the id : 2003.11.25

『 N.Y 』

ニューヨークでのマスタリングの話を、まだ書いていませんでした。

今回が私にとって初めてのN.Y。何もかも新鮮だったし、おもしろかった。紅葉の始まったセントラルパークを見下ろすホテルからの景色も最高だったし、夜は毎晩ブロードウェイへミュージカルを観に行った。時差ボケに少し疲れながらも、毎日楽しんでいました。

マスタリングの日、海の見える大きな窓があるスタジオで「少年アリス」の音を聴きながら、何とも言えない感慨深い気持ちになりました。1曲1曲完成していく。1年以上もの長い時間をかけてじっくりと作りあげてきた音が、やっと形になろうとしている。もうすぐこの音たちは1枚のCDになって、パッケージされて色んな人の元へ旅立っていく。もう私の手を離れてしまうんだなあと思うと、それは喜びでもあったし、少しだけ寂しい気持ちになるのでした。私の中の「少年アリス」はここに完結したのです。

私にとってこの作品は、もう自分の子供みたいに無条件にかわいいものだから、この子が生まれてきてくれただけで嬉しい、今はそんな気持ちになっています。これについてどんなアルバムなのかって冷静に客観的に判断することは、私には難しくなってしまったけれど、ただとっても丁寧に、すべてを注いだアルバムだから、たくさんの人に愛されたら本当に嬉しい。みんなに大切にされて、いつまでも誰かの中に残っていってくれたら、こんなに幸せなことはないと思っています。

次の日、急に体調を崩してしまった私は、せっかくのオフを1日中ホテルの部屋で過ごすことになるわけですが、それはたぶんアルバムの完成を見届けてホッとしたのが原因かと思われます。安心しちゃってね。
あーあ、今夜はもう1本ミュージカルを観る予定だったのに。エンパイアとか、登っちゃうつもりだったのに。オカイモノもしたかったのに。もったいないことしたなぁ…と悔しい気持ちで一杯になっていると突然「ドーン!」という大きな音とともに窓の外が明るくなったのです。びっくりして振り向くと、目の前のセントラルパークから花火が上がったところでした。花火はどんどん上がり、私の部屋は特等席。スタッフがデリで調達してきてくれたヌードルを食べながら、「なーんだ、悪くないじゃん」と体まで元気になってきました。私すごい頑張ったもん、これはきっとご褒美だ、体調は崩したものの久々にゆっくりしたなあ、なんてすっかり機嫌も直り、私の初めてのN.Yは無事に終わっていったのです。また来よう、と思いながら。

かくしてアルバムはできました。発売日も近付きました。感無量。聴いてください、是非に。

*maaya*