type III
VICL-69077 / ¥3,045(税込) / 2002.06.21
01.
Saturday
02.
DEEP INSIDE
03.
there's nothing like this 〜featuring TOKU〜
04.
cream
05.
the day i called it a night
06.
cerulean blue
07.
everywhere
08.
asagao
09.
lounge of rapture
10.
soft parade on sunset(type 203 Mix)
11.
into the beautiful flame
ヴィジュアルや作品のアートワークから、paris matchのことをお洒落なユニットと思っている人も多いでしょう。それを機に彼らの音楽に触れてもらうのはいいのですが、音楽面でのイニシアチブをとる杉山にはお洒落な音楽を作っているつもりもなければ、マニア受けの音楽を作っているつもりもないそうです。彼らが目指しているのは、歌メロのしっかりした、日本語の良質なポップスなのです。
スタイル・カウンシルに代表されるUK発のブルーアイド・ソウル、ジャズファンク、ブラジル音楽の流れを汲む、paris matchの音楽には人肌近いぬくもりを感じます。今風に言うなら、オーガニック・ソウルでもいいのかもしれません。音作りへのこだわりは随所に表れており、普通なら打ち込みで済ませるところも、レーベル・メイトの松原正樹をはじめとするジャズ/フュージョン系のベテラン・ミュージシャンを惜しみなく投入しています。
「僕らはツールとしてデジタルなものを使っているんだけど、求めているモノや表現しているものはものすごいヒューマンなものというかプリミティヴだったりするんで。ギターのキュッというのでも弾いている人は“もしマズかったら差し替えて”と言うんですけど、そういう音が入ったりするとニヤッとしたり」(杉山)
「なんでも便利な世の中だけど、音楽も技術的な面は別としても作っているのは人間だし、ロボットは代わりに歌えないし。だからこそ自分で表現できたらいいなと思うんですけど」(マリ)
「機械には負けないよという」(古澤)
ほとんど古澤が手がけている歌詞には、東京で繰り広げられるさまざまな出来事が描かれています。主人公は、男性はもちろん、同性ならば憧れてしまうくらい素敵な女性なのですが、彼が言うには普通の女性が主人公だそうです。それでもやはり素敵に映るのは、洗練されたサウンドとミズノのアンニュイな歌が成せる業だと思います。楽曲の主人公になりきっていたというミズノは腹の底から歌い上げるタイプのヴォーカリストではありませんが、彼女はシャウトを越えるささやきを持っています。そこはかとなくソウルとでも言いましょうか。そしてそれは時に、甘く危険な香りを発することもあります。
いい音楽に求められるのは、いいメロディ、いい言葉(歌詞)、いい歌です。それらをすべて満たした彼らの音楽はとても耳障りが良く、知らぬ間に生活のなかに入り込んでいきます。でも、BGMではありません。paris matchの音楽は、穏やかな生活を送るためのサウンドトラックなのです。
岡部昭彦