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2022.10.08

The Ravens『ANTHEMICS』Track By Track_9

The Ravens『ANTHEMICS』Track By Track_9

M9. ハムリア

“Wayfarer”と同じく渡辺シュンスケ作曲による楽曲であり、今回のアルバムの中でも屈指の美しさを誇る素晴らしい名曲。通奏される極めてミニマルなピアノのループが楽曲に凛とした一本の筋を通しつつ、そのリフをさりげなく転調させることによってドラマティックに景色を変えながら、静から動へ、深海から眩い光溢れる世界へと展開していく様がとても感動的だ。<理由も知らずに 僕達は生まれて/夏の日照りや 秋雨に打たれて/冬の匂いを 鼻先にかすめて/春の光を 手のひらに集めて>と歌う、巡りゆく日々の中で生を重ねてゆくこと、その儚くもかけがえのない日々を柔らかな光で照らすようなKjのリリックと楽曲が描き出す情景の整合性も見事。深く心に残る一曲だと思う。

PABLO「この曲、ヤバいですよね。建志くんが歌詞書いて歌を入れたのを聴いた時、あまりにも良過ぎて号泣しましたもん」

Kj「あんまり種明かしするのも無粋かなとは思うんだけど、この曲にはふたつの意味があって。そもそもハムリアっていうのはアフリカにある音楽家達が住んでる街で、ビジターが来ると街の演奏家達が出てきて『ようこそハムリアへ』って音楽でみんなをもてなすんだよね。だからひとつには、俺達の音楽に興味を持ってくれた人、ライヴハウスに足を運んでくれた人に対して『ようこそ、俺達が演奏家だよ』っていう意味がある。で、もうひとつは、実はシュンちゃんに生まれた子供に向けて書いた歌詞でもあるんだよね。その子の名前をローマ字で書いて、そのアナグラムで“ハムリア”にしたの。成長していく過程で世界のいろんな曖昧さや汚いことも知って、それを代償にして大人になっていくけど、それでも世界は美しいんだよっていうのを伝えたいと思って書いた歌詞でもある」

渡辺「これはねぇ、ウチの嫁、感動して泣いてました」

PABLO「泣くでしょうこれは! 他人の俺でも泣くんだから!」

Kj「だから俺の中ではシュンちゃんの子に向けて誕生オメ!っていう気持ちで書いた詞ではあるんだけど、でも同時に、それはライヴハウスに来る人達に対しても伝えたいことでもあるし、きっとその人達の日々にも投影できるものだと思うから。さっきの“メタモルフォーゼ”然り、俺はいつも凄く身近なことを歌詞にしていくんだけど、そうやって自分が生きている中で感じる些細なことを、できるだけみんなが共有できるようなものにするっていうのが歌詞の理想だし、音楽のいいところだと思う」


有泉智子(MUSICA編集長)


The Ravens『ANTHEMICS』

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