INTERVIEW

―― キャッチーなメロディラインが愛らしい新曲「ハロー、ハロー」は、TVアニメ『あまんちゅ!〜あどばんす〜』のエンディングテーマとしてご自身が作詞・作曲されたということですが。どんな制作でしたか。

今回はエンディングテーマということで、佐藤順一総監督には見終わった後に余韻に浸りながら聴ける可愛い楽曲であって欲しいと言われました。作品が女子高校生のお話ということもあり、明るさがあってかわいくて重くなく、と。とにかく、私なりに本当にシンプルなものを目指して作曲を始めたら、割と思い悩まずにスッとできました。<ハロー、ハロー、ハロー>というメロディラインができた時に、これ以上わかりやすいものはないなって。今回はみんなに「耳馴染みがいい曲だな」とか思ってもらえたらいいなと思って作りました。

―― 歌詞は高校生だった頃の自分を思い出しながら書かれたそうですね。≪私はここにいました≫と過去の自分が手を振る、そんな描写の中にどんな想いを込めましたか。

私は高校生の頃、学校に行くのが楽しくて仕方なくて。毎日毎日、何でこんなに面白いことが起こるんだろうと思いながら生きていたんですよ。いつもお腹がよじれるくらい笑ってて。でもあんなに楽しかったのに、今思いだそうとしても、何で笑ってたのか思い出せない。瞬間瞬間の断片を繋ぎ合わせて全体を記憶してる感じなんですけど、その断片が、だいたいどうでもいい日なんですよ。特別な日のことじゃなくて、何故この場面?と思うような。でもそれを思い出す時に、言葉にはできない良い気分を味わえるというか。今生きている時間も、すごく大切な日はいっぱいあるし、1個1個覚えておきたいって思うけど年を重ねる中でたぶん忘れていくこともいっぱいあって。でも日常のどうでもいいことをいつまでも覚えている可能性もあって何か不思議だな〜と。脳はどこでそれを振り分けてるんだろうとか考えながら書きました。

―― 特に、高校生の自分が購買部で買ったパンを手に廊下を歩いているシーンを思い出すとおっしゃっていましたが。

そうなんです。別に何でもない場面なんですけどね、ただ友達と喋りながら歩いてて、色んな人とすれ違って。でも何か、ただただ日々の当たり前のことが、すごく愛おしい気持ちと、もう絶対に味わえないさびしい気持ちと。どうしてこの場面なのかはわからないんですが「私はここにいたんだ」とか「楽しかったんだ」「頑張ってたんだ」みたいなことを忘れられないように、当時の自分が記憶に刻んだりしたのかな。やっぱりその頃も、3年間しかない高校生活なんだとわかって生きていたし、それを余すところなく満喫しなきゃと思っていたところもあるんですけど。どんなにそう思っていても振り返った時に「昔は良かった」みたいな気持ちとは違う、ただ現実としてもう絶対に訪れない季節、もう一度あそこに帰ることはないんだなみたいな。でも将来、今のことを思い出す時に38歳の時の自分のことを懐かしく、愛おしく思うかもしれないと思うと、また今も余すところなく満喫しなきゃいかないという気持ちになるんですよね。

―― 真綾さんは普段、どういう時にこれまでの自分を振り返ったりしますか。

私は日記を書いているんですけど。今は5年日記を使っていて、もう4年目です。今日の日記の欄を書くと、去年と一昨年とその前の年のことも同じページに書かれてあるから、遡って一応、見るんですね。そうすると、ついこないだのことに思えることがだいぶ前に書いてあったり。あとは自分で書いたけど何のことだかさっぱり覚えてないみたいなことはありますね(笑)。

―― まさに「ハロー、ハロー」なエピソードですね。

「私は今こんなことに必死なんだ」とか、「こんなことに向き合っています」とか、未来の自分に向けて日記を書いておいてあげたい、みたいな気持ちがあります。どうせ忘れちゃうだろうから、必要な時に思い出せるかな、なんて思いながら。昔の日記に悩んでるっぽいことが書いてあっても、今見ると「どうでもいいな」って思えたり(笑)。逆に、「この時、調子良さそうだな」とか「この時期は毎年調子悪いな」とか色んなことがわかって面白いです。

―― 「ハロー、ハロー」はこの春に行われたツアー「ALL CLEAR」でも披露されましたが、歌ってみてどんな感触でしたか。

この曲はライブでやってみても最初から「あ、いいな!」という感じがあって。お客さんも、とても良い感じで受け止めてくれたようなので、自信になって歌えば歌うほど好きになっていきます。言葉数も少ないからこそ、短い言葉の中にもみんながイメージを抱きやすい共感性の高い歌詞なのかなという気がして。ライブでもみんなが色んな自分の思い出とかをフワッて思い浮かべながら聴いてくれているような感じがしました。余白の部分を残した、飾り立てすぎないところに聴く人がイメージを膨らませることができる曲になったかなと思います。

―― カップリングは第一期『あまんちゅ!』のオープニングテーマでもあります「Million Clouds」の、ライブ音源。嚴島神社でのステージが思い出されます。

昨年、この曲をリリースした時期はあまりライブをしていなかったので、人前で披露するのがいきなりアコースティック・バージョンというのも不思議な感じだったんですけど。CDとはまた違った音数の少ないアレンジながら嚴島の景色も手伝って、すごく広がりのある良い気持ちで歌いました。

―― 更に「月の話」という新曲も収録されています。

この曲、相当好きなんですよね。これまでも「SAVED.」などのアレンジで何曲かやっていただいたことのある山本隆二さんに、初めて曲を作っていただいたんです。山本さんの曲にはエモーショナルなバラードのイメージがあるので「バラードだけどカッコいい曲になれば嬉しいです」くらいのことをお伝えして自由に作っていただきました。

―― 約2年ぶりのツアーを終えて、今回のニューシングルをリリースする心境はいかがですか。

初の海外公演も経験した前回のツアーでは、やっぱりこの仕事や歌うことが好きだなっていう確認もできたし、まだここから成長できるかもしれないんだ、という喜びや得たものの大きさが実感としていつも以上にあります。「ALL CLEAR」というツアータイトルは「離陸するぞ!」というイメージで付けましたが、今は無事に離陸した感がありますので、早速シングルが出るのが待ち遠しいです。「ハロー、ハロー」は自分の為に自分で作った曲で、腹を括れてる部分もあって。何の気負いもなくリリース日を迎えられそうなのが嬉しいです。

Text : 上野 三樹 

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