7+

7+

「なかば祈りのような気持ちを込めて作っていました」と、冨田恵一はApple Musicに語る。2022年に20周年を迎えた彼のセルフプロジェクト、冨田ラボが発表した7作目のオリジナルアルバム『7+』。そのタイトルの由来について冨田はこう説明する。「7は東洋でも西洋でも力のある数字だと思いますが、そこに+(プラス)を付けたのは、“さらにパワーを”という意味と、もう一つ別の意味合いもあって。僕はこのアルバムの前に、プロデュース仕事を集めた作品を1作出したんです。ただそれはオリジナル作とはちょっと性格が違うので、そのへんを正確に表そうという気持ちがありました」 高度なスキルによって自身の音楽をアップデートし続けるミュージシャンであり、数々のビッグヒットを手掛けたプロデューサーでもある彼の肩書きを一言で表すのは難しい。ただ一つ確かなのは、この『7+』は、ミュージシャンでありプロデューサーでもある冨田だからこそ作り出せたアルバムだということ。本作には冨田ラボ史上最多となる20名ものシンガーが参加しているが、その人選や采配は多くのアーティストからリスペクトと信頼を集める冨田ならではのもの。そしてゲストたちの歌声を自身の音楽の中に意義深いものとして組み込めるのもまた、彼にしかできないことだろう。 本作に参加したシンガーは、冨田と縁深い堀込高樹(KIRINJI)、堀込泰行をはじめ、坂本真綾や早見沙織ら声優アーティスト、Ryohu (KANDYTOWN) やBASIといったラッパー、kojikojiやぷにぷに電機という新世代まで幅広い顔ぶれとなった。「煙たがられて feat. 細野晴臣」(作詞:堀込高樹)では、尊敬するアーティスト、細野晴臣のシンガーとしての一面にフォーカスした。冨田は言う。「もちろん細野さんは音楽家としてすごい振り幅を持っていて、すべてのクオリティが高いという素晴らしい音楽家です。なんですが、ある時、細野さんのコンサートに行って、シンガーとしてもすごいなと改めて思ったんです。声以外の部分もいろいろすごすぎるのですが、声だけ取り出してもすごいから、もし細野さんに歌ってもらえたら…と純粋に思ってお願いしたところ、快諾いただけました。歌ってもらえてうれしかったです」 さまざまな世代やジャンルのシンガーたちによる豊かなハーモニーも本作の聴きどころだ。「HOPE for US feat. 磯野くん (YONA YONA WEEKENDERS), AAAMYYY (Tempalay), TENDRE, 吉田沙良 (モノンクル) & Ryohu (KANDYTOWN)」では、5人のアーティストが希望のメッセージを歌い紡ぐ。その制作過程を振り返って、冨田は語る。「この曲を作っているさなかに(ウクライナ紛争が)始まったんです。そんな状況であっても希望を持てる曲にしたいと思い、作詞をお願いしたモノンクルの角田隆太さんにもそうお話ししました。シンガーたちがユニゾンで歌ったりハモったりすることで力強さが出て、希望の持てる感じになればと」 この“希望の持てる音楽を”という思いは、「HOPE for US」に限らず、アルバム全体においての通奏低音となっている。「思い返せば、このアルバムは制作期間の頭からコロナ禍の中でした」と、冨田は振り返る。「『OMNIA-1st Movement』のメロディ、このメロディはラストの『MIXTAPE』の冒頭にも出てくるのですが、これを作ったのが2020年の年末ごろ。その頃はコロナの影響がどれほど続くかも分からず、早くこの状況を脱したいけどどうにもやりようがなく、なかば祈りのような気持ちを込めて作っていました。そこから2年、希望を捨てずに日常を送ってきたつもりなんですけど、このアルバムはそうした日常を反映した作品になったと感じています」

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