the id : 2014.04.10

『 「ダディ」、大千秋楽 』

ミュージカル「ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより」、無事終了しました。この作品を愛してくれたすべての方に心からお礼を申し上げます。
 名古屋で大千秋楽を終え、東京に帰る途中、桜のはなびらがひらひらと私の目の前を舞いました。稽古が始まった2月下旬は雪がちらついていたというのに、もうすっかり季節が変わっていた。桜吹雪はまるで「おつかれさま」と声をかけてくれているみたいでした。

今回もたくさんの方にご覧いただけて本当に嬉しいです。特に東京は好評につき異例の追加公演も行われました。キャスト、バンド、スタッフ一同この作品が大好きで、仲良しで。その上お客様にも喜んでいただけるなんて、こんなに幸福で大丈夫か?!とわけもなく不安になるくらい、すてきな1ヶ月間を過ごさせていただきました。

3月31日、私の誕生日の日は福岡公演でした。前夜は井上芳雄さんをはじめ、バンド、スタッフ全員が集まってお祝いしてくださいました。それだけでも感動なのに、誕生日当日のカーテンコールでは芳雄さんが「本日は…坂本真綾さんのお誕生日!」と突然声をあげ、バンドがハッピーバースデーの演奏を始めるではありませんか。1700人のお客様が一緒に歌ってくださって、ものすごくビックリ、そして暖かい気持ちになりました。思わず「今まで生きてきた中でいちばん幸せかも」と言ってしまうほど。もちろんこれまでも武道館や自分のライブのステージで大勢にお祝いしていただけるたび、いつも最高に幸せでしたけど、この日は私だけじゃなくジルーシャとしても幸せで、「ふたり分」な感じだったんです。
 ジルーシャは、自分の誕生日を知っていたのだろうか。孤児院のミセス・リペットが電話帳の1ページ目からとった「アボット」と墓石から見つけた「ジルーシャ」が名前になった彼女。2幕で「先週21歳になった」というせりふがあるけれど、それは本当に彼女が生まれた日なのか、それとも彼女が「みなしごになった」日、なのだろうか。
 今回の再演は、ジルーシャの明るさとバイタリティをよりまっすぐ表に出せるようになった気がしているのですが、それは同時に彼女の中に宿る根深い「孤独」をしみじみ感じているからかもしれません。自分はいったい何者なのか、という不安。きっと夢や希望のすぐ隣にいつも闇があって、吸い込まれないように懸命に気を張って生きているのではないだろうか。誰かに愛されたかどうかわからない、でも自分は誰かを愛さずにはいられないと言う彼女を、とても愛おしく思うのです。

ジルーシャはまったく、魅力的な人間です。それは彼女自信が持ち合わせ、自ら育んだもの。私はたまたまこの役をやらせていただいているけれど、彼女とは真逆で後ろを向きがちですし(笑)、全然努力も足りないんです。
 福岡の劇場では私のことなど知らずに観に来たお客様もいたでしょう、それでも一緒にあんなに優しくハッピーバースデーを歌ってくれた。それは、私というよりジルーシャに向けられたものかもしれない。数時間見守ったジルーシャという「愛嬌のある生き物」がいたから、お祝いしてくれたのだと思います。そう思ったら、ジルーシャが喜んでくれる気がして。私たちあなたのこと大好きだよと、生まれてきてくれてありがとう、と言ってやりたくなりました。

長くなりましたが、そういうわけで、幸せすぎて大変でした。終わってしまって寂しいですが、とてもさわやかな気分です。こんな素晴らしい作品に巡り会わせてくれたジョン・ケアード氏に改めて感謝。

そしてお知らせした通り、誕生日記念に今年も恒例チャリティー壁紙をご用意しました。すでに多くの方が参加してくださって嬉しいです。ありがとうございます。4月いっぱい受け付けています。詳しくはこちらをごらんください。

それでは最愛のダディ、そしてジルーシャ、さようなら。またいつか再会できる日がもしあるなら、そのときはもっともっとあなたたちに近づけますように。同士愛を込めて。

*maaya*