝平さんが作ってくださった曲を聴いて自然と出てきたものです。<「プラチナ」が初めて買ったCDです>って言われることも多いことから<はじめて買ったレコードのように>という歌詞が出てきます。誰かにとっての初めてというのは本当に特別な、ありがたいことです。

――最後に「プラチナ」のアコースティック・ライブ・バージョンも収録された完璧なシングルですね。

2017年に嚴島神社で唄わせていただいたものです。正直、私は「プラチナ」のオリジナル・バージョンを何年も自分で聴いてないんですが今の私が唄う「プラチナ」はCDに収録されているものとは違うんだろうなと思います。いつもいつも、その時の自分で唄い続けて20年なので、あんまり聴き返して同じように唄う必要性は感じてないんですけど。昔、聴いてくれていた人が今の私が唄うバージョンを聴くと<全然違う!>と思うかもしれないので、今はこんな感じですっていうのを聴いてもらえるといいかなと思います。

――2018年はどんな年にしたいですか?

2017年の前半はゆっくりもしたし、後半は忙しかったですけど、自分はやっぱりライブや舞台が好きなんだなということをあらためて感じました。なので2018年も健康に(笑)、てんこ盛りに駆け抜けたいと思います!3月からは初の海外公演を含む全国ツアー「ALL CLEAR」もありますし、皆さんに楽しんでもらえることを色々と計画していますよ。

Text : 上野 三樹 

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