宮城まり子とねむの木学園のこどもたち
ママに捧げる歌
#1-DVD
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谷間に三つの鐘がなる
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小さな木の実
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遠い日の歌 ~パッヘルベルの「カノン」による~
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つぼみ
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鳥になった瞳
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幸せは樹のように
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アメイジング・グレイス
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ライオンは寝ている
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モーニング・トレイン
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ねむの木の詩<テントウ虫のテーマ> {詩=うた}
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夢をみたの
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少年
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ママに捧げる詩 {詩=うた}
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おやすみ
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ガード下の靴みがき
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暁に
【DVD】
宮城まり子とねむの木学園のこどもたちによるステージの模様とドキュメンタリー映像を収録!
【ボーナスCD】
ねむの木学園のこどもたちによる美しいコーラスを音楽CDとしても特別に収録!
指揮:宮城まり子
歌:ねむの木学園のこどもたち、ねむの木学園の教職員たち
宮城まり子 [15, 16のみ]
特別ゲスト:小曽根 真(ピアノ)[4]
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まり子とこどもたちがそろって作り上げた
美しいたわわな歌の果実
高橋正人
2012年の夏、宮城まり子の5枚組CDボックスの制作の報告と打ち合わせをかねて初めて掛川の「ねむの木学園」を訪問した。そのとき宮城さんが「今運動会の練習で子供たちの勉強しているコーラスを聴いてみませんか」とおっしゃり、子供たちが歌う「おやすみ」「幸せは樹のように」など数曲を体育館で聴かせていただいた。汗をかきかき懸命に歌う子供たちの瞳に私はすっかり魅せられたが、「絵は一人一人の作品。歌はみんなでそろって一つの作品を作り上げるんです」の言葉がとても心に残った。ねむの木の運動会にもかけつけ、子供たちがおかあさんである学園長・宮城まり子にささげた「ママに捧げる詩」を聴いて「いつかはこの素晴らしいコーラスを世に残したい、この感動を伝えたい」という思いが漠然とだけれども芽生えた。
運動会が終わって10月末から2ヶ月間、東京の伊藤忠青山アートスクエアで「ねむの木のこどもたち」というタイトルで、ねむの木学園のこどもたちが描いた素晴らしい絵の展示会が開かれた。会場の一隅に西ドイツ製の可愛らしい木目のグランドピアノが置かれ、訪れる観覧者の前で、その絵を描いたねむの木のこどもたちが、毎日、美しい歌を聴かせてくれた。その美しく、やさしく、どこか悲しげで私たちの心にやわらぎを与えてくれたハーモニー。指揮する宮城まり子を見つめるけなげな子供たちの瞳に熱い想いがこみ上げ、私とビクターのディレクターは、この子供たちの歌をぜひCDあるいはDVDで残したい、宮城さんが健康でまだまだ活躍できている現在に、このハーモニーを収録したい、という思いがますます募った。
銀座ヤマハホールでのコンサートのDVD収録が決まったあと、本番の2月26日まで、宮城さんはその指導に文字通り命を削っていた。眠れない日々、食事が喉を通らない日もあった。「障害者のコーラスというのではなく、発売されるからには素晴らしい内容だと世間の人に認めてもらいたい」という彼女自身プロ歌手としての矜持がそうさせたのだろう。そして本番。学園の子供たちに歌を歌うことの喜びを知ってもらうために過ごした数十年の、美しい、たわわな果実が実った瞬間だった。とりわけ素晴らしかったのは、ピアニストの小曽根真さんとの共演だ。8年ほど前から、ねむの木のこどもたちと親交がある小曽根さんは、この日のためにオリジナルのメロディーを書いてくださった。しかし本番までは1ヶ月しかないというハンディ、美しいけれど単純ではない素晴らしい作品、しかも小曽根さんと練習できるのは本番前の一回というギリギリの条件でも彼らと宮城さんは見事にそのコラボレーションを成功させてくれた。観客の拍手がひときわ大きく聞こえた瞬間だった。
このDVDに収録したステージには出演していないが、学園の大勢の子供たちが、いまもなお毎週、歌の授業に参加している。懸命に歌っている。そして視線の先にはいつもおかあさんがいる。今年も学園が毎年催している運動会で彼らのコーラスがきっと聴けるはずだ。
コスモス咲き乱れるねむの木学園のグラウンドで聴く子供たちの歌は、秋の空たかく、どこまでもこだましてゆくことだろう。