南 佳孝 with Rio Novo
YOSHITAKA MINAMI
ボッサ・アレグレ

南 佳孝(Vo)
<Rio Novo>
新川 博(keys)
吉田和雄(ds)
渡辺幹男(a.g.)
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●南佳孝が、本格派Bossa Novaユニット、Rio Novoとともに、日本の名曲や洋楽スタンダードを、心地よいBossa Novaテイストのサウンドにのせて歌います。クールな南佳孝のヴォーカルとブラジル音楽に精通しているミュージシャン達が奏でるミュージックは熟成したワインのようにあなたを満たしてくれるでしょう。
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ドキッ!っとした。まるで目の前で歌われているようで。奇をてらったとか、特別な仕掛けなど何もない。むしろその逆。50男のスッピンの歌声、素敵なメロディを伴ったつぶやきがココにある。でもそれがアートになってしまうシンガーは、日本広しと言えども、この南佳孝くらいではないか。
テーマはボサノヴァ。共演するのはプロデューサー/アレンジャーの新川博 率いる本格派ボサノヴァ・ユニット、リオ・ノーヴォ。南は、ふと出掛けたミュージシャン仲間のイベントでリオ・ノーヴォのパフォーマンスに触れ、「こんな凄い連中が日本にもいるんだ!」と強くインスパイアされたという。そして、とある音楽番組のボサノヴァ企画で初のジョイントが実現。
「吉田和雄さんみたいに、ラテン系のスピード感のあるハイハットを叩けるドラマーは、日本にはいないよ」
心は決まった。リオ・ノーヴォと組んで、キチンとボサノヴァを歌いたい! 『Bossa Alegre』が静かに脈打ち始めた。
スロウ・ライフ、シンプルな暮らしが提唱され、"ロハス"(Lifestyle of health and sustainabilityの略)なんてキーワードが持て囃される。これは使い捨てカルチャーへのカウンターとして、アダルト世代を中心に大きく広がったライフスタイル。音楽とて、それと同じだ。ヒット・チャートを賑わす音とは別の次元で、メロディや生音への回帰が進んでいる。少し前のカフェ・ブームとボサノヴァの隆盛、昨今の女性ジャズ・シンガーの人気沸騰、若い世代に起きている"はっぴいえんど"再評価、団塊の世代に顕著なフォーク・ソングの再興…、どれもベクトルを同じくするものだ。そして南自身も、この数年、そんな空気感に呼応した作品を送り出している。ただし世の流れを意識したのではない。ずっと変わらぬ彼に、時の流れが擦り寄ってきたのだ。
「基本的にメロディ人間。今でもメロディが持つ強い力を信じてるよ」
その信念が『Bossa Alegre』のセカンド・ステップ。ボサノヴァは誰かひとりに向けて歌いかけるものだから、インティメイトな感覚を呼び覚ますマテリアルが必要だ。そこでアダルト世代がよく知っているナンバーばかりが選ばれた。意外にも60~70年代の和製ポップスが多くなったのも、こんな理由からである。
「良い曲って、映像がなくても画(え)が浮かんでくるでしょ。古い曲だと、それがメモリーになる。あぁ、あの時は暑かったなぁ…って、音と一緒に画がフラッシュバックしてくるんだ。それが大事だと思うね」
『Bossa Alegre』のalegreとは、楽しい・嬉しい・陽気な、という意味。そこにはJ-POP界の至宝たる歌声と歴史に残る名曲、ミニマムだけれど豊潤極まりない生のサウンドがある。それでいて気負いやポーズはなく、素のまま、自然体。言うなれば、これは音楽によるサプリメントなのだ。
音楽ライター:金澤 寿和 / Toshikazu Kanazawa (www.lightmellow.com)