新垣 勉
TSUTOMU ARAGAKI
日本を歌う

○新垣勉の通算5作目のオリジナル・アルバムでは、郷愁を感じさせる日本の童謡・唱歌を取り上げ、その奥底に流れる日本人の心情を歌う。
○童謡・唱歌が歌うところの「はかない自然」「せつない童心」は、グローバル・スタンダードが叫ばれる昨今では、急速に失われつつある情感と言えるかもしれない。しかし、一方そのエッセンスは日本人のDNAに深く刻まれ、永遠に“懐かしさ”を喚起させるものとも言える。
○沖縄米軍兵の父と日本人の母の間に沖縄に生まれた新垣勉は、自らを“戦争の悲劇が生んだ存在”と言い、歌を通して常に平和のメッセージを訴え続けてきているが、殺伐とした事件が続き心の荒廃を感じさせる今の時代こそ、日本人が元来持っていた日本人ならではの心情を伝え残していかなければならないと考え、彼はこの企画に思い至った。
○主に取り上げるのは、北原白秋、野口雨情らが作詩し、中山晋平、山田耕筰らが作曲した、大正~昭和初期「赤い鳥運動」の頃の童謡作品。当時の世相に危機感を持った人々が、次世代の子供たちに思いを伝えるためにこの運動は興ったといわれるが、この危機感は今の時代とある意味シンクロする部分がある。
○今回の作品ならではのエポックとして、近年発掘され瞬く間に国民的童謡詩人となった金子みすゞの代表作『私と小鳥と鈴と』に新たな曲をつけ、新垣勉が歌う。作曲は『ビリーブ』などの作曲で知られる杉本竜一氏。新垣勉は荒廃する青少年の心に(SMAPの歌より早く)「オンリー・ワンの人生を大切に」と呼びかける活動を展開しているが、『私と小鳥と鈴と』の一節、“みんなちがって、みんないい”には、正にそのエッセンスが凝縮されている。