EPISODE1

2014年12月29日。この日は、BUCK-TICKがホールツアー、スタンディングツアーの2つのツアーで見せた最新アルバム『或いはアナーキー』の集大成となる日本武道館公演の開催日である。
それから遡ること25年、1989年12月29日、半年間の活動停止期間を終えて、BUCK-TICKは東京ドームで復活を遂げた。そして畳み掛けるように1990年1月シングル「惡の華」、2月アルバム『惡の華』、4月ビデオアルバム『惡の華』を世に放った。この一連の復活劇は当時とてもセンセーショナルで、新たに生まれ変わったBUCK-TICKの存在を強烈に印象づけた。今回の『惡の華』2015年ミックス版のリリースにあたり、当時のキーパーソンでもあり、今回のミックス版の制作も手掛けた制作プロデューサー・田中淳一氏に、今作についての思いを語ってもらった。

1989年4月から半年間の活動停止期間を終えて、アルバム『惡の華』の制作はスタートした。

「自粛期間明けからレコーディングに入れるように、各自が作詞をしたり作曲をしたりということを個人的にやっていたんです。そういうこともあって、この『惡の華』では唯一、ユータとアニイ(ヤガミ)と星野くんも詞を書いている。今井くんの負担を少しでも軽減しようっていうバンドの中の愛を非常に感じるアルバムですね。厳密に言うとユータが作詞した「UNDER THE MOON LIGHT」はシングル「惡の華」のカップリング曲ですが、その頃はシングルとアルバムを同時に作ってたので、どの曲がシングルになるというのはまだ決まってなかったんです。ただ「惡の華」は、聴いた瞬間にこれがシングルじゃないの?って感じで決まりましたね」

復活一発目のシングルが「惡の華」というタイトルの衝撃。当時を振り返って「最初はあのタイトルに反対だった」と語ったメンバーもいた。

「確かに、挑戦的なタイトルに見える可能性はあったかもしれない……ですね(笑)。でも、もともとこのバンドのキャラクターの中に、こういうものはあったわけで、BUCK-TICK直球でいこうと。なんの外連味もなく、揺らぎもなく」

もしかしたら今のようなネット文化の時代であれば、それもまた違ったのかもしれない、とも言う。

「彼らの才能をつぶさないように、みんなが守ってくれたんですよね、会社全体で。だから、インディーズに戻って活動しなきゃいけなくなるとか、レコード会社を移籍しなきゃいけなくなるとか、そういう不幸なことはなく復帰できた。東京ドームに関しても花火をあげようと。そこでやっぱりお客さんが来なかったら、そういう道を選ばなきゃいけなくなったのかもしれなかったけど、本当にたくさんの人が来てくれて、その後の活動に繋げられた。感謝ですよね」