the id : 2015.05.06

『 FOLLOW ME 』

さいたまスーパーアリーナでのLIVE「FOLLOW ME」、お越しくださった皆さんどうもありがとうございました。遠くから駆けつけてくださった方も多かったと思います。本当に感謝です。多くの方に見守られながら歌手デビュー20周年目に突入しました。

いろいろ書きたいことあるんですが、あの空間にいてくださった方それぞれに、覚えていることとか感じたことが違うでしょうから、皆さんの心にお任せしたいと思います。もし、聴きたかった曲が聴けなかったという人は、ごめんね。あれもこれも全部歌いたかったけど一生懸命絞り込んでやっと28曲に。それでもまだ多いかなあ、お客さん疲れちゃうかなあと心配になって、本番1週間前に「『eternal return』は諦めようかな」と発言した私を必死に止めてたスタッフ。本番でその理由がわかりました。

あれこれ説明しないと言ったばかりだけどひとつだけ気になっていることがあって、あのサプライズのことなんだけれど。私が何故あのバスを見て泣いたか、たぶん皆さんにはわからなかっただろうなと思うんです。今もことばにするのは難しい。「私にしかわからないこと」としか言いようがないのです。

アンコール3曲目「そのままでいいんだ」の後すぐに「eternal return」のイントロが始まるはずでした。ところが妙な間があいて。誰か段取り間違えたのかなと、後ろを向いてメンバーの様子をうかがうと、だれとも目が合わない。おかしい。怪訝な顔をしてる私を見てドラムの鶴谷さんがニヤニヤしていたので、これはサプライズが始まるなとそこで直感したのです。

サプライズ的な何かが、もしかしたら用意されてるかもなーって予感はありました。だってうちのスタッフそういうの好きだし。でも実際にプレゼントされたのは、あまりに予想外のものでした。

大画面に映し出された、2011年のツアー「You can't catch me」のOP映像。パブロフの犬のように、見れば反射的にこみあげてくるものがあって、その時点でもう涙目。「これは反則!」と抗議にも似た気持ちで涙をこらえながら頭の中はすごいスピードでこんなことを考えていました。「でもなんで今この映像?」「Yccmツアーを知らない人は意味わかんないのでは?」「次のMCで私が解説しなきゃ!」「それにしても、うちのスタッフらしくないなコレ」「私たちにとってこんな大事なものを、ただ私を泣かせるためのコマみたいに使うとは考えにくい」「それに一部の人にしかわからないようなことはやらないはずなのにどうして…」。そこで、ああ違う、これは本当にただ私ひとりのために向けられたものなのかと気づいた。そしたらなんとも言えない気持ちで泣けてきた。

もしかしてポカーンとしてしまったお客さんがいたら本当にごめんなさいね。サプライズと言ってもショーの一部なので、そこにいる全員が楽しめるものにするのが常識。でもたくさんのお客さんがいるにも関わらず、このサプライズの本当の価値がわかるのは私たったひとりでした。そんな無骨な愛情表現に呆れつつ、私はとても重くずっしりしたものを受け取った気分でした。

何が正解かなんて誰にもわからないまま、話し合いを重ね再開したYccmツアー。ロウソクをともした楽屋で暖房もなく、身を寄せ合うように過ごした中野サンプラザ。ファイナルの仙台。いろんな光景が蘇える中、あの日の延長線上にある今日こうしてステージに立てているということと、いまだ先の見えない震災からの復興にも想いを重ねました。映像の中のバスが「さいたま」に到着したのを見たとき、そうだよね、まだ何も終わってないし、ゴールはここでもない、とはっきり思った。20周年も通過点、次はどこへ行くのか、どこであれ“FOLLOW YOU”、そういうメッセージにも思えました。

そしたら最後にどかーんと、バスが。バルーンのバス、とっくに失ったと思ってたのにまだ大事に持っててくれたなんて。あれ、置いとくだけでも大変なの知ってるからねぇ。

なぜ自分は生きているのか、なぜ歌うのか、なぜ進むのか。時が経っても、やっぱりわからないことばかり。でも、そうしたいから、している。

どんな出来事にも意味があるってよく言われるし、私もそう思うようにしている。ライブの最後に、この20年で後悔はひとつもないと言ったけどそれは、後悔が後悔でなくなるまで続けてきたということ。失敗や悲しみを力に変えるまで捨てなかったということ。でも争いごとや災害、自分にはどうにもできない理不尽な苦難に出会ったら、そこにどんな意味を見いだせばいいんだろう。私にはまだわからない、でもそれを見つけようと必死に生きることは無意味じゃないと思う。「これから」という新曲に込めた思いにも道筋を繋げてくれた、そんな愛あるサプライズだったと思います。

ちなみにそんな大事な「これから」のピアノ、私ったら出だしをいきなり間違えてしまって思わず笑っちゃったけども。人より何倍も歩みが遅い私、20年かかってようやく現在地はココです。遅かろうが何だろうが、次に会うときにはもっと、なりたい自分に近づいていられるように、日々を積み重ねて参ります。

長くなってすいません。これからも、どうぞ宜しくお願いします。

*maaya*