the id : 2010.04.08
あの日、ライブが終わった後、車の窓から見た千鳥が淵の夜桜はとっても美しかった。満開のちょっと手前の、今まさに最高に輝くときを迎えようとしている、生命の力強さがあった。
私はバンドやスタッフたちと気持ちのよいお酒を飲み交わし、明け方の交差点で手を振り合って別れ、家に帰って熱いシャワーを浴びてから、朝日の中でベッドに入りました。身体はとてつもない疲労を感じているし、お酒も飲んでいるのに、まだ気持ちが高ぶっていてなかなか眠れない。ほんの少しうとうとしただけで3時間後にはもう出かける準備をしていました。今日も、普通に仕事に行くために。
フワフワする身体で、テキトーな服を着て、ぼんやり電車に揺られながら、後ろの人に背中を押されちょっとよろける。つり革につかまった手には、昨日メイクさんが塗ってくれた白いマニキュア。「確かに私、昨日武道館でライブしたんだよなあ」となんだか不思議な気分。体中が痛いよ、眠いよ…。でもきっと、昨日一緒に過ごしてくれた1万3千人のお客さんたちも、今ごろそれぞれ自分の日常に戻ってこんなふうに過ごしているのかなあ思うと、なんとなく心強い。夢みたいに楽しかった昨日の余韻を持って、私たちは自分の普通の毎日に帰ってきたんだ。またいつか会う日まで、日常という名前の特別な一日一日を重ねていく。
30歳の誕生日で、ベストアルバムの発売日で、武道館ライブ。
3つの大きなイベントが重なった2010年3月31日という日は、確かに特別な1日になりました。たくさんの人に集まってもらい、おめでとうって言ってもらえて、大好きな歌を歌える。これ以上ない幸せな日でした。
だけど昨日も今日も明日も来週も、何曜日でも何の日でも、いつだって私たちは生涯に一度しかない特別な1日を生きていることに変わりはありません。そしてその連続を「日常」と呼んでいるのです。そのことは普段は忘れちゃっているんだけれど、ときどきでいいから思い出して、少し背筋を伸ばして歩けたらいいなと、改めて思いました。
あの日はひたすら感謝の気持ちを伝えたいと思っていました。でも今思い返してみると、もっと言えばよかった。まだ足りなかったと思ってます。だからここでもう一度言わせてください。
ありがとう、本当にありがとう!こんなに長く歌い続けてこられたのは、私が発しているものを受け止めてくれる人がいたからなのです。私の歌を聴いて一度でも何か感じてくれたことのある人すべてに心からありがとう。
ベストアルバムを聴いてくれた皆さん、ライブに来てくれた皆さん、ありがとう。遠くから来てくれた人や、おこづかいを一生懸命貯めて買ってくれた人もいると思います。みんなの気持ちがほんとに嬉しいです。ライブに来たかったのに平日だから無理だった皆さん、あるいはライブのために仕事を休んでくれた皆さん、ごめんね。世の中が忙しい年度末なんかに生まれてごめん!また次のライブで会えるように願ってます。
それから今回は360度全部にお客さんを入れるステージの組み方をしていました。そのため主に私の後ろ姿を見ることになったお席の方もいたと思います。見にくい場所だった皆さん、ほんとにほんとに、ごめん!それでも楽しんでもらえるようにと私なりにいろいろ考えたのだけど、どうだったかな。ごめんなさいね。でも私は、お客さんが私の肩越しに別のお客さんたちの姿を見られるというのも輪になって向かい合ってる感じがして好きでした。みんなで一緒に歌ってくれた最後の曲では、色とりどりの歌声の渦の真ん中に立って、ものすごく感動的でした。3階席の一番後ろまで私からは見えてました。ありがとう。
バンドとスタッフとスペシャルゲストのお2人に。ああ、なんと言えばいいかわからないくらい、感謝しています。大好きです。みんな私の自慢の、最高の仲間たちです。これからもずっとそばにいてください。
15年、歩いてきた道。いつも夢中で、必死で、なかなか振り返ったりする余裕はなかったけど、今改めてまわりを見回してみると、私は本当にいろんな人たちに出会い、支えられ、たくさんの経験をしながら生きてきたんだなあとつくづく思います。どんな出来事にも意味があって、すべてが繋がっているなあと。だから、「ふるさとはeverywhere」。帰る場所、私を育ててくれた場所、懐かしい愛おしい場所は、今日までのすべてにある。
実はこのライブをやろうと決めたのは、去年のかぜよみツアーの最終日、打ち上げで乾杯をしたそのときだったのです。ライブにあまり積極的でなかった私が、ライブをもっと知りたくなった日。その日から私の中で、この武道館ライブに向けての時計が動き出しました。そして今回、武道館ライブを終えたとき、また新しい時計が動き出したのを感じました。それに向かって、またこの普通で特別な毎日を生きていきます。
また、会いましょう!
*maaya*