GOING UNDER GROUND
h.o.p.s.

夏から続いたレコーディングが難航していたという。これはGOING UNDER GROUNDに関しては珍しいことである。
メジャー・デビュー以前からストック曲こそなかったものの、短期集中型の制作とレコーディングの中で必ずやバンド・マジックを呼び起こしては、その興奮をもパッケージして届けてきた。しかし今作を聴いてもらえば納得してもらえるだろう。5人はこれまでになく長い距離を、妥協無く走り抜けてここに辿り着いたということを。
メジャー・デビューしてから4枚目のアルバム『h.o.p.s.』は、新しい音と新しい言葉を勇敢に紡いで作られた。思わずガッツ・ポーズをしたくなる場面が何度も訪れる聴きドコロ満載の作品である。まずは、オープニングのインスト“Fire grow”のストリングスやピアノの瑞々しくて豊かな音たち、そしてその幻想的な世界に驚く人も多いはずだ。これは河野丈洋(D)が作曲したトラックで、ライヴのオープニングSEで使用されていたあの曲が遂に全貌を現したのである。柔らかで、どこか物悲しく、衝動の先や心の奥底にある力や、イマジネーションを呼び起こすこの曲での始まりが今作を象徴している。そんなGOINGUNDER GROUNDの、まだ知られざる可能性と成長ぶりはM2“ロールアンドロール”での重みを生かしたビートや、繊細に歌うキーボードのイントロが美しいM8“TENDER”などでも顕著である。重厚に鳴らされたバンド・アンサンブルからは、それぞれの音が本気で歌っているのを感じるし、全11曲を通じて新しいリズム・パターンやハーモニーを駆使しては、バンド・マジックを超えて「音楽」そのものの枠を大きく広げている。それが私たちに「届けるため」だということも伝わってくる。加えて2004年にリリースされたシングルM9“サンキュー”、M7“同じ月を見てた”の流れで感じていた人も多いだろう、松本素生(Vo&G)の楽曲は、より近しい距離で「君と僕」を歌い始めている。M6“あすなろ”、 M10“東京”では「君を想う意味」と「僕が歌う理由」から逃げない意志が、味わい深いメロディと共にシリアスに告げられた。
だけど今作は、ただシリアスな重力のみで作られたわけではない。3人でコーラスを回し、賑やかな友達同士のやり取りを軽快なギターのカッティングに乗せたポップ・ナンバー、M4“サイドカー”、初の(作曲・GOING UNDER GROUND)名義で届けられるM5“恋のナビゲーション”は中澤寛規(G)のヴォーカルによるアッパー・チューン。ライヴでみんなが踊り狂う姿が既に見える!でっかい声で、ココロの全てで「楽しい!」って思えるような、そんな時間も大切に存在感を放っているアルバムだ。長い制作期間を経て――インディーズの頃から衝動にまみれてピュアな輝きに満ちて荒々しくもキラキラした音を鳴らしていた彼らが、遂に新しい羽根を手に入れたのだ。
『h.o.p.s.』―― hearts only pure string ――
stringが意味するのはココロの琴線。そこに触れる楽しさも涙も痛みも喜びもハイブリッドに詰め込んだ今作。その全ては明日を形作るエネルギーだ。何度も震えながら、何度もガッツ・ポーズしながら、聴いてもらえる名盤が生まれた。
ライター・上野三樹