柴田淳
11th Album
「私は幸せ」

News

柴田淳
2017年9月20日発売
「私は幸せ」

「私は幸せ」

2017年9月20日リリース

  • 初回限定盤
    • VIZL-1208
    • VIZL-1208 / ¥4,000+税
    • CD+初回限定ブックレット+豪華32ページフォトブック+スリーブケース仕様
  • 通常盤
    • VICL-64819
    • VICL-64819 / ¥3,000+税
    • CD+通常ブックレット
収録曲
  1. 理由

  2. 両片想い

  3. 手のひらサイズ

  4. 嫌いな女

  5. 容疑者ギタリスト ~ 拝啓、王子様☆第四話 ~

  6. 誰にも言わない

  7. いくじなし

  8. バースデー

  9. Present

2年8ヶ月の前作を作った時の私は、もう電池が切れていたように思います。そこから今日まで、人間のやり直しのような日々だった気がします。
内容は今まで以上にストレートで、憎しみをそのまま表現しています。優しい歌はありません。
そこにはもう2年8ヶ月前までの柴田淳は居ないかもしれません。
どんなに変わろうと、この声でリスナーは引き戻されてしまうかもしれませんが、一曲目の「理由」という曲は、「あなたが居なくても世界は回る」と突き放しています。「あなたの生まれた意味なら、無かったらどうするの?」と、追い詰めるほどです。
そんな歌を作りながら、私は柴田淳を一生懸命連れ戻したような、2年8ヶ月前まで迎えに行ったような、そんな自分の子供を探し回る親のような気分で、一枚を作り上げた気がします。
永遠に思春期のような柴田淳を今後もどう育てていけばいいかは、未だわかりませんが、今の私の記録として聴いて頂けたら幸いです。
そして、今までも今も常に問いてることの答えをタイトルにしました。このタイトルをどう発音するかは、リスナーに委ねたいと思います。
30代最後にメロディを作り、40歳になり歌詞を書きました。そんな時期に制作し、印象的な作品達にもなりました。どうぞ聴いて下さい。 柴田淳

Movie

Interview

「自分が幸せかどうかを自分で言うこと自体、ゾッとしませんか?」――そんなふうに柴田淳が切り出した。それは完成したばかりの11thアルバム『私は幸せ』のアルバム・タイトルの話になった時だ。

「なんかヘンでしょ。例えば、何かいいことがあって、“なんて私は幸せなんだろう”って言うことは普通にあるかもしれないけど、そういうことじゃなくて、“私は幸せです”って断言するって、本当に幸せな人はしないと思うんですよね」

 確かに幸せの価値観は人それぞれであり、“幸せ”は感じるものであって、“幸せ”という言葉の前にあえて“私は”とつけて自らを誇示しているところにギョッとする。

 彼女はさらに続ける。

「『私は幸せ』というタイトルなのに、ジャケットの写真は全く笑っていない。『私は幸せ』というタイトルなのに、アルバムの収録曲も全然幸せそうに思えない歌ばかり。でもだからこそ、それはいったいどういうことなんだろうって思ってもらえるかなと思ったんです。タイトルは制作最後につけたんですけど、直感で『私は幸せ』という言葉が浮かんだんですよね。このワンワードだけでいろいろなことを考えてもらえたら嬉しいです」

 柴田淳が言うように本作には“幸せ”を感じるような優しい歌はない。しかも、歌詞はかなりストレートな表現方法で描かれている。彼女はなぜそこまで正直に感情を吐露したのか?実は今作の創作活動に入るにあたって、彼女は“柴田淳を想い出す”という作業から始めたという。そしてそれは、本人にとって相当大変な作業だったそうで、「柴田淳はどういう感覚で歌を作っていたのか?」「どういう世界観を作り出せばいいのか?」といった根幹的な部分だったというのだから、かなり深刻な問題だったといえる。なぜ彼女がそこまで追い込まれたのかというと、それは9thアルバム『あなたと見た夢 君のいない朝』(2013年)まで遡る。このアルバムは彼女の失恋を赤裸々に告白したもので、自分の胸の中をえぐり、傷つき苦悶し、身を削って作り上げた作品だった。そんなふうに自分の人生の断片を作品の糧にしただけに、その跳ね返りも大きく、作り終えた後に精も根も尽き果てたというのである。

「9作目を作って、私は燃え尽きましたから。あのアルバム以降、完全に電池切れの状態だったんですね。10作目を出した後、創作や制作をお休みしていた期間に耳の疾患や皮膚病になって入院したりと体調面の不調も含め、他にもいろいろなことがありすぎたので、かなり精神的に弱っていたんですよね。で、いざ創作を開始した時にどういうことを歌えばいいのかわからなくなってしまって...だから、まず柴田淳を連れ戻す作業から始めたんです」

そこで彼女は自分の中から出てくるメロディーと言葉を大事にしながら、それをそのまま形にしていった。それらは彼女曰く「30代最後にメロディーを作り、40歳になって歌詞を書いた」もので、そこには作家的な目線や作為的なものは一切介在していないという。その結果、生まれた楽曲は憎しみ、絶望、恨みといった暗い情感に支配されているものばかりとなったが、彼女は、「だから歌詞が直球すぎたかなって思うけど、それが今の私。それが今の私の記録なんです」と、話す。そんな状況にありながら、「未だに自分の人生は曇りのまま。一向に晴れていない気がする」と自嘲気味に言う柴田淳が、今回『私は幸せ』というタイトルをつけたというのも、なんだかとても感慨深い。

「“幸せ”って言葉を使う時点で“幸せ”を意識しているんですよね。ここに登場する歌の主人公は、“幸せにこだわっている女” なんですよ。“幸せ”を強く意識しているから、逆に不幸を感じたり、妬んだり、憎んだりということに敏感になる。だけど、そういう負の感情が内面で煮えたぎっていることに自覚がないんです。自分で気が付かないの。なぜなら、自分は幸せだと思っているから。そこに怖さを感じるんですよね」

 思えば、彼女はデビュー当初から現在に至るまで私的な心象表現と重ね合わせて自分自身と対話しながら、自らの歌の世界を紡ぎあげてきた。その世界は生ぬるい泥沼に浸かった柔なラブソングとは格が違う。愛を求めてつかめないもどかしさの中であがき、苦しみ、ともすると弱さやエゴをむき出しにし、心の闇をあぶり出すといった、それはかなりリアリスティックな毒を含んだラブソングなのだ。つまりはそういった負の感情が柴田の創作の栄養源となっていると言えるのだが、個人的には、そんな内省的な歌からにじみ出てくる何とも言えない“えぐみ”にたまらなく惹きつけられている。なぜなら、その“えぐみ”こそが、極めて人間臭い“業”だと思うからだ。そういう意味で言えば、その“えぐみ”が最新作の『私は幸せ』にもストレートなまでに色濃く出ている。だからこそ、怖さも切なさも息苦しさも、すべてが混ざり合って、悲鳴のようにリアルに響いてくるのだ。

 なお、本作では名プレーヤーたちが集まり、サウンドを盛り立ててくれていること、初めてホーンセクションを導入した楽曲も収録していること、また10年ぶりに昔からのファンにはお馴染の、知る人ぞ知る人気シリーズ「拝啓、王子様☆」の第四話も収録されており、陰鬱なだけではなく、そこにしっかりと遊び心も覗かせているということも最後に記しておく。

2017年8月 大畑幸子

柴田 淳 11th Full Album「私は幸せ」購入者対象
「両片想い」Music Video(Full Size) & メイキング映像 期間限定公開!

2017年10月20日(金)23時59分まで(終了しました)
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