「最愛の妻へ」
澤田国男 滋賀県
我が人生後数年で喜寿を迎えますね。
今日まで平穏無事に生きて来られたのは、他ならぬ貴女の弛まざる努力と明るい心による愛情の賜物です。

本当にありがとう。厚くお礼を言います。たとえ夫婦たりとも、性格の異なる男女の婚姻を以て私達の日常生活が始まって既に四十数年が経ちましたね。

その間、私の実に我が儘放題にして見識ぶった亭主関白良くも今日まで、隠忍自重して尽くしてくれた温情に深く感謝致し、改めて心からお礼を言います。

現在でも貴女は四六時中主婦としての努めを果たしながら、私の老衰による痴呆の言動にいささかのうろたえもなく、その都度ユーモアを含む愛嬌でその場を繕い、私の非をカバーして自戒をもたらしてくれ、何ともありがたく幸せですよ。

私は、妻でありながら母を思わせる貴女に何時しか子供が母を慕うように甘えるようになって貴女の体にへばり付き、所構わず触り捲るなどの悪戯で怒られる始末ですが、そこには二人の笑いが沸くシーンもあるから、ここは一つ愛の証と思って許容ください。

そして、私達が心魂を傾けて営む愛の巣に、夫婦相和して仲良く、楽しく住み、暮らして行く生活の筋道である倫理を忠怒の精神で望む実践躬行によって、命が与えられる真理を会得して夫唱婦随で連綿と続く家系を維持して行きましょう。

貴女は我が心の鏡に映る唯一無二の至高の妻であり、我が家を支える幸福の女神です。

今後とも日常生活にゆとりを持って、今を悔いなく活発陽気に生きる心の糧を旨として相携えて世渡りに馴染みましょう。

愚鈍な夫より

結婚から40数年。亭主関白を通し、我が儘に振る舞ってきた夫が妻に出す「人生最高のラブレター」には、妻が心の糧となっているという、微笑ましい現実が見えくる。
プロデューサー/太田空真(生活デザイン研究所所長)
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