「PrototypeとROCK」


プロデューサーを仲介役にその後、何度も意見交換をすることになった。主に曲のアレンジに関しては完成まで長い道のりとなる。
エンディングの映像が出来ている訳ではないので、こちらも手探りになる訳だが、一番に求められていたのは「ROCK」というものだった。
人によって、この「ROCK」という定義は違うもので、誰々のような「ROCK」。小さなライブハウスでシャウトするような「ROCK」もあるし。内面的に語りかけてくる「ROCK」もある。それぞれの「ROCK」イメージが重なるまでに時間を要したのは当たり前の話で、この細かいやりとりや意見交換は今となっては大変充実した時間だったと思う。
「石川智晶」の音楽は野崎プロデューサー、アレンジャー西田マサラ氏によってがっちりと作られてきた。それはある程度、完成されたものになっていたようにも思う。ある意味、それを壊すこと、維持するものをしっかりと見据える良い機会を与えられた。
まずは「00」と「ROCK」と「石川智晶」をどうやったら、それぞれのすべてを生かした曲ができるか。エンディングの90秒間の間でドラマを作らねばならない。
デモの段階から本番さながらにスタジオにミュージシャンを呼んで作業。「弦」も入れて広がりを見たり、「ピアノ」を入れるアイディアに応えたり、シンセをどれくらいの分量で入れるか、または入れないか。
それはとても繊細な音の世界だけれど、音作りはそれに対して思い悩むことはあっても、抵抗感は不思議となかった。
途中、着地点が見つからず見失いそうになったこともあったが、西田マサラさんの冷静で穏やかな人格もあってか、しなやかな対処で幾つものエンディングテーマを作り上げることができた。
私のコンピュータ上で残っているMP3だけでもかなりの数。たくさんの「Prototype」がそこにはあった。

そんな中、水島監督とお会いする機会があり、わずか30分くらいの話ではあったが、本当に求められているものが理解できたように思う。初めてゴールが見えたような気がした。やはり実際に会ってお話をすると言葉が生きたものとして体感できる。もっと早くお会いできれば良かったなと思うが、やはりこの時までのプロセスなしでは何も語れなかったと思うのです。
「Prototype」というタイトルも熱意に?しつこさに?最後は応じて下さったのかOKして下さった。水島監督はすべてを見ておられる方なので、私はモチベーションを下げずに最後までやりきれたのは、この事がとても大きい。

この後、歌詞の2番を書き上げたのだが、驚くほど早くできた。監督とお話しながら絵が見えたので、そのままの空気感を持ち帰り、自宅に戻りすぐ言葉を並べ出したことを覚えている。