● 私の考える、支援のかたち
 

はじめに

 被災地復興のために少しでも力になりたいという想いを、いま誰もが共有していることと思います。義援金募金の窓口はすでにたくさんあり、たくさんの企業や個人がチャリティーを立ち上げていて街中に募金できる機会があります。たぶん皆さんは、そのどこかですでに募金をしたのではないでしょうか。私もしました。日々たくさんのお金が日本中、世界中から集まっていると聞き、自分のことのように心強く思いますし、深く感謝しています。

 このようなことがあって改めて、チャリティーという活動について、私もじっくり考えました。
 私のもとには今たくさんの方々や団体から、チャリティーイベントや募金活動へのお誘いがあります。目的は同じでもそれぞれの成り立ちも、方法も、雰囲気も、寄付先も違うもので、そのすべてに参加することは不可能と考え、実はとても悩みました。
 もちろんこうした運動に共感します。ですが、冷たい人間と思われることを恐れずに言いますと、そのいずれかに参加していずれかをお断りするのも何か気持ちがスッキリせず、かといってすべてに参加してあっちにもこっちにも私個人の名前が書いてあるという状態にも、何か違和感を感じます。
 それで私の出した結論は、当面はこのようなお誘いには基本的に不参加とさせていただき、私自身が実行または提案できる方法で最大限、そして長期的に支援し続けようというものです。
 一日も早い復興を、と切に願っていますが、想いを遂げるまでには時間も必要であると想像します。今は震災が起きたばかりで人々の意識がとても高いですが、時が経ってもこの気持ちを忘れず支援が続けられるように、長期的に広く呼びかけ、行動していくことを私の目標にしたいと考えています。

具体的に
 私が考えた支援のかたちは下記の通りです。


私は2000年のファーストライブから毎回チャリティーポストカードというものを販売してきました。売上金を全額日本赤十字社さんに寄付するという活動です。いつもは日赤の国内での活動をサポートする窓口に寄付していますが、今回は予定を変更し、日赤の東北関東大震災義援金窓口に寄付をさせていただくことにします。また、ツアーグッズの中の「クリアファイル&ステッカーセット」も急遽チャリティーアイテムとして、同じく売上金の全額を義援金にさせていただくことにします。尚この商品はIDS!SHOPの通信販売でもご購入いただけます。

予定通り開催することに決めた名古屋と大阪でのライブ会場には義援金募金箱を設置することにします。
(*)これについて補足です。あくまで個人的な考えですが、すでに多くの方がおこづかいやお給料、貯金の中から、自分の善意に従ってそれぞれに金額を決め、募金をしていらっしゃることが想像できる今、「もっともっと!」と私が先導して過剰に募るのは、何か違う気がします。ですから会場では「今日この場でとにかくたくさん寄付してほしい」と呼びかけることはしないつもりです。支援する側が日常生活をしっかり送りながら、できる範囲で少しずつでも長く続けることも大事という考えだからです。もしその日は持ち合わせに余裕がないという方は、またご自身のタイミングで身近な機関を通して募金をしてもらえれば、というのが私の気持ちでもあります。

ツアーグッズ以外に長期的にできることを、具体的に準備し始めました。用意ができ次第、こちらのホームページで提案させていただきます。

私の仕事は「伝えること」です。多くの方に向けてメッセージを発信できる立場にあるので、この震災から時間が経っても今後の活動の中で折りに触れて、皆さんに支援の気持ちを忘れずにいましょうと呼びかけていくことにします。復興の過程を見守り、私たちができることを長く意識していくように個人的にも心がけます。

ちなみにですが私個人のことを申しますと、日本赤十字社さんの東北関東大震災義援金窓口に寄付をしました。先ほどお話したように10年以上寄付し続けてきた経緯もあり、長く信頼を寄せている団体だからです。インターネットからでも、郵便局からでも入金できますので、もしも「今すぐ寄付したい!ライブ会場にも行けないしどうすればいい?」と思っている方には日本赤十字社ホームページをご紹介します。


支援する側として

 長くなりましたが、最後にもうひとつだけ。支援する側にある私たちのこれからについて、私が思っていることを書きます。
 今、自分が元気でいることや、お腹いっぱい食べたり笑ったりすることに罪悪感を感じるという人がいます。大変な人がいるのに…という気持ちは私もよくわかります。でも、被災地では過酷な環境の中でみんな励ましあって冗談を言ったりしながら必死で乗り越えようとしていると聞きます。無事でいる私たちが悲しい顔をしてるなんて、なんて情けない、おこがましいことでしょうか。
 被災地をサポートする側は元気でいなければなりません。誰かを励ましたり支援するためには、そのために体力的、精神的なでっかいエネルギーが必要なんです。しかも長期的に。

 亡くなった方々を哀悼する気持ちと、今生きている命の輝きを否定することはまったく関係がありません。生の力を恥じてはいけない。楽しむことと、ふざけることとは違います。
 楽しむこと、笑うこと、食べること眠ることの幸せを後ろめたく思うなど、命に失礼なことです。一生懸命に笑い、一生懸命に食べ、一生懸命に生きる。そして生きる喜びを伝え励まし、被災地の環境が整うまで彼らのぶんまできっちり働くことも支援だと思うのです。
 たとえば料理人が料理をつくる、花屋さんが花を売る、今までのように普通に。それが確かに長い支援につながるはずです。日常を続けられる人は続けましょう。私にとっての日常、そして仕事とは、歌い、演じ、創造し、届けることです。

 不安は人から人へ伝染します。もっと他のものを自分から隣の人へ手渡していくようにみんなで意識してみませんか。

 以上です!お読みくださった皆さんありがとうございます。

 坂本真綾


※上記「私の考える、支援のかたち」は2011年3月22日に発表いたしました。
文章中にある「東北関東大震災義援金窓口」は現在「東日本大震災義援金窓口」に名称変更されております。