キュウソは、なんというか、「キュウソネコカミ物語」なんだよな。完全ノンフィクション、やらせなし、そしてまだ誰も結末を知らない、現在進行形で放送中の大人気ドキュメンタリー番組、的な。

僕が初めてキュウソと出会ったのは、5年前の新宿ロフトでのイベント。お客さんはフロアにまばらだった。僕らが先に出演して、その後キュウソがやったんだけど、キュウソのMCのおもろさと『お願いシェンロン』でシェンロンになって帰っていったのに衝撃を受けて。てか爆笑して。終わった後セイヤ君に挨拶したら、彼は「柴田さんのMCのおもろさに脅威を感じましたよ!」ってキラッキラの笑顔で言ってくれた。そのとき、セイヤ君の前髪は尋常じゃなく長かった。

次に思い出すのは、4年前に彼らの広島ツアーに呼んでもらったときのこと。そんときのサウンドチェックで、まだリリース前の『ファントムヴァイブレーション』を初めて聴いて。「スマホはもはや俺の臓器!」が歌詞カード無いから「俺の雑巾(ぞうきん)」に聴こえて、何歌ってんだキュウソ、こんなんじゃ刺さんねーよとか思ったんだよな…当時の俺にパンツ突き破るほどのカンチョーしてやりたいです、名曲だっつうの。でもこのライブも人はまばらだった。セイヤ君の前髪も引き続き尋常じゃなく長かった。

それから思い出すのは、3年前にこれも新宿ロフトであった、スペシャ列伝。確かソールドアウトしてたと思うんだけど、このライブは「スペシャ列伝JAPAN TOUR 2014」の直前に開催されたやつで、僕らは出演してなくて。で、ライブが生配信されてたからそれでキュウソを観て、キュウソがライブの最後にステージで組体操をキメて(曲とはなんの関係もなく)。その瞬間、なんか、時代が変わる音が聞こえた。あ、この組体操で何かが大きく動きだすぞって。

その1週間後に、「スペシャ列伝JAPAN TOUR 2014」へのキュウソの参加が発表された。気づいたらセイヤ君は前髪を切っていた。彼は、凛々しく次のステージに対峙していた。

なんか長くなってきたな。そこから先はみんなが知ってるキュウソの快進撃が始まり、2017年の今回のアルバムにたどり着くわけなんですけども。僕はこのアルバムを聴いて、ああ、キュウソはいまブルースを鳴らす時期に入ったんだなって思いました。歌詞の「動き続けないと怖い」「どこまで俺ら行ける」に強烈にドキッとさせられて。たとえば井上雄彦先生のマンガ『バガボンド』でいうと、吉岡道場に70人斬りで大勝したのに、武蔵はそこから「本当の強さとは何か?」という自問自答を始め、苦悩し、答えを見つけるために旅に出る、その感じに似ていて。

要は何が言いたいかというと、続きが超楽しみなんです。てか、こんなバンド他にいます?リアルタイムでめまぐるしく状況が変わり、その状況に対する想いを歌詞とライブのMCで正直すぎるほどに表現してくれるバンド。そこに一切のズルや大人の力の存在がなくて、だからまじで次どうなるのか読めないバンド。何よりやることなすことすべてが、いちいちくっそおもろいバンド。

キュウソネコカミをリアルタイムで体験できる僕らは、すごく幸せです。だから、この素晴らしいアルバムを買おう。いつも最強なライブに行こう。この超おもしろドキュメンタリーに俺らも参加して、キュウソと一緒に続きを見に行こう。ていうか、一緒に続きを作ってこうよ。


柴田隆浩(忘れらんねえよ)