八重山謡
1999.7.23発売／VICG-60213／￥2,600（税抜）

01.赤馬節
02.鷲ぬ鳥節
03.鳩間節
04.月夜浜節
05.船越節
06.大浦越地節
07.小浜節
08.安里屋節
09.黒島節
10.首里子節
11.崎山節
12.まるまぶんさん節
13.真南風乙節
14.千鳥節
15.夜雨節
16.仲筋ぬぬべーま節
17.みるく節

謡、三絃：伊良皆高吉、岡山稔、喜舎場英勝
笛：宮良清晃囃子：知念ノリ子
監修：玉代勢長伝（安室流保存会会長）

ビギン、大工哲弘、大島保克、�　今、沖縄の中でも最も音楽が豊かな島、八重山諸島。
そのルーツを探る、人類の財産となる珠玉の伝統的八重山島うたの決定盤。

【各曲解説】
01.赤馬節
（大意）さても喜ばしい今日の日よ。いとも嬉しい黄金の日よ。生まれ変わって羽が生える心地がするほど、嬉しいことよ。
*八重山を代表する格調高い祝宴歌。座開きの曲である。

02.鷲ぬ鳥節
（大意）綾の如く美しい羽の雛を生み、びろうどの如き若雛を孵し、正月のまだ明けやらぬ朝に、東の空へと、太陽のもとへと高く飛び立っていった。
＊赤馬節と並ぶ、八重山を代表する祝儀歌である。若鷲の巣立ちを吉祥として雄大に歌い上げている。

03.鳩間節
（大意）鳩間島の小高い丘に駈け上ると、そこは美しいクバの木並が広がっている。前に望むは西表。舟がにぎやかに行き交っている様は、なんとも面白いことよ。
＊鳩間島の土地讃歌。鳩間島は土地が狭いため、西表島に舟で農作業に通ったという。

04.月夜浜節
（大意）岸の浦の木綿畑は一面の花々でまるで月夜の浜のよう。綿花から糸を紡いで枷にかけましょう。繰り返し指でほぐすと、まあなんて糸筋のきれいなこと。風に舞うごと軽い手巾を織って（恋人を）待ちましょう。
＊薩摩の人頭税時代、男は米粟、女は上布や木綿を納めなければならなかった。過酷な暮らしの中で、幻想的ともいえる美しい歌を生み出した八重山人の心が伝わってくる。手巾（ティサジ）とは、娘が愛情のしるしとして自ら織り、想う人にあげた布のこと。

05.船越節
（大意）伊原間と舟越に新しく村建したのはどこのお役人でしょうか。お役人のミチン殿の御命令です。
＊前曲の結びとしてうたわれる。

06.大浦越地節
（大意）ウハラクィヂやユサマザ（地名）の道は、乙女のナサマが布を延ばして、絹糸を引いて（ご案内いたします。）
＊毎年、豊年祭などの祝いの場で歌われる。険しい山道を色々な配慮をして、役人を出迎えた様子を歌ったもの。
v 07.小浜節
（大意）小浜島は果報の島。大岳に抱かれて、白浜を前にして。大岳に登り遙か麓を見渡すと、稲や粟が豊かに実っている。穂の色は二十歳頃の乙女のよう。穂の粒が美しいので御初を捧げましょう。
＊小浜島の土地讃歌。8・8・8・6の琉歌形である。
v 08.安里屋節
（大意）安里家のクヤマはとても美人だったので、お役人の目差主が妾にと乞うた。上役の与人も望んだ。クヤマはどちらも嫌という。
＊赴任してきた役人の現地妻にまつわる話である。これをもとにして昭和9年、星克作詞、宮良長包編曲で「安里屋ユンタ」となり全国的にヒットした。

09.黒島節
（大意）我が島に地上天国をもたらして下さい。今年も来夏も豊壌の年にして下さい。願いが叶いますように、繁盛しますように。
＊黒島の祝儀歌。沖縄本島に伝わり、舞踊『松竹梅』の「鶴亀踊り」に取り入れられている。
v 10.首里子節
（大意）首里役人の子、初めての子よ。お偉いお方の子、金持ちの子よ。余りに高慢で、大変な色好みで、一人の妻、一人だけの嫁ではとどまらなかった。
＊首里子とは、赴任してきた役人と現地妻との間に生まれた子のこと。男の浮気を弱い者の立場から綴った物語歌謡。八重山一円に伝承される首里子ユンタである。

11.崎山節
（大意）崎山に新しく村建てしたのはどうしてなのか。良港の野浜口と肥沃な兼久地があったためなのだ。
＊1775年、波照間島から西表島の未開地に女100人、男80人が強制移住させられた。だが急傾斜の地とマラリヤのためついに廃村となる。ジャングル開拓の辛さと、望郷の思いを歌ったものである。

12.まるまぶんさん節
（大意）丸島盆山夕暮れごとに眺めれば、風に乗る白鷺。阿立、大立、宇嘉利に下原、真山、内道、成屋、船浮。（地名）祖内港の浮標に魚を狙う鵜がとまっている。南の港へと漕ぐ舟見れば、掛け声、櫨の音も歌のよう。
＊丸島盆山とは西表島祖内湾の中にある小島のこと。丸い盆のような島と、辺りの美しい風景を歌っている。
v 13.真南風乙節v （大意）マフェラツという娘は、五歳の時に父に死に別れ、七歳の時には母と死に別れたそうだ。自分一人ではやっていけない。
＊幼くして親と死に分かれ苦労を重ねた娘の物語歌。最後には良い若者に出会い幸せな結末で終わる。

14.千鳥節
（大意）前の浜に舞う千鳥は豊壌の世の鳥。伊武田浜を舞う千鳥は～。（以下略）
＊鳩間島の十二ヶ所の浜に舞い飛ぶ千鳥を、目出度い物として格調高く歌っている。

15.夜雨節
（大意）夜降る雨は豊作のしるし。稲、粟、麦、豆を実らせ、国王様に納める年貢を積み上げ、残りの稲粟（歌、続く）
＊農民にとって夜の雨はありがたいもので、豊年の吉兆であった。祝儀歌としてよく歌われる。

16.仲筋ぬぬべーま節
（大意）仲筋村のヌベーマは村一番の美人。一人娘で頼りにしていた、いとしい子。
＊良質の苧麻の株を得るため、人身御供となって竹富島から新城島へ役人の妾にやられたヌベーマ。母親の悲嘆を歌った物語歌。

17.みるく節
（大意）弥勒様が我らの島においでになった。どうぞ長く御逗留下さい。豊年なので踊り遊びましょう。お許しもでたよ。十日越の夜雨は豊年のしるし。
＊弥勒は中国から伝わった豊壌をもたらす神。祝い座の終わりに更なる幸を願って歌われ、幕引きとなるのである。

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