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こんな鬼束ちひろを待っていた。

メジャーからは「剣と楓」以来約6年ぶりとなる待望のオリジナルアルバムが完成。 タイトルは「シンドローム」。「月光」「眩暈」など初期を彷彿とさせる、生命を削るような魂を揺さぶる歌声の存在感が復活。サウンドプロデューサーに鈴木正人(LITTLE CREATURES)を迎え、ただの原点回帰ではなく成熟味や深みを増した、現在の鬼束ちひろの新たな魅力溢れる傑作が誕生。先行シングル曲「good bye my love」含む全9曲収録。
初回限定盤には鬼束ちひろベストセレクション的ライブ音源を収録したボーナスディスクが付属。完全復活を印象付けた2016年7月22日の大阪サンケイホールブリーゼ、11月4日の東京中野サンプラザでのライブよりベストテイクをセレクト。「月光」「眩暈」「流星群」「私とワルツを」、そして最新曲「夏の罪」まで、現在の声で蘇る名曲たち。初期から近年まで変わることのない彼女の絶対的音楽価値を再認識させるような、ファンのみならずとも必聴のベスト的内容となっている。

鬼束ちひろ New Album「シンドローム」

 2016年11月、メジャーでは約5年ぶりとなるシングル「good bye my love」をリリースした、鬼束ちひろ。聴き手の心の奥深くにある“何か”と共鳴する歌心は、これぞ鬼束ちひろたるもので、より成熟した繊細な表現は、歌の刺さる深度を増した。シンガー・ソングライターとして、再びシーンに帰ってきたことを告げるシングルとなり、11月4日に行われた中野サンプラザホールでのワンマンライヴも、魂に語りかけるようなヴォーカルと歌に宿る凛々しい緊張感が、感動を呼んだ。エイミー・ワインハウスやアデルといった、文字通り“ソウル”や“ブルース”を歌い綴るシンガーが求められ、多くの人の心に寄り添い、解きほぐしている昨今に、鬼束の歌もまたフィットする。その歌は、心の奥底にしまいこんだ思い出に共鳴し、時に痛みや悲しみ、切なさをも解凍してしまうが、歌の流れるひとときくらい、そんな涙の海にどっぷりと浸かってもいいのではないかと思う。
 そしていよいよオリジナル・アルバムとしては6年ぶりとなる『シンドローム』がリリースとなる。先行シングル「good bye my love」やアコースティックバージョンとしてカップリングに収録されていた「碧の方舟」を含む全9曲で、シングル同様に鈴木正人がサウンド・プロデュースを手がけた。クラシカルな美しさが基調でいて、大人の戯れや風通しの良さを感じるサウンドとなっているのは、歌の息づかいにも反映されただろう。すっと体を包み、馴染んでいくようなタッチのサウンド、歌が、心地よくもある。
また、「弦葬曲」では元SAKEROCKで現在は様々なアーティストのレコーディングに参加する伊藤大地、「Sweet Hi-Five」「シャンデリア」ではASA-CHANG、「ULTIMATE FICTION」ではあらきゆうこ、「火の鳥」では朝倉真司、そして「good bye my love」「碧の方舟」では松原“マツキチ”寛と多彩なドラマーを迎えているのも面白い。これまでは、ピアノとストリングスによるアコースティックなアレンジの印象が強かったと思うが、今回はアレンジもよりバラエティに富んでおり、また名だたるミュージシャンとともにモダンで、厚みある音像を作り上げている。ミディアム・テンポで聴かせていくばかりでなく、高揚感のあるブリティッシュロックを思わせる「ULTIMATE FICTION」や、高田漣のペダルスティールが甘美にきらめく「シャンデリア」なども新鮮な響きだ。
 大きなサンドスケープに時には身を委ねてたゆたうように歌い、または重厚な音をぐっと背負って鬼気迫る歌を響かせたり、感情の心音を捕まえていくような微妙な旋律を操ったりと、歌の表現も豊か。なだらかな起伏のある一枚で、いつの間にか作品のなかに取り込まれる感覚がある。書き手として、叫びをあげ血が流れる生々しい感情そのままを綴った初期の頃の手法ともちがい、より感情の深淵を覗き、すくいとった言葉たちを歌や物語へと昇華するソングライターとしての深化が刻まれた。アーティストとして芳醇な季節を迎えていることを感じさせるアルバムだ。このアルバムで再び、無二のシンガー・ソングライターである鬼束ちひろに出会ってほしい。

ライター 吉羽さおり

  • 「シンドローム」ダイジェスト試聴トレイラー
  • 「夏の罪」MUSIC VIDEO
  • 「good bye my love」MUSIC VIDEO
  • 「good bye my love」ダイジェスト試聴トレイラー

DISCOGRAPHY