ORHAN GENCEBAYORHAN GENCEBAYオルハン・ゲンジェバイ
オルハン・ゲンジェバイはトルコ最高のスターというにふさわしい人物である。彼はトルコの演歌であるアラベスクにおけるエルビス・プレスリーであり、タクシー運転手たちのヒーローであり、ポップ・アイコンである。1960年代から100万枚のアルバムセールスを記録しており、トルコ映画産業の繁栄時には人気のある映画俳優でもあった。彼の楽器はサズと呼ばれるリュート属の弦楽器で、彼は多数のサズのコレクションを所有している。
トルコ音楽の放送が共和国の法律によって禁止されていた1934年、イスラム教徒の人々は近隣のアラブ諸国のラジオを聞いていた。こうしてトルコ音楽はアラブ文化から多大な影響を受けることとなり、“アラベスク”(アラブ風)という新語が造りだされたのである。その後、オルハン・ゲンジェバイはこの流行を発展させるのに一役買うことになる。彼は一度もライブを行ったことがない。彼はポピュラー音楽、芸術音楽、そしてオリエンタル音楽を研究し、古い音楽を微調整して、新しい構造を探し出すことに集中している。彼は音楽という台所にいる完璧主義者で、美食家のシェフなのである。
だが、彼が自身をトルコ文化に奉仕していると考えている一方で、保守的な知識人たちはオルハンを文化遺産に対する裏切り者だとして非難した。そしてアラベスクという言葉はネガティヴな意味合いを持つことになった。しかしオルハンは自分の観客たちと触れ合いたいと望み、ハッケと共に彼のオフィスで演奏したのであった。この極めて東洋的な楽調は、西洋人にはジャズのようにも聞こえるほどである。