壁きえた
小川律子(矢板市立片岡小学校教諭)
「2部合唱だし、音取りは簡単だから大丈夫。何とかお願い。」という、「白いうた 青いうた」レコーディングの会議中に切羽詰まった様子で電話を掛けてきた妹の頼みに、田舎の小学校の、普通の音楽部の私たちが引き受けてしまって、ご期待に添えるのだろうかと戸惑った。翌日学校へ行き、校長先生にお伺いすると、「断る理由なんてないじゃない。是非頑張ってください。」というありがたいお言葉。ファックスで送られてきた3曲の楽譜に目を通し、それが「壁きえた」との出会いとなった。

ご無沙汰している栗山先生にお会いできることが私の喜びを一層大きくし、夏休みのレコーディングに向けて楽しくわくわくする練習が始まった。小学生にとっても、やさしく歌いやすいメロディーであること、追いかけるアルトのメロディーも素敵で、主役の気分になって十分満足して歌えること、単調なリズムが繰り返されながら自然にダイナミックに盛り上がり、歌っていて心地よいことなど、私も子どもたちも「壁きえた」に魅了されていった。曲作りが先行し、後から言葉がつけられたということを少々練習に取りかかってから知り、この曲の重み、深み、すばらしさに改めて感動させられた。素敵な曲だと思えば思うほど、この声で、この歌い方でいいのだろうか、栗山先生や新実先生の求めている「壁きえた」は、どんなイメージで歌えばいいのだろうかと、不安になっていった。大田原の文化会館での初めての合同練習のとき、子どもたちの精一杯に歌う姿と栗山先生の「よく練習してくれたね。」という言葉に、教員になって十数年、いろいろ悩んだこともあったけど、全部が救われたような、自分へのご褒美をいただいたような幸せな気持ちに包まれた。片岡小は、自称「白青」広告塔として、53曲の中から選曲し、来年の音楽祭に参加しようと心に決めている。

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