CEZACEZAジェザ
ボスポラス海峡の東、アジア側にはカドゥキョイ地区がある。そこはバクルキョイと共にイスタンブールのヒップホップの拠点である。もし新たな若者文化の生まれる荒廃したホットスポットを見つけようとしてボスポラス海峡を横断した人は単に失望するだけだ。そこはマルマラ海の壮大な眺めを持つ洒落た町のようで、町の中心にはヒップなTシャツショップの地下にタトゥースタジオがあったりもする。この町がパブリック・エネミーのトルコのバージョンとも言えるジェザのホームベースであり、彼を取り巻く環境である。
とても真面目な青年ジェザはアメリカのギャングスター・ラッパーのポーズやフェイクな態度はとらず、AK-47を飲み込んだかのような強烈なスタッカート・スタイルでライムを発する。まるで高速の伝道者だ。ヒップホップのエンターテインメント性を利用して、自分自身の人生や心の内をもとに社会的・政治的考えを伝えることが彼の狙いである。彼の哲学は“友情こそもっとも大事なものであり、不変である”であるということ。彼は彼を取り巻く友人達を家族であると考えている。その中でも特に妹は特別視している。ラッパーでもある彼女はジェザの女性バージョンとして、男性優位のラップの世界に入り込もうと努力している。