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text: 梅岡彩友美 |
強い女性に惹かれる。
今時のシーンでいえば、やはりメアリーJ.ブライジとかローリン・ヒル、アリシア・キーズ辺りの。しかし彼女たち――そういった“ウーマン・リヴ”なミューズたちは――どういうワケか、おしなべて繊細だ。脆さと逞しさの均衡を健気に保ちながら、ときに過剰なまでに、そのアイデンティティを掲示しつづける。そういう危うさを“女性の美しさ”だと信じていたし、また畏敬の念さえ抱き、憧れもしていたのだ。
mimi、あるいは宮本典子という女性への対外的なイメージはどうだろう。“日本の芸能界で活動後、意を決して単身渡米。本場のミュージシャンたちと対等に渡り歩き、着実なキャリアを積んできたひとりの女性アーティスト”という華麗なプロフィールがあるとして、果たしてそこから受ける印象は、いかにも“現代の勇ましい女性像”である。
そんなステレオ・タイプの鋳型に、彼女はちょっと拍子抜けするほど当てはまらない。
間違いなくダイナミックなキャリアを展開してきているワケだが、フェミニズムとかジェンダー・フリーとか、妙に力んだ思想云々とは程遠い、まったく奔放で天然でチャーミングな“ひらめき”の人だ。それは驚くほどに自然で、ただ自分らしく走ってきただけという、至極シンプルな生き様である。あのパワフルなボーカルとはやや趣きの違う、愛らしい、柔らかい声でいういいカンジで力の抜けたコメントがつとに印象的だった。
「自分の好きなことって、いつか絶対に見つかると思うの。もちろん結婚も、女としてのひとつの選択肢。私も“mimiはいいよね、やりたいことがあって”って友達に言われるけど、主婦だって特殊技能だし立派な仕事だと思うの。スキルを見つけることだけが、女性にとって大事なわけじゃない。女性は女性のきめ細かい部分というのが本能としてあると思うし、それは男性にない部分でしょう。餅は餅屋じゃないけど、絶対違うんだもん、男性と女性は。だから何も、同じ線に立たなくてもいいんじゃないかな」
目指すべきひとつのロール・モデルとして、羨望のまなざしさえ向けられるであろう彼女の存在。こういう自己実現の仕方を果たしている人に、自分探しに躍起な女性たちはとかく“カリスマ的な強さ”を見出そうとしてしまう。高邁な理想とそうではない現実にいたずらに振りまわされて、どこか気骨と願望がひとり歩きしている向きもある。本当の自分はこんなんじゃない――こうありたい自分像が自分を締めつけもする。そんな現代の迷える女性たちにとって、彼女の存在は衝撃的だ。なにしろ彼女は既存の“強い女性像”をやみくもに誇示しない。あらゆる呪縛から解放されて、己の本質と真の自由を知った人がもちえる本当の強さを、mimiからこそ感じとれるからだ。
今回の新作は、そんな彼女の集大成的作品である。
mimi名義としては、2枚のオリジナル・アルバムに続く初のカバー・アルバム『エレメンツ』。本人いわく“ものすごくマニアックな選曲”という、彼女のルーツが凝縮された、魅惑的かつひたすら濃厚な逸品だ。
「とりあえず、何でもやってみることが大事って思ってやってきた。最初から拒否はしないの。だけど、ただひとつ変わってないことは、やっぱりソウル・ミュージック、R&Bが好きっていうことね。それだけはいつも私の中に流れているし、それを基準にしてきている。その集大成が今回のアルバムなの」
豊かな才能、恵まれた環境、しなやかなキャラクター。エネルギッシュな軌跡を導いたのは、確かに彩り鮮やかな“要素たち”だった。
――“wonder woman”は一日にしてならず。だけど、誰しも“wonder woman”になれる。
彼女が放つおおらかな光は、そんなメッセージを含んでいる。
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