ライヴ盤には、そのアーティストのベストな選曲と最高のパフォーマンスが収録されているから、アーティストの音楽性を知るにはオススメの1枚だ。特に、ブルーズからソウル・ミュージック、ファンク、レゲエ、ロック……など、音楽を多彩に愛するLeyonaの真の姿は、ライヴ・パフォーマンスからの方が体感しやすい。
Leyonaはデビュー早々にフィラデルフィアのヒップホップ/ブルーズ・マンG.loveと共演したのをはじめ、これまで多数のアーティストとコラボレーションをしてきた。このライヴ盤『Rollin' & Tumblin'』ではそういった名曲に加え、彼女の奔放なMCも収録されていて、Leyonaが多くのミュージシャンから愛されてきた理由を教えてくれる。そして、多くのファンに愛されている理由も。
なにしろ、Feelin'& Groovin'が素晴らしいのだ。音楽で彼女が得意なサーフィンをしているかのように、心地よく自在にサウンドとビートに舞い、メロディに乗る。「私はこの素敵なバンドに混じってステージを繰り広げたかったし、このグルーヴでお客さんにステージを楽しんで欲しかった。なにより私が音に身を任せて踊りたかったし(笑)」。当時を思い出して、語ってくれた言葉だ。
2006年10月8日に渋谷クアトロで行なわれた“Rollin' & Tumblin' Tour”。敬愛するマディ・ウォーターズのブルーズから命名したツアーの最終公演となった会場は超満員で、最終日を飾るにふさわしいボルテージを持って迎えられた。
バンドメンバーは、最新アルバム『Clappin'』を一緒に制作したミュージシャンで編成している。盟友である山本タカシ(G,Backing Vocal)をバンドマスターに、Leyonaのアニキ的存在のLatyr Sy(Per, Vo, Backing Vo)、そして、沼澤 尚(D)、鈴木正人(B)、エマーソン北村(key, Backing Vocal)といった卓越した技術とセンスを誇る超人気ミュージシャンたち。それに東京公演には、ゲストとして田村玄一(Pedal Steel Guitar)が加わり、音楽に新たな輝きを加えている。「この顔合わせからどんな音楽が生まれるか」と、思うだけでもワクワクする。
Leyonaは、メンバーと車で移動しながら全国ツアーを楽しんだという。バンドと旅して回った共有空間も、このサウンド作りに一役買っているのだろう。Leyonaは“人生”や“愛”という名の旅や、“自由”という名の風の心地よさを、歌を通して十二分に伝えてくれるし、「Searchin'」「Love」といった曲を中心に繰り広げられるバンドのインプロヴィゼイションは、音楽の醍醐味を200パーセント堪能させてくれる。
互いを触発し、刺激されながら生まれたこのライヴ・アルバム『Rollin' & Tumblin'』は、クリエイティヴィティの宝庫でもある。Leyonaの集大成であり、彼女がスタイルに囚われずに、今後もっともっと自由に音楽をやっていこうとする意思さえも感じられる素晴らしい1枚だ。そして、夜明けから日中、夕暮れ時や深夜の時間帯にも似合うこのアルバムを聴いた誰もが、Leyonaの音楽的才能とキャラクターに魅了されて熱狂的ファンになっていくだろう。
伊藤なつみ