「ミツバチ」は「ハチポチ」「ニコパチ」に続くシングルコレクション第3弾です。 が、その意味合いは多少、前2作とは異なります。 私がデビューした頃、シングルは8センチCDでした。懐かしいですね。今の若い人は 見たことないかもしれません。それが姿を消すことになったので、改めて残しておきたいという気持ちもあってシングルコレクション(以下シンコレと略します)というものを制作しました。また当時、シングル曲をオリジナルアルバムには収録しないことのほうが多かった私にとって、シンコレは大きな役割を担うものでしたし、リスナーの皆さんにも喜ばれるアイテムとなりました。 そんなふうに「ハチポチ」「ニコパチ」がありまして、さあ第3弾は果たして作るべきかどうか。それは自分の中で永く保留としてきたところがありました。シングルはアルバムに入っているべきだ、というふうに私の考えも変わっていましたし、ずっと聴いてくださった皆さんはもうお持ちの曲ばかりかもしれません。しかしずいぶんシングル曲も溜まったし、そろそろ本当に決めなくてはということで2005年以降の作品をズラッと聴き直してみたとき、様々な想いが湧いてきてとても感慨深い気持ちになりました。 いろいろな人と出会い、一作一作挑戦し続けた、激しくて落ち着きのない7年間。なんて不完全で、なんて健気で愛おしい、大切な時間だっただろう。我が子のような楽曲たち、ひとつのこらず頭をゴシゴシ撫でてやりたくなりました。「この子たちみんな、大変な時代に生まれたのよ、でもみんな意味があって生まれてきたのよ、そして私もこの子たちがいたから頑張れた、頼りない私のこと育ててくれたのよ」なんて親バカな気持ち。 とはいえそんな私の超個人的な感情を汲み取ってくださいとは思いません。私のことをよく知らない人に、シングルがいっぱい入っているなら手にとってみようかなと思ってもらえる機会になれば嬉しいですし、あるいはもう持ってる曲ばかりだから今回はパスしようという人がいてもいい。ただ、このアルバムに収められたどの曲が欠けても、今ここに、歌を歌っている私は存在しなかった。私自身がそれをしっかりと噛み締めて、本当に激動だったこの7年のすべてに感謝して、自信を持って歩みを進めていきたいと思います。 過去は、ある程度充足した気持ちのときにしか、きちんと振り返ることができないと思います。あの頃は良かったでもなく、ああすればよかったでもなく、ただ通過してきた景色を清々しく眺められるとき、目線を前に戻すとそこにも同じように淡々と景色が続いていて、過去も未来も同じ軌道上にあるとはっきりとわかる。そういう瞬間まで「ミツバチ」を出さなくてよかったと思います。 |