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音楽を創る

磯 希

スピードスターレコーズ
制作担当

アーティストの一番近くにいる“いちリスナー”でありたい。
SCROLL

アーティストと
共に作品を
生み出す仕事。

ディレクターは、主に担当するアーティストの音楽コンテンツの制作全般を担います。企画・立案に始まり、予算とスケジュールの管理をしながら、実際に作品化し、商品として落とし込むところまでを、宣伝や販促担当らで編成するアーティスト担当スタッフチームの中で、常に旗を振りながら進行していくという役割ですね。
そもそもアーティストとレコード会社は一定期間あるいは作品ごとに契約を結びます。この仕事は、その枠組みの中で、どのような作品たちをつくるか、またそれらをどのような順番で、どのような方法で世の中にリリースしていくのか、といった中長期的な計画を立てるところからスタートします。その計画を元に、見積もりや企画書を作成し、会社の決裁を経て予算を確保したのちに、レコーディングを含む具体的な作品づくりにとりかかっていく、そんな流れですかね。
我々は自身でまだ日の目を浴びていないアーティストのライブを見に行ったり、音源を聴くなどして、新人の開発も行います。いま担当しているのは、4アーティスト。年齢もキャリアもバラバラでバンドもいればソロもいます。SPECIAL OTHERSや藤原さくらは自身で発掘しデビュー時から手がけているし、 UAやハナレグミはこの仕事に就く前から大好きなアーティストで幸運にも担当させてもらっています。制作進行のスタイルもアーティストごと実に様々。自ら楽曲を生み出すアーティストの場合には「次はこういう作品をつくろうよ」というこちらの提案から始まることもあるし、アーティストから「ちょっとこんな曲ができたから聴いてみてよ」みたいなスタートもある。自身では作詞作曲をしない歌唱がメインのアーティストの場合には、作家さんにイメージを伝えて楽曲制作を依頼したり、場合によっては多くの作家さんから楽曲を集めてコンペ形式で選ばせてもらう場合もありますね。

大切なのは
コミュニケーション。
きっと、それがすべて。

音楽という目に見えないものを扱うので、アーティストの頭の中にあるイメージを理解し共有するためには、ただただコミュニケーションを積み重ねるしかないなと思っています。だから、アーティストとは可能な限り多くの時間を共有したいと思っているし、実は音楽そのものや作品づくりとは関係のない部分での信頼関係を構築することが大切なのかもなとも思っています。
例えば、楽曲制作中に、メロディや詞やアレンジなど「なんだかピンと来ないなあ」と思う場面があれば、できるだけ素直に思うところを伝えるように努めています。僕自身は楽器も演奏できないし歌がうまく歌えるわけでも楽譜が読めるわけでもないので、正直それはいつも勇気がいることで、もしも「じゃあ、磯がやってみてよ」と言われてしまえば、僕はうつむくしかないですもんね。音楽的にあるいは技術的に専門的な観点で彼らと話ができればなあ、と思うこともあります。でも大切なのはそこじゃないのかもしれない。それでも彼らが「まあ、磯が言うんならもうちょっと考えてみようかな」って耳を傾けてくれるとすれば、それは音楽的な知識や経験や結びつきではなくて、あくまで「人」と「人」としてのコミュニケーションの積み重ねで構築された信頼関係があるかないかなのかな、と。僕は専門家じゃない、アーティストの一番近くにいる“いちリスナー”として、そしてリスナーの一番近くにいるプロとして、少なくとも自分が素敵だと思えなければ、世の中の人もぐっと感じてくれないんじゃないか?という思いでこの仕事をしています。

想像以上に地味、
でも想像以上に
かっこいい。

僕の場合は新卒で入社したときから制作部門に配属され、図らずもそのままこの職種一本でやってきました。最初は社会人としてもディレクターとしても右も左もわからずで、先輩の下でアシスタントディレクターを2年ほど経験させてもらいました。そもそも入社前はディレクターというのがどんな仕事をしているのかなんてまったくもってわからなかったけれど、なんとなく想像していたものと実際にこの仕事に就いてみてのイメージのギャップは確かにありましたね。率直に言えば、思っていたよりもとても地味な仕事です。アーティストとは一番近いところにいて一番長い時間を共にする役割かなと思いますが、いわゆる世間的な「音楽業界」っていうキラキラした比較的派手な印象とは違って、スタジオや会社にこもってはコツコツと何かをずっと積み重ねている感じ。でも、「裏方」ってかっこいいと思いませんか?うまく言えないけど、なんかかっこいいじゃん!って思って働いてます。
極論で言えば、正直ディレクターなんていなくてもアーティストは音楽作品を作ることができるし、そこに素敵な音楽は生まれると思ってるんですね。だけど僕は、ディレクターって「触媒」みたいなものかなと思っていて。AとBがあって化学反応する。それだけでちゃんと反応してCを生み出すんだけど、そこに「触媒」があればその反応速度はぐっと早まってたくさん反応して多くのものが生まれる。最も現場のパフォーマンスが発揮されるように機能する。その役割を担うのがディレクターなのかなと思います。

やめろと言われるまでは
続けてみたい。

この仕事に就いて10数年、自分でもよく続いているなと思います。許される限りはこれからも続けてみたいなと思っています。 理想を言えば、アーティストにはスケジュールや予算のことなんて気にしないでとにかく納得がいくまでこだわり抜いて作品づくりに打ち込んで欲しいんです。でも、もちろん実際にはなかなかそういうわけにはいかないので、彼らのアイデアやイメージをどのようにして現実的に箱の中に収めていけばよいか、制作する上でのそのジレンマがディレクターとしての苦悩かもしれませんね。 これからこの仕事を志す人へ?語弊を恐れずに言えば、あまり自分の意思や主張が定まっていない方がよいのかもしれないですね。「こうあるべきだ」とか「こうでなくちゃいけない」っていう思いをさほど持っていない方が。世の中にはたくさんのアーティストがいて、たくさんの音楽があって、好き嫌いはあっても、きっとそれぞれに素晴らしい、そう思える方がいいじゃないですか。それに、ディレクターは基本的には1アーティストにつき1人で担当するので、実は他のディレクターがどのような仕事のやり方をしているのかあまりわからないんですね。さらにアーティストごと人間性もその音楽も多種多様。だからこの仕事の仕方に共通したルールも正解もなくって、各プログラムに適した自分の役回りを自分なりに模索していく必要があるのかなと思います。だとすると、きっとこの仕事をするなら、余計な固定観念に縛られずに働ける方が楽しめるんじゃないかなと思うんです。