11月30日リリース
「瞬きと精神と君の歌と音楽と」


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https://jvcmusic.lnk.to/mabataki_seishin
Interview & Text:Yukako Yajima

2022年、Spotify「RADAR:Early Noise 2022」に選出されて注目を集める中、3月にメジャー1st EP『LOOK』をリリースし、夏には東宝YouTube映画『チェンジ』の主題歌に抜擢されるなど、着実に活躍の幅を広げてきた現在高校1年生のao。今年最後に届けてくれた曲は、「瞬きと精神と君の歌と音楽と」。aoはここで、物語を唄う。

小説を愛するaoの独創性を存分に発揮し、まるでおとぎ話に没入するかのような感覚を与えるウィンターバラードが完成。作曲はFurui RihoとESME MORIとの共作、アレンジはESME MORIが手がけた。4歳の頃から触れてきたピアノを主体にしながら、J-POPらしいメロディにaoの個性的な歌い方が織り込まれた、彼女の歌の深みと美しさが際立つ一曲に仕上がっている。
――最新曲「瞬きと精神と君の歌と音楽と」のテーマは?
最近は激しい曲が続いたのでしっとりした曲を作りたいなと思っていたところ、ウィンターバラードもいいよねという話が出てきたんですよね。コライトさせてもらったFurui Rihoさんにウィンターバラードにはどんな歌詞がはまるかを相談した結果、初めてラブソングを書くことになり、「こういう出会があったらいいな」という妄想を広げて書きました。

まず少女漫画を読み漁ったんですけど、そこで描かれているのはきれいな一直線の恋で。今までも意志のある歌を書いてきたので、太くて強い想いみたいなものをラブソングでも書けたらいいなと思いました。そこで想像したのが昔の海外の身分差のある恋。叶わない恋とか抗えないものがある中での強い想いと、ドレスがふわっと回っているイメージがはまって、そこから想像を広げました。



Photo:Takumi Gunji
――「瞬きと精神と君の歌と音楽と」というタイトルにした理由は?
「瞬きと精神と」というのは、行動や、あなたの精神、中身。「君の歌と音楽と」は、私の「昔」のイメージの中に強くあるもので。昔は、音楽で色々なことを表現していたなというふうに思うんです。私はミュージカルが好きなので、音楽が強く関連しているイメージがあるんだと思います。

おばあちゃんがミュージカルやバレエを好きだったので小さい頃からよく見させてもらっていたんですけど、一番記憶に残っている『サウンド・オブ・ミュージック』や、最近見た『レ・ミゼラブル』のイメージがこの曲を作るときに助けてくれました。

毎回、タイトルは本当に迷うんです。今回は「瞬きと精神と君の歌と音楽と」に全部がまとまっているというか、相手のことを全部表しているし、きれいな恋の象徴だとも思ったのでこのタイトルにしました。



Photo:Takumi Gunji
――Furui Rihoさん、ESME MORIさんとの共作だからこそできたこととは?
「チェンジ」でFurui Rihoさんが書き下ろした曲を歌わせてもらったのですが、いろんな単語が出てくるのにきれいにまとまっていることに驚いたんですね。異なる単語なのに微妙にイメージが繋がるような言葉のチョイスがすごくて。これまで私は助詞だけを変えながら同じ歌詞を繰り返すことが多かったんですけど、今回はそうではない書き方をしてみました。Furui Rihoさんとのコライトで歌詞に集中できたからこそ作れたという気持ちです。

特に2番の始まりが自分でもすごく好き。2番のAは、音が強くなっているところに同じ母音をうまく置けました。それによって、1番はきれいで温かい感じだけど、2番で強めに入ることがうまくできたなと思います。

しかもFurui Rihoさんが書いてくれたメロディは歌いやすくて。最初にデモをもらったときからサビで開ける感じがして、それが昔のイメージとかドレスが広がる感じにぴったりはまったことでどんどんインスピレーションが湧きました。

ESME MORIさんとは「kekka (first recording ver.)」「no THANKYOU」以来、久しぶりにお会いしました。安心する音楽を作ってくださる印象で、この曲もMORIさんがアレンジできれいにまとめてくださった感じがします。



Photo:Takumi Gunji
――aoさんが理想とする想い方、愛し方とは?
《何も言わない、何も動かない》という歌詞がありますが、ただ見つめている時間が一番素敵だなと思います。言葉にして伝えるよりもただ目を見ているような、時間が止まっているような、そういう素敵な行為に憧れます。そういった描写は少女漫画よりも、昔のミュージカルとかバレエのビデオからの印象が強くありました。

以前「I know」で歌った先輩に片想いをしていた頃、友達から「人は最高4か月までしか1人の人に夢中になれないんだよ」という話を聞いたんです。なぜずっと片想いができるのかというと、惚れ直しているからだって。4か月のあいだにまた好きになっているから延長されていくんだ、ということを聞いて「面白いかも」と思って。それがずっとできる恋愛がいいですね。



Photo:Takumi Gunji
――「瞬きと精神と君の歌と音楽と」のミュージックビデオ、ジャケットのイメージは?
今回も軍司(拓実)さんにお願いして、すごく素敵なMVができあがりました。「雪が降ってる」「部屋の中でピアノを弾いてる」とか、曲のイメージをポツポツ言っていたら、軍司さんがきれいに繋げてくださいました。

しかもジャケットもすごく素敵で。この曲は、結論を出せて書いたものではなくて。自分の中で絶対に結論が出ないことって一番難しい。恋愛には嬉しいこともあるし、悲しいこともあるし、苦しいこともあるし、いろんな要素がモワモワある感じ。何か一点が強くあるわけでもなくて結論づけられない。それが表されたジャケットだなと思います。

今恋愛を楽しんでいる人が聴いてもあてはまる部分があったり、恋愛がうまくいってない人が聴くとちょっと励まされたり、そんな歌になっているかなと思います。ブリッジは《しがみつきたくない》のに《不安定な足元だけど立てちゃう》と思っている人たちに届いてほしいなと思いながら書きました。

▼ミュージックビデオメイキング



Photo:Takumi Gunji
――2022年、aoさんにとってどんな1年でしたか?
とにかく濃い1年でした。EP『LOOK』を出したときはまだ中学生だったので。中学のお別れ会で歌って、「『LOOK』出ました」みたいなことを言っていたのが懐かしいです(笑)。

そこから高校に入学して、「リップル」「チェンジ」を出して、そのあいだに初めてファンの方に対面でお会いしたり、NHKホールで歌ったり。信じられないことばかりでした。これからもっとそういったことが起きるのかなと思うとワクワクします。

今までは、みんなと別に変わらないし、「すごい」と言われても「別にすごいわけじゃないのにな」と思っていたんですけど、これからは自覚を持たなきゃいけないなと思うようになりました。そういうふうに自分の音楽が広がってきてくれたんだなと実感します。だから早起きもしなきゃいけないし、勉強もみんなより早く始めないといけないなって、やっと最近気づきました(笑)。今年はいろんな曲の作り方をやれたので、来年はそれをもっと変化させて、クリエイティブな1年にしたいと思います。



Photo:Takumi Gunji