INTERVIEW

――今回は『Fate/Grand Order』関連の楽曲をまとめたシングルがリリースされます。第一部の主題歌「色彩」はゲームの大ヒットもあり大きな反響があったと思いますが、実感としてはいかがでしたか。

主題歌を作っている時は世にゲームが配信されるずっと前でしたし、私は物語のクライマックスに合うような歌詞を書いてたので、ユーザーの皆さんが「この歌ってこういう意味だったんだ!」とわかるのが約1年後のことだったんですね。物語が佳境になってから「もしかしてオープニングのこの歌詞って、このキャラクターのこの気持ちなんじゃ……」ってユーザーさんがざわざわし始めて、すごく人気が出たんです。物語が面白いので、それに合わせて作った曲も、皆さんがより耳を傾けてくださって。それが伝わったという手応えがだいぶ後になって出てきた時に、やっぱりこういう作品の主題歌を歌う醍醐味というか、物語とキャラクターと合うものを作ると、楽曲単体として良いものになっていても、それ以上の価値を見出してもらえる可能性があるというのは、タイアップの曲を作る面白いところなので大成功したなっていう気がしました。

――『Fate/Grand Order』の原作者であり総監修をつとめる奈須きのこさんが生み出す世界観に対して、どんな想いでコラボレートしましたか。

先生の他の作品に関わらせていただいたこともあるんですけど。すごく今のアニメのトレンドをしっかり押さえつつも、キャラクターの可愛さとか見た目だけではない、本当に伝えたいことやメッセージがある方なんですよね。その伝えたいことに突き動かされて物を作っていて、だから周りの人もその情熱に力を貸したくなる人で。私が力を貸すなんて言うとおこがましいですけど、奈須先生が創作をしていくものに主題歌という音楽のセクションを任されて、しかも歌詞を書くということで深く携わらせてもらえているのは、すごく自分にとってやる気を漲らせてくれるものです。私が自分のために歌詞を書く時とはまた違った視点で書けるので、自分でも意外な言葉が出てきたり、作品によって引き出してもらえているものがあるので面白いです。

――第2部の主題歌である「逆光」。こちらは伊澤一葉(the HIATUS)さんによるメロディやエモーショナルでシアトリカルな音楽性を含め、坂本真綾としてもまた新しい扉を開いた感じがしますね。

伊澤さんはこれまでにフェスに出演した時のサポートメンバーとしてご一緒させていただいたりしてたんですけど、曲を書いてもらったのは初めてで。お願いしたらとても気合いを入れて楽しんで作ってくださったので嬉しかったです。難しい曲に聴こえるけど、それだけじゃない緻密な計算の部分と衝動的な部分がある曲です。「本当にライブで歌えるの?」って思うくらい、レコーディングの時に難しい歌だと思っていたんですけど。実際にステージで歌い始めると、変なアドレナリンがいっぱい出る感じで(笑)。必死じゃないと歌えないんでカッコつけてられないから、それが良いのかもしれないです。

――アーケードゲームの主題歌「空白」に関してはどんな制作でしたか。

いちから奈須先生と一緒に「どうしましょう」と相談させていただきました。曲のイメージとしては第1部と第2部の間に、ゲームでは描かれていない部分でその時期に何を思ったかみたいな感じで作詞をしました。

――「空白」の歌詞では<結末>というワードが印象的に使われています。

今の時代、こうしたゲームもそうですけど既に完成されているものだけが発売されているのではなく、発売中のものを並行して作っている感じが、世の中では当たり前かもしれないけどすごいなって思うんです。下手したら結末も今から決めるくらいでスタートしていてもおかしくない。もちろん『FGO』はそういう意味では目的地があるんですけど。でも誰かがものすごく強く願ったりしたら、結末さえ変えられる物語をみんな必死でやってるんだなって思って。望んだ結末にしようと思えばなる!みたいな、そういうところから出てきた歌詞です。

――位置づけとしては「色彩」と「逆光」の間に「空白」があると。

そうなんです。「色彩」というタイトルは全然思い浮かばなくて苦し紛れに付けたものだったんですが、次に「逆光」というタイトルになった時に、色が出てきて光が出てきて対になっている何て素晴らしいタイトルなんだ!と自分で思って(笑)。でも3曲目はどうしよう、この路線で行くか……と考えていた時に奈須先生が「失われたキャラクターたちの心の空白を埋める的な……」っておっしゃった時に「空白!いただきます!」って(笑)。そこでタイトルがまずは決まって、歌詞を書いていきました。色と、光と、欠落。完成している作品に曲を書くわけじゃないから、自分でもお話の一部を書かせていただいているかのような面白さがありました。

――今回のシングルには「色彩」のアンプラグドバージョンも収録されています。

ファンクラブイベントでよくアコースティック編成でライブをするんですけど、昨年のイベントでどうしても「色彩」をやりたかったんですよ。リハをしながらみんなでああでもない、こうでもないって言いながらアレンジを作っていって。最終的にはすごく良い感じにできてイベントでも好評だったのでいつか形に残したいなと思っていたものをここに収録することになりました。ライブで良い感じに育ててきたものをあらためてレコーディングできました。

――今年は既に3枚目となるシングル「逆光」ですが完成した感触はいかがですか。

今までの私のシングルだと、表題曲がこういうパンチの効いた個性的な曲だとカップリングでバランスを取ることが多かったんですけど。全くバランスを取らない方向で(笑)、3曲入ってるなと。「空白」も、la la larksさんが楽曲とアレンジを手がけてくださったことで、「色彩」からの繋がりも感じやすいし、ほんとに作品に合ったものを3曲とも作れました。今までたくさんシングルを出してきましたけど、この感じはなかったなって思いますので楽しんでいただけたら嬉しいです。

Text : 上野 三樹 

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