INTRODUCTION
大人数の演奏家が譜面をきっちり演奏することに縛られるのではなく、作曲家や指揮者が全体を統括しコントロールするのでもなく、ラフなスケッチのような譜面を使って、作曲家は方向性を与える程度で、あとは演奏家たちひとりひとりが自分たちの頭と体で考え、みなでアンサンブルを即興的に組み立てて行く。自分たちの居場所は自分たち個々の責任でみなとシェアしながらつくって行く。サントラに収められた曲の多くはそうやって生まれています。これって従来の劇伴というよりは、フリージャズや即興演奏と呼ばれている音楽と、チンドンからサンバに至るまでの古今東西の大衆音楽から学んできた方法です。この四半世紀、劇伴を含む商業音楽が進んで来た進化の方向とは真逆のやり方と言ってもいいかもしれません。もしかしたら、メインストリームのテレビドラマや映画でこういうやり方をしてる劇伴は、今現在、国の内外を見渡してもほとんどないように思います。そんな特殊なものが日本のお茶の間で流行っているんです。なんだか人ごとのように凄いことだなって思います。これをいいと思ってくれている人たちが沢山いるってことは捨てたもんじゃないなって思います。そしてそれは震災の経験と無関係ではないかもと、ちょっと思ってます。
上の指示で全体が動くのではなく、ひとりひとりが自分の頭と体で考え互いに丁寧に向き合ってアンサンブルを組んでいく。音楽やドラマでは、そんなやり方が可能なんだということをしめしたのが「あまちゃん」なのかもしれません。もちろん現実はそんな簡単じゃありません。でも音楽やドラマって、本来は、現実では簡単じゃないかもしれないけど、でもこんな風になればいいって思いながら夢を語るもん・・・そんな風にも思います。夢を語る自由くらい失いたくないもの。それって厳しい現実に蓋をしてごまかすことなんかじゃ決してなく、厳しくとも現実にちゃんと向き合っていくための活力なんだと思います。生命力なんだと思います。そして、みんなそのことをどこかで知っているから「あまちゃん」を評価してくれたんだと思ってます。だからドラマも音楽も、僕らだけじゃなく、見ていたみなさんが一緒に育ててくれたんだと思います。大袈裟かもしれないけど、でもそのことに僕らは自信を持っていい、そう思います。
豪華参加ミュージシャン
- 音楽プロデュース:大友良英
- 音楽制作:佐々木次彦
- 演奏:大友良英 & あまちゃんスペシャル・ビッグバンド
- 作曲:大友良英(M-1?13, 15?21, 23~25, 27~29, 34~36)
Sachiko M/大友良英(M-14, 22, 31, 33)
大友良英/Sachiko M/江藤直子(M-26)
大友良英/江藤直子(M-30, 32) - 編曲:大友良英 & あまちゃんスペシャル・ビッグバンド
- ストリングアレンジ:江藤直子(M-10, 20, 22, 26, 30, 32, 36)
参加ミュージシャン&レコーディングクレジット(順不同)
- 東 涼太
- サックス
- 鈴木広志
- サックス、クラリネット、フルート、リコーダー
- 江川良子
- サックス、クラリネット
- 梅津和時
- サックス、クラリネット
- 佐藤秀徳
- トランペット
- 佐々木史郎
- トランペット、フリューゲルホーン
- 今込 治
- トロンボーン
- 青木タイセイ
- トロンボーン
- 松本 治
- トロンボーン
- 木村仁哉
- チューバ
- 水谷浩章
- コントラバス(CD未収録)
- 大口俊輔
- アコーディオン
- 佐藤芳明
- アコーディオン
- 江藤直子
- ピアノ、セレスタ、エレクトリックピアノ、シンセ、メモトロン、ホンキートンクピアノ
- 近藤達郎
- オルガン、セレスタ、シンセ、メロトロン音源、ハーモニカ、ホンキートンクピアノ
- 大友良英
- エレクトリック&アコースティックギター、ギターバンジョー、バスマリンバ、パーカッション
- 宮藤官九郎
- エレクトリックギター
- 長見 順
- エレクトリック(ブルース)ギター
- 高井康生
- エレクトリック&アコースティックギター
- 西村雄介
- ベース
- ナスノミツル
- ベース
- かわいしのぶ
- ベース
- 坂田 学
- ドラムス
- 植村昌弘
- ドラムス
- 芳垣安洋
- ドラムス
- 小林武文
- ドラムス、パーカッション、チャンチキ
- 上原なな江
- パーカッション、マリンバ、バイブラフォン
- 高良久美子
- バスマリンバ、バイブラフォン、パーカッション
- 相川 瞳
- パーカッション、マリンバ、バイブラフォン
- 三沢 泉
- パーカッション
- Sachiko M
- sinewaves
- 佐々木次彦指揮 YNストリングス
- 秋岡 欧
- バンドリン(CD未収録)
- ユザーン
- タブラ(CD未収録)
- テニスコーツ
- (さや:ヴォーカル、植野隆司:ギター)(CD未収録)
ライナーノーツ
大友良英 入魂の36曲全曲解説!「ダサいくらい、我慢しろよ!」(一部抜粋)CD封入特典
こうして第二弾のCDまで出せたこと、本当にみなさんの反響のおかげです。最終的には三百数十テイク、二百数十曲を書きました。1枚目と今回の2枚目のCDをあわせても全体の2割程度しか入ってません。頻度の高い曲をなるべく網羅できるよう頑張りました。それでも漏れている曲沢山あります。ごめんなさい。この先はBOXセット・・・と一瞬思いましたが、ドラマ開始時の4月にはCD発売の話すらなかったわけですから、それを考えると充分すぎるくらいです。本当にありがとうございました。
1.上野アメ横1984録音日 2013年4月13日(M-108A)
1984年モノクロームの上野駅に降り立つ春子の写真から始まる東京編幕開けの曲です。もちろん84年の上野やアメ横がジャズだったわけではありません。ただ北三陸とは明らかに違う景色で始まるにはどうすればいいか、2ヶ月以上聴きつづけて視聴者の体に入ってるこれまでの劇伴にホームシックを感じるくらいの音楽、そこから考えました。故郷編の素朴なコード(和声)とは対照的な、カラフルでモダンなコード。ジャズ的なアドリブやニュアンスを担ってくれたのは、サックスの梅津和時、トランペットの佐々木史郎、トロンボーンの青木タイセイといったジャズ界の重鎮たちです。ちなみに「ホームシックを感じるくらいの音楽」として、もうひとつ故郷編での「潮騒のメモリー」と対になるように、アキの前にあらわれるのが「暦の上ではディセンバー」です。これについてはあとで書きますね。
※CDにはこの他36曲分の解説が収録されています。必見!!