教室の天使たち
子どもたちにはたくさんの表情があります。笑ったり、泣いたり、怒ったり…。
そんな子どもたちのいきいきとした日々を、教育現場で子どもたちと接し続けている先生方がリレーエッセイでおとどけします。


「保健室の使い方?」
ある女の子が保健室をのぞいていました。その覗く姿に私は彼女が何か伝えたいことがあるのではないかと感じていました。部屋の中から声をかけると私のところへ駆け寄ってきました。床に座っている私の横にそっと寄り添い、ぴたっと体をくっつけました。そのうち、机の上のたくさんのピンが入っている瓶を私のほうに持って来て、「これをつけたい の」と瓶の中からピンを出し、両手いっぱいに乗せて私に差し出しました。

私は、この時この子にとってピンを付けることがどんな意味をもつか、それを見ている子どもにどんな影響があるか、いろんな事が頭の中を駆け巡りました。しかし、私はその日のすべてをその子にかけてあげられないことは日常の保育から分かっていました。ピンを付ける中で「あなたに気持ちをかけている」ということを伝え、どこか少しの時間でもその子にとって自分は受け入れられていると言う実感を持って欲しい・安定して今日1日を過ごして欲しいという思いから私はただ「ピンをつける」ということに時間と気持ちを ゆっくりかけました。その子と関われる時間をそこに集中したのです。担任の先生が来たので、私は目で「きてるよ」と合図をしました。担任はそっとその子に近づき声をかけていました。少しするとその子と担任が出て行く姿がありました。

保育後、そのときの話を聞くと、その子は「来てくれると思った」と一言、言ったそうです。彼女は保健室であれば自分をちゃんと先生は見ていてくれると感じていたこと、自分の気持ちを伝えるという場に保健室を選んだこと。私はその子が自分なりに保健室を使ったことに嬉しく思いました。保健室はただの逃げ場でもなければ、ただ受け入れる場でもないのです。
(ごまみ)
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