アダプト

アダプト

「自分たちがドキドキして、ワクワクする方を選択してきました」。刻一刻と変化する世界の状況を受け、2021年から新プロジェクトを進行中のサカナクション。その中心に立つ山口一郎は本作『アダプト』について、Apple Musicに語る。新型コロナウイルスの感染拡大によって人々の生きるリズムは大きく変わった。それならば、その状況にどう適応(アダプト)するか。そこで得た知見を、いかに応用(アプライ)していくべきか。サカナクションはそんな前人未踏のテーマに向き合うべく、全2章で構成されるプロジェクトを立ち上げた。まず第1章『アダプト』のファーストアクションとして、2021年にオンラインライブ『SAKANAQUARIUM アダプト ONLINE』を開催。音楽、演劇、映像を融合し、ライブの新たな在り方を模索したこの公演はバンドにとっても大きな挑戦であり、山口一郎はその意義についてこう語る。「やっぱり作る側の自分たちが感動してワクワクしないと、受け取る人も感動したりワクワクしたりしないと思う。結果がどうなるか分からない初めてのことにチャレンジするというのは、自分たちにとってすごく健全で楽しいことなんです」そしてオンラインライブの世界観を踏まえた有観客ツアーを経て、第1章の締めくくりとなるのが本作『アダプト』となる。このアルバムはプロジェクトの前半を担う“ハーフアルバム”と位置付けられ、ライブの冒頭に使用されたインストゥルメンタル楽曲「塔」で幕を上げる。シンセサイザーの不穏な音が鳴り響くこの曲について、山口は「頭の中に漂う霧のような不安を表現した」と説明する。霧は晴れることなく、「キャラバン」「月の椀」と憂いに満ちたナンバーが続く。深夜の思索を描く「プラトー」も闇の中をさまよっているが、力強いダンスビートとコーラスが徐々に風向きを変えていく。そしてアフロビートを取り入れた「ショック!」で決定的な変化がもたらされる。「ショック!」が生まれた背景について、山口は打ち明ける。「コロナ禍で制作する中で、自分の生活を振り返ってみたんです。僕は朝起きるといつもスマホでニュースをチェックする。その時、何かショックな出来事が起きてないかなと無意識に探してる自分がいたんです。そんな自分自身にすごくショックを受けて、じゃあこの感覚を音楽にするにはどうしたらいいのかなと考えました」。そしてアフロビートの導入というアプローチにたどり着いた。「サカナクションはずっとアフロビートの美しさに興味を持ち、研究していました。その過程でフェラ・クティの『Zombie』を聴いた時、自分たちを攻撃する人たちをゾンビに例えたこの曲は、自分が置かれたコロナ禍の状況とどこか重なるところがあった。それで、これはいけるかもしれないと思って書き進めました」サカナクションの思索と創造の旅はまだまだ続く。“正しい 正しくないと 決めたくないな”と歌う「フレンドリー」は2022年の現在地を示すもので、彼らはこれからも時代の潮流を読みながら変化していく。山口は言う。「クリエーションする上で同じことを繰り返すと摩耗することがある。でも僕らは摩耗ではなく研磨していきたい。サカナクションはどんな形態でもやっていけるし、極端に言うとバンド名を変えてもいいと思うくらい自由なスタンスでいます」

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