ORANGE RANGE
NEW ALBUM「ELEVEN PIECE」
2018.8.29 OUT

INTERVIEW

  • ORANGE RANGEオフィシャルインタビュー・YOH

    「ELEVEN PIECE」はサウンドの質感が柔らかめで、まろやかな感じかな。(制作前に)特にイメージを共有することはなかったし、「フタを開けてみたら…」という印象が強いです。制作中はとにかく(作詞・作曲を担当した)「大きな夢の木」にずっと向き合っていたので。

    この曲を作りはじめたのは2014年くらい。2011年に東北の震災があって以降、沿岸部の町に足を運ばせてもらって、いろんな風景を見て、その町の人達や、行動を共にした仲間達と話すなかで「この経験を、自分の音楽にどう落とし込めばいいのか?」という問いに向き合ってきたんです。自分のなかで答えを探しながら曲作りをしてきて、それが「そばにいつでも」「ひと雫」「Carnation」という曲に結びついて。ただ、今回の「大きな夢の木」には元気さもあるので、それをどこに向ければいいかをずっと考えていたんです。「きっとこういうシチュエーション、あるよね」というふんわりした想定で歌詞を書くことはできなくて、自分の目で見て、感じて、「ここに向ける」というのがはっきりしないと形にしづらくなってきていたんだと思います。

    歌詞が書けたきっかけは今年、ある児童養護施設に行かせてもらったことでした。そこにいる子供たちは、いろいろな事情で生まれ育った場所を離れて、施設で共同生活をしていて。身元がわかるといけないという理由で運動会などのイベントにも出られないんだけど、みんなすごく元気に暮らしているんです。その様子を見たときに「この子たちに向けて歌詞を書こうと」と思って。自分でも不思議だったんですけど、書いているうちにバンドメンバーへ向けて書いているような気もしてきて、「重なってるんだな」と素直に感じました。あるセクションだけはRYOにも手伝ってもらって、4年越しに完成したときはこみ上げてくるものがありました。自分と向き合って成長していけば、人間的な部分をもっと表現できるようになれると思っているので、そういった流れの曲作りは続けていきたいですね。

    ベーシストとしては、自分のやり方でレコーディングできたことが大きいですね。大きなスタジオではなくて、ふだん曲作りのために使っているスペースで一人で録音したんですけど、ペース配分を自分ですべて決められるし、テイクも何回も確認して判断できるので、ギュッと濃縮してやれた感じがあって。それはすごく良かったと思います。ベースがしっかりしていれば、他のメンバーがいろんなチャレンジをできると思うんですよ。各々がカラーを持っていて、それを出したい人たちなので、軸になるところを自分が支えていないとバンドとして安定しないというか。それは以前よりも意識するようになったし、それを解ったうえで曲を作ったり、ステージに上がっている自分が今、いますね。

  • ORANGE RANGEオフィシャルインタビュー・RYO

    アルバムの制作は基本的にいつも通りだったと思います。リーダー(NAOTO)かYOHが曲を作って、僕の(ラップの)セクションだけを空けて送ってくれて、そこに歌詞を乗せて送り返すっていう。だから、サビのパートは誰が書いたのかわからないんですよ(笑)。「KONNICHIWA東京」「Destroy Rock and Roll」はリーダーっぽい感じがしますけどね。

    「Theme of KOZA」は歌詞がまったく乗っていない状態で送られてきたんです。コザの曲にすることは決まっていたから、すぐに書けましたね。コザを応援したいという気持ちはずっとあるんですよ。以前はシャッター通りみたいになってたんだけど、最近は少しずつ元気になってきて。飲食店の人とかヒップホップをやってる人とか、個性的な人が多い街なんですよ、もともと。歌詞にも書いているんですけど“Deep”という言葉がすぐに浮かんでくる場所ですね。他の曲もそうですが、歌詞には自分自身が経験したこともたくさん入っていて。何気なく聴いていても、パッと入ってくる言葉、共感してもらえる言葉がきっとあると思うので、ぜひ注目してほしいですね。けっこうマジメに書いてるんですよ、歌詞は。

    今回のアルバムで印象に残ってるのは「Ryukyu Wind」と「楽園Paradise」。どちらもデモを聴いた瞬間、ライブのイメージがすぐに浮かんできたんです。特に「楽園Paradise」は素晴らしいですね。音サビというか、ボーカルが入っていないところがピークになっていて、新しいことがやれたなと。ライブでも武器になると思うし、「リーダー、ナイス!」という感じです。

    リーダーは(楽曲の制作時に)ライブのことは意識していないと思うので、ライブでどう表現するかはボーカル3人の責任が大きくて。それぞれの曲の置き場所、見せ方についてはいつも話してるし、スタッフの意見を取り入れることもあって。試行錯誤しながらやってる感じですね、そこは。いい状態をキープするために、空いてる時間はスタジオに入るようにしてます。トラックにいちばんピッタリ来る声の出し方を探って、歌詞を書いて、ラップして。そういうトレーニングを続けていないとダメになる気がするし、ライブでも自然に言葉が出てこなくなるんです。それは自分だけじゃなくて、他のメンバーもおそらくやってると思います。

    台湾に対する印象ですか? いまや“ホーム”というか、いつも超ウェルカムなんですよ。去年のツアーもすごく反応が良くて、「花」のときに泣いちゃいましたから。台湾のライブをきっかけにして、韓国や香港にも行けるようになったし。海外に行くのはちょっと苦手なんですけど(笑)、ライブをやると「来てよかった」といつも感じます。

  • ORANGE RANGEオフィシャルインタビュー・HIROKI

    「ELEVEN PIECE」のジャケットの印象に誘発されているところもあると思うんですけど、全体的にやわらかいというか、リラックスしている印象ですね。「よしやるぞ!」と気合いを入れてるのではなくて、力を抜いて“ヒューッ”と飛んでる感じというか(笑)。特徴があるとすれば、リーダー(NAOTO)が歌詞を書いている曲が多いということかな。いままではデモ音源の仮歌詞をもとにして「ここを書き直したい」みたいなことが多かったんですけど、今回はリーダーのなかで最初から「この歌詞でいくから」というビジョンがはっきりしてたんですよね。

    先行配信した「Ryukyu Wind」は(Jリーグクラブ)FC琉球の公式応援ソング。サポーターと選手たちが同じ夢を持って羽ばたき、上昇気流に乗っていくイメージの曲になってます。MVも地元で撮りました。崖の上のシーンはドローンで撮影してるんですけど、すごくきれいですよ。メンバーよりもドローンのほうが活躍してますね(笑)。

    「Ryukyu Wind」「センチメンタル」あたりはこれまで自分たちが作ってきた台の上に乗っかってる曲。逆に「Happy Life」などは現在の年齢だからこそ出来た曲なのかなと思います。極端に明るいとか暗い歌ではなくて、なんでもない日々の生活のなかで感じることを歌ってるんですけど、少しずつそういうものも表現できるようになってきたのかなと。以前は“いい意味で期待を裏切る”みたいなことを意識していたけど、最近は感じたことを自然に出せてるんじゃないかな。

    そういう変化はライブにも現れていると思います。1本1本のライブに対する意味もしっかり感じられるし、余計なことを考えすぎず、シンプルに集中できてるんですよ。以前はいろんなことに責任を感じ過ぎていたし、肩に力が入ってることが多かったんだけど、いまはすごく自然体で臨めていて。やっぱり“ヒューッ”という感じですね(笑)。

    アルバムを日本と台湾で同時にリリースできるのも嬉しいですね。台湾には何度もライブで訪れてますけど、自分たちの初心を思い出させてくれる場所なんです。これまで積み上げてきたものがリセットされて、バンドを始めた頃みたいに新鮮な気持ちでやれるというか。そうやってドキドキできる場所があるのは、自分たちにとってもすごく大きいですね。

    この先のビジョンですか? そうですね…………って考えてる時点で、ビジョンはないということでしょうね(笑)。いまはいろんなバンドとのつながりがあるし、何よりもお客さんと一緒に進めている感じがすごくあって。その感覚を大事にしながら少しずつ進んでいきたいと思います。

  • ORANGE RANGEオフィシャルインタビュー・YAMATO

    2016年は結成15周年の47都道府県ツアーをカーニバルのような雰囲気でやらせてもらって。これまで積み上げてきたものを改めて確認できたし、改めて「ファンのみんなに背中をおされているな」という印象を受けたんですよね。去年(2017年)のツアーは“ありがとう”と“これからもよろしくお願いします”という感じで、もっともっとORANGE RANGEらしく振り切ってやっていこうと再確認できて。枠に収まらず、いい意味で裏切り続けるというか。それは今回のアルバム「ELEVEN PIECE」にも出ていると思います。

    前回の「TEN」の要素にいまのORANGE RANGEを加えてアップデートさせた感じもあるし、なおかつ、優しさがいっぱい詰まってる雰囲気もあって。優しさが感じられる理由はわからないですけど、年相応なのかなと思ったりもします。僕自身、普段からわりと穏やかですからね、最近は。

    先行配信した「Hopping」は、僕が出演させてもらってるNBAの番組(「WOWOW NBA バスケットボール 2018」)イメージソング。音楽を始まる前はバスケを一生懸命やっていたし、NBAも小学校の頃から観ていたので、番組と音楽で関われるなんてめちゃくちゃ光栄ですね。歌詞はバスケのニュアンスを取り入れつつ、スポーツ全般の精神を中心にした内容になっています。ライブでもやっていますが、NAOTO、YOH、ドラマーのグルーヴが映える曲だと思うし、お客さんも湧いているイメージがありますね。もっともっとライブ映えする曲だと思うので、この後もどんどんやっていきたいです。「Hopping」はMVも斬新なんですよ。「ダンスユニットのMV?」って思うくらいに躍動感が強調されているし、ダンスが好きになってもらえる仕上がりですね。

    いままでとは違う感じの曲ということでは「KONNICHIWA東京」かな。この曲のボーカルは8割くらいが僕なんですよ。低音、中音、高音を含めて全部は聴き取れないくらい声を重ねていて。しかも歌詞はフルでNAOTOが書いているんです。そういうバランスは初めてだったので、新鮮でした。今回はアルバム全体を通してNAOTOが歌詞を書いていて、それに寄り添うような感じで表現することが多かったですね。

    常におもしろいことはやっていきたいし、その精神は今後も持ち続けていきたいですね。年齢を重ねてくると、守りに入るというか、いろんなところでラクしたくなるけど、もっともっと探求したいと思ってるんです。ボーカルの音域、パフォーマンス、先進的な部分を含めてさらにレベルアップできるはずだし、限界はないと思っているので。

  • ORANGE RANGEオフィシャルインタビュー・NAOTO

    「TEN」の内容が気に入っていたから、「ELEVEN PIECE」もその延長線上にあるようなアルバムになればいいなと思ってました。打ち込みの曲、バンドサウンドの曲、打ち込みとバンドが混ざった曲。大きく分けると3パターンあるんですけど、それが一つのアルバムのなかに入っているのがいいなと。そのスタイルがいちばん落ち着くというか、バンドに合ってるし、作ってても楽しいんですよね。

    新しいトライもやってないですよ、いい意味で。“いままでと違うことをやってみよう”という実験的なことをやってなくて、“新しいものが自然に出てきたらラッキー”くらいの(笑)。自分の音楽的な好みも絞られてきてるし、ムリに違うことをやるより、作りたいものを素直に作ったほうが健康的なので。以前の作品を聴き直して、同じアイデアで曲を作ることもありますね。たとえば「楽園Paradise」は、アルバム「world wolrd world」(2009年)に入っている「HIBISCUS」の“いま”バージョンのつもりで作ったんです。

    いままでアルバムを聴き返すと「どういう意図でこんなことやったんだろう?」という発見がいっぱいあるんですよ。それはすごくおもしろいし、制作のきっかけにもなるんですよね。

    「KONNICHIWA東京」も気に入ってる曲のひとつです。まず、音がカワイイ(笑)。ギターの弾き語りで作り始めた曲なんですけど、アレンジしていくうちにシンセが中心になって。音色、ヌケ感を含めて音作りが上手くいきました。東京のエキゾチック感、ガチャガチャ感も表現できたと思います。僕らは沖縄に住んでますが、東京はいつ来ても華やかだし、いろんな人がいるし、刺激もいっぱいあって。“何がなんだかわからないけど楽しい”という感じを出したかったんですよね。

    ライブで演奏するときのことは(制作時には)2%くらいしか考えてません(笑)。だからツアーが始まる前は「どうする?」っていつも焦るんですよ。ぜんぜん学習能力がないんですけど(笑)、いつも何とかなってるから、今回も大丈夫かなと。照明や演出もどんどんシンプルになってますね。必要最小限の要素で、どう効果的に見せるか?ということに興味があるので。ライブに臨むときの気持ちですか?「おまえら!」みたいに煽る感じもないし、戦闘モードでもなくて、「楽しいよね~」というテンションなので。めっちゃマイペースですね。

    制作もライブも、自分たちの性に合ったやり方で進められているので、この状態を続けていきたいと思います。主に曲を作ってるのは僕ですけど、他のメンバーが「こういうことをやりたい」って言い出したらラッキーだし(笑)、ムリせず、自然に進んでいけたらなと。そういう感じで20周年を迎えたいですね。