坂本真綾 30周年記念ベストアルバム
『M30〜Your Best〜』
インタビュー&全曲解説

――デビュー30周年、おめでとうございます。まずは、大きな節目を迎えられた今の率直な想いをお聞かせください。

とにかく『皆様のおかげです』という想いに尽きますね。こうして30周年のベスト・アルバムの企画がスタートして、投票していただいて、結果を発表するなかで、皆さんが盛り上がってくださっていることが伝わってきました。今は『やって良かったな、節目を楽しんでもらえたらいいな』という気持ちです。

――25周年から30周年においては、妊娠・出産を経て私生活に大きな変化もあったと思います。音楽活動とのバランスなど、どのように考えてこられた時期でしたか。

私も40代になり、仕事のスタイルにもある程度、形ができてきたところでの大きな変化でした。初めての育児をしながら仕事をしていくことは今でも手探りで、一つ一つ試したり、周りに相談しながらやっています。大人になるにつれて大体のことはわかったつもりでいたけれど、こんなにもいろんなことがガラッと変わるような経験は、何度もできることじゃないなと思います。

例えば日常で目にするニュースのなかで自分が気に留めるものも変わりましたし、今の社会でどんなことが起きているか、自分の子供が大きくなるまでに社会がどうなっていて欲しいか、そういう視点をよりリアルに持つことができています。創作においても、これまでとは違う視点の自分だからこそ書けることもあるかもしれないなという期待もしていますし、良い刺激をもらっています。

子供と自分の人生とか、そういうものってそもそも天秤にかける問題じゃないというのは最近思っていることです。最初は『どっちをどう優先させたらいいんだ?』とあたふたしていましたけど、どちらも大事にするのは当たり前のこと。『できる範囲でどんなことをやるか』という考え方に変わりました。育児と仕事の両立が始まって、たった3年でも手探りのなかでいろいろ試していることが面白いですし、人生ってまだこんなにたくさんやることがあるんだなという刺激的な日々を送っています」

――今回は30周年を記念してベスト盤『M30〜Your Best〜』がリリースされることになりました。DISC1はファンの方からの人気投票、DISC2は音楽仲間が選んだ曲たちが収録されています。

2010年にリリースしたベスト盤『everywhere』の時にはどの曲を入れたいかという自分の意向というものがあって作ったものでしたけど。最近の私は、良い意味で周りの人に委ねたり任せたりすることに抵抗がなくなって柔軟になってきているんですよ(笑)。なので今回のベスト盤はファンの方たちや身近な人たちに選んでもらって、自分では一切順位をつけないというスタンスで通そうと思って。『真綾さんがあえて選ぶなら?』なんて聞かれることもありますけど、1曲1曲、全てに思い出がありますし、言い出したらキリがないので(笑)。こうして皆さんに選んでもらった曲を収録した今回のベスト盤は、すごく面白いものに仕上がりました。自分で選んでいたらこのラインナップになってないなというものができて、本当に良かったなと思っています。

【Disc1】30周年記念企画「MAAYA’s BEST SONG〜あなたの一番好きな坂本真綾の曲を教えてください〜」

01.プラチナ(作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:菅野よう子)

初めてお会いした方に「『プラチナ』が好きでよく聴いてました!」とか「『プラチナ』の方ですよね!」と言っていただくことが日常的にあります。アニメ『カードキャプターさくら』のオープニングテーマだったんですが、当時から作品の人気も高く、特に今の30代くらいの女性の方たちが毎週楽しみに観てくださっていたのかなと感じています。レコーディングした当時から、ちょっと大人っぽい印象で「良い曲だな」と思っていましたが、こんなにも長く愛される曲になって嬉しいです。

02.tune the rainbow(作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:菅野よう子)

この曲はアニメ映画『ラーゼフォン 多元変奏曲』の主題歌として作ったんですけど、そうしたタイアップではアッパーな曲が求められることが多いなか、歌詞もメロディも寄り添ってくれるような優しい曲でシングルが出せて良かったなと思います。私のファンの方たちは結構バラードが好きなイメージがあるから、こういう沁みる曲は好きなんじゃないかな。今回の人気投票では中間発表から変わらず2位で、人気の高さをあらためて感じました。

03.Be mine!(作詞:坂本真綾 作曲:the band apart 編曲:the band apart・江口亮 ストリングス編曲:江口 亮・石塚 徹)

ファンの皆さんにお任せしている今回の投票企画なのに中間発表で「Be mine!」が4位だったときに「おお〜、頑張れ頑張れ!」って思いましたね(笑)。私もすごく好きな曲ですし、20周年記念ライブでは原(昌和/the band apart)さんにご出演いただいてお立ち台に上げた甲斐があったなと(笑)。原さんに、この最終結果をご報告したら「Be mine!」が3位だったことも嬉しいし、原さんが一番好きな「これから」が15位に入ったことも嬉しいとおっしゃってくださいました。

04.約束はいらない(作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:菅野よう子)

やっぱりデビュー曲が入ってないとね!ライブではピアノ伴奏だけだったり、アコースティックだったりと色んな編成でやってきましたが、どんなアレンジをしても良い曲なんです。これまでミュージシャンの方たちから何度も「こんな3拍子のすごい曲でデビューしたんだね」と言われてきました。当時は何拍子なのかもわからないまま歌っていましたが、こうして今も愛されるデビュー曲になり誇らしいです。デビュー当時に私に出会ってくださった方もたくさん投票してくださったようです。

05.光あれ(作詞:坂本真綾 作曲・編曲:菅野よう子)

実はこの曲、レコーディングをした時はすごく難しく感じて録音し直したりもしましたし、アルバムを引っ提げてのツアーで歌った時もパワーが足りていなかった気がします。時間を経て、ちゃんとメッセージが伝わるように歌えるようになったのは、もうずいぶん後になってからのことでした。菅野さんと離れて、ライブであらためて「光あれ」を歌った時が、この曲の本当の始まりだった気がしています。投票してくださった方の中にはライブを観て知ってくださった方も多いのかなと思います。

06.マメシバ(作詞:坂本真綾 作曲・編曲:菅野よう子)

この曲が割と人気なことは知っていましたが、6位は意外でしたね(笑)。「マメシバ」を初めて聴かせてもらったときに私が「どこがサビですか?」って聞いたのを菅野さんが後で笑い話にされていましたけど。盛り上がっているのか、盛り上がってないのかよくわからないような、ちょっと変わった曲ですよね。タイアップ曲で「こういう歌詞にしてください」というオーダーが明確にありながら、自分で歌詞を書きました。初めて作家的な歌詞の書き方に挑戦した曲なんです。

07.ループ(作詞:h’s 作曲・編曲:h-wonder)

この曲が7位に入ってくれたのも嬉しかったです。CLAMP先生のアニメ『ツバサ・クロニクル』のエンディング・テーマということもあり、この時期に私を知ってくださった方も意外と多いみたいで。私にとっては菅野さんのプロデュースから離れて1枚目のシングルで、いろんな意味で緊張しながらリリースした曲です。デビュー当時から私のことを見てくださっていたh-wonderさんが、私の大きな転換期に真摯に曲と向き合ってくれたことが伝わってきて、すごく背中を押してもらいました。

08.奇跡の海(作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:菅野よう子)

音楽番組『COUNT DOWN TV』で深夜にシングルランキングを100位くらいまで発表していた時期に、長くランクインし続けていたのが「奇跡の海」。当時、大学生だったんですが、その音楽番組をたまたま見た友達に私が音楽活動していることを知られたことも(笑)。かなりインパクトのある曲なのでラジオなどで耳に留めてくれる方も多かったみたいです。菅野さんはキー合わせの時にギリギリのラインを攻めたかったみたいで、今では歌い慣れてきましたが、かなりキーが高いです。

09.ヘミソフィア(作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:菅野よう子)

この曲も人気ですね。難しい曲なので歌入れでは苦労しました。レコーディングが終わってミックスのときに聴いていたら、なぜか涙がボロッと出た記憶があります。それが何の涙だったのかはわからないんですが、安堵感や満足感だけでなく、その頃の自分が音楽と向き合うなかでの葛藤があったんだと思います。今思うと、やっぱり私はまだ世間知らずで、のほほんとしたところがあったので、歌の中で求められる緊迫感というものがなかなか出せずに苦労していたんでしょうね。

10.マジックナンバー(作詞:坂本真綾 作曲・編曲:北川勝利 ストリングス編曲:河野伸)

20代最後のシングルで葛藤の多い時期だったので、歌詞も自分を鼓舞するような内容です。ライブで歌っていても盛り上がる明るい曲ですけど、でもなんか胸が苦しいみたいな気持ちになることがよくあります。だからこそ好きって言ってくれる人が多いんじゃないかな。アニメ『こばと。』のオープニングテーマで、作品に声優として参加していた花澤香菜ちゃんもこの曲が好きで、「聴くと泣いちゃう」と言ってくれていたけど、私も歌っていて胸が熱くなり泣きそうになっちゃいます。

11.blind summer fish(作詞:サカモトマーヤ 作曲:カンノヨウコ 編曲:hog)

コンセプト・アルバムアルバム『イージーリスニング』の1曲で、歌詞も背伸びして、大人っぽいラブソングを書いています。それまでは自分の日記を曝け出すようにして歌詞を書いていましたが、音楽の中で、その世界を擬似体験して演じるように歌詞を書くというチャレンジをしたんです。この経験からだんだんそうした歌詞の書き方ができるようになってきました。『イージーリスニング』のなかでこの曲が突出して上位にくる理由はわかりませんが(笑)、いくつになっても歌える良い曲だと思います。

12.誓い(作詞・作曲:坂本真綾 編曲:河野伸)

2011年にリリースしたコンセプト・アルバム『Driving in the silence』に収録されている1曲です。あの時期は東日本大震災後に感じたことや考えたことを多くのアーティストがそれぞれに表現していたと思いますが、私のこの作品にも、それが滲んでいるなと思います。「everywhere」以来となる、人生で2曲目の自分で作詞・作曲をした曲です。25周年記念ライブのラストでたくさんのシャボン玉に包まれるような演出とともに、この曲を歌った光景を覚えてくれている方も多いみたいです。

13.ユッカ(作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:菅野よう子)

<一人で死んでゆくけど/一人で生きてゆけない>なんて刺さるフレーズの多い、岩里さんの歌詞の力も大きい曲だなと思います。アルバム『DIVE』は私が歌詞を書き始めたばかりの時期で、岩里さんと半々くらいの割合で作詞していました。レコーディングスタジオに一週間以上合宿していた際に岩里さんから「歌詞ができました」とFAXが届いたんですけど。この歌詞を読んで「プロってすごいな。自分にこんな歌詞が書けるようになるかな」とショックを受けた記憶があります。

14.Remedy(作詞:坂本真綾 作曲・編曲:solaya)

30年の活動のなかで「この曲が1番好き!」と思ってくれた方がこんなにもたくさんいますよって、今は亡きsolayaさんにご報告したいです。この曲もいろんな葛藤があった時期に書いていたので、そういうところも含めて皆さんに共感していただけたのかな。2011年に震災でツアーが中断して再開した時に、この曲を歌おうと急遽セットリストに入れたんですけど。「今こういう音楽が必要なんだ」と自分で書いた歌詞が自分に響いて、リハーサルで歌えないほど涙が溢れました。

15.これから(作詞・作曲・コーラス編曲:坂本真綾 編曲:河野伸)

さいたまスーパーアリーナでの20周年記念ライブで、過去の写真がたくさん映し出されている演出と共に「これから」を歌ったシーンを覚えてくださっている方も多いかもしれないですね。自分で作詞・作曲をした曲なので、バンドや作家の方たちが「良い曲だね」と誉めてくださるのも嬉しいです。制作では詞と曲がほとんど同時にできて、生まれるべくして生まれた1曲だなと感じましたし、20周年の自分の想いを重ねながらすごく素直な気持ちで作った曲です。

【Disc2】坂本真綾15人の音楽仲間が選んだMAAYA's BEST SONG15曲

01.ボクらの歴史selected by CLAMP(創作集団) (作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:菅野よう子)

CLAMP先生に私との出会いの曲である「ボクらの歴史」を選んでいただきました。15周年の時には皆さんにシャンパンをご馳走していただいたのも思い出です。その後、なかなかしょっちゅうお会いできる方たちでもないので、こうして周年のたびに何かお願いしたり、ご挨拶させてもらっています。Disc2の方は曲に順位はないので、聴いていて心地良い感じで並べているんですけど、この若い歌声を途中に入れ込むのは難しかったので(笑)、1曲目にしました。

02.走るselected by 臼杵成晃(「音楽ナタリー」編集長) (作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:菅野よう子)

リリースした当時から「走る」を熱く語ってくださる音楽通の方や音楽関係者の方が多かったんです。今の時代には考えられない長いイントロの曲が、すごくお洒落に感じていただいたみたいで。私が臼杵さんとコンスタントにお会いするようになったのはいつ頃からか覚えてないほどですが、私の過去のいろんな作品のことも詳しく知ってらっしゃる、話しやすいお兄さんという感じです。音楽ナタリーの編集長になられましたけど今も現場に来て、写真を撮ってくださることもあります。

03.eternal returnselected by 上野三樹(音楽ライター) (作詞:坂本真綾 作曲・編曲:末光 篤)

「eternal return」のイントロは、本来ならもっとキラキラとした明るい兆しとして響くはずでしたが、東日本大震災後のあのタイミングで行ったツアーだったからこそ切なく響いたんじゃないかなと思うんです。自分でも何が正解かわからない中で、ツアーを続けることを決めて、それを表明することはとても怖かったんですけど。バンドのメンバーを含め、チームとしての絆がグッと深まったタイミングでした。今聴いても、あの時のいろんな気持ちを思い出して胸が熱くなる曲です。

04.Get No Satisfaction!selected by 北川勝利(ROUND TABLE) (作詞:坂本真綾 作曲:北川勝利 編曲:河野 伸)

北川さんに最初に書いていただいたのがこの曲。その後、今度は作編曲で「マジックナンバー」を作っていただいたり、2011年の「You can’t catch me」ツアーではバンマスをお願いしました。私のライブで盛り上がる曲は主に北川さんが書いてるみたいな印象がありますね(笑)。そのくらい、「Get No Satisfaction!」もライブで欠かせない曲になってきました。北川さんにしか書けない、こういう明るい曲が私には必要なんです。来年の30周年記念ライブのRoute A<北川勝利バンド>も楽しみです。

05.coming upselected by 原 昌和 (the band apart) (作詞:坂本真綾 作曲・編曲:原 昌和)

原さん「Be mine!」3位、おめでとう!もう1曲も原さんが書いてくださった曲を選んでいただきました。他の曲にはない、ちょっとアンニュイなサウンドが私もすごく気に入っています。同じ板橋出身という共通点があったりして、原さんとの出会いも大きかったなと思います。こうして曲を書いていただいたり、25周年記念ライブにもご出演いただいたり、アルバム『Duets』にも参加していただいたり、気づけばたくさんお世話になっています。

06.birdsselected by 菅野よう子 (作編曲家 / 音楽プロデューサー) (作詞:サカモトマーヤ 作曲:カンノヨウコ 編曲:hog)

菅野さんの曲でDISC1に選ばれた曲もたくさんあったので、何を選んでくださるかなと思っていましたが、最初から「birds」を挙げてくださったそうです。コンセプト・アルバム『イージーリスニング』の1曲で、アルバム自体それまでにないコンセプトで自由に楽しめた制作でした。コメントもいただきましたが、当時もこの歌詞をすごく誉めていただいたんです。「birds」はとにかく曲自体にエネルギーがあって好きだなと感じ、背伸びしながら強気な歌詞を書いたのを今でも覚えています。

07.DIVEselected by h-wonder (作編曲家 / 音楽プロデューサー) (作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:菅野よう子)

h-wonderさんがこの曲を選んでくださるのは予想できなかったですけど、嬉しいです。リリース当時に聴いてくださったときの印象が強く残ってるんだろうなと。デビューしてh-wonderさんに曲を書いてもらう前から何となく近いところにいらっしゃったけど、「ループ」以降は本当に一定の期間を置きながらでもコンスタントにその時々の私を見てもらっていて。子供のときから見てもらっている、恩人の一人です。本当に優しい方でいつ会っても何か褒めてくれるし励ましてくれます。

08.紅茶selected by 花澤香菜 (声優・歌手) (作詞:坂本真綾 作曲・編曲:菅野よう子)

今回、同じ業種の声優であり歌手でもある香菜ちゃんが何を選んでくれるのかなという個人的な興味もあり、お願いしました。彼女は私が新譜を出すたびに必ず感想を伝えてくれるんですけど、そんななかで「紅茶」を選んでいただきました。歌にもお芝居にも常に頑張り続ける力を持っている人で、年下だけど香菜ちゃんのことを尊敬していますし、良い刺激になっています。私も良い先輩でいたいから頑張らなきゃって、そんな気持ちになります。

09.ユーランゴブレットselected by 谷脇浩一 (bayfm「ビタミンM」ディレクター) (作詞・作曲・編曲:川谷絵音 ストリングス編曲:徳澤青弦 コーラス編曲:えつこ)

谷脇さんはラジオ番組「ビタミンM」のディレクターさんです。どの曲を選んでくださるか想像もできなかったですけど、「ユーランゴブレット」、いいとこついてきました(笑)。なんでこの曲なのか、聞いても深く語ってくれなさそうな気がするな。私が大学生のときからもう20年以上も毎週のように会っているからお互い照れくさい感じもありますね。谷脇さんが愛情を持って番組を作ってくれて、努力してくださっているから、「ビタミンM」をこんなに長く続けられているんだろうなと思います。

10.色彩selected by 奈須きのこ (小説家・シナリオライター) (作詞:坂本真綾 作曲・編曲:la la larks ストリングス編曲:江口 亮・石塚 徹)

奈須きのこさんもすごく感受性の豊かな方でライブに来てくださるたびに感想を言ってくださいます。今回もいろいろと考えてくださったなかから、でもやっぱりご自身がシナリオを手がけたゲーム「Fate /Grand Order」の主題歌「色彩」を選曲していただきました。この「色彩」から、激しくてアップテンポでエッジの効いた曲調の、“漢字二文字シリーズ”が始まって「逆光」や「躍動」と続いていきました。新しい扉が開いた、この曲との出会いもなかなか運命的だったと思います。

11.サンシャインselected by 高橋 修 (「ミュージックマガジン」制作部) (作詞・作曲・コーラス編曲:坂本真綾 編曲:渡辺善太郎)

高橋さんはデビュー当時から取材してくださっていて。坂本真綾のCDが、まだサントラのコーナーに置いてあった時代に「ミュージックマガジン」でレビューを書いてくださったことが私も制作陣も嬉しかったです。ここ何年かはお会いするたびに「アルバム『シンガーソングライター2』はいつ出るんですか?」とおっしゃってくださいます。ただ、私が作った曲の中で「サンシャイン」、選びますか(笑)?今は亡き渡辺善太郎さんとの思い出の曲でもあります。ありがとうございます。

12.トピアselected by 河野 伸 (作編曲家 / 音楽プロデューサー) (作詞:坂本真綾 作曲:矢吹香那 編曲:河野 伸)

私個人的には「トピア」ってすごく好きな曲なんですよ。割と地味でアルバムの中の隠れた名曲みたいな印象もあるので、今作でもっと多くの方に聴いてもらえたらなと思っています。最近また赤羽橋付近でよく仕事をしているんですけど、灯りのついた東京タワーを見ると、自然とこの曲が浮かんできます。本当に河野さんらしいアレンジの曲で、もう随分前ですがこの曲のミックスを綺麗な間接照明のスタジオでおこなって「良い曲ができたな」としみじみした記憶があります。

13.おかえりなさいselected by 金光裕史(「音楽と人」編集長) (作詞:坂本真綾 作曲:松任谷由実 編曲:森 俊之)

金光さんは「おかえりなさい」が好きなんだなっていうのは知っていました。でもコメントに書いてくださっているのは、ほとんど奥さんとのエピソードだから、それが印象深いんでしょうね。インタビューでは本当に毎回じっくりお話を聞いてくださいますし、新しい曲を金光さんがいいって言ってくれたら嬉しいです。ただ金光さんはとにかく悩んでる私が好きなんですよ(笑)!だからそういう選曲かなと思っていたら、私の曲のなかでも穏やかな幸福感のある曲を選んでくださいました。

14.シンガーソングライターselected by のっち(Perfume) (作詞・作曲:坂本真綾 編曲:河野 伸 コーラス編曲:坂本真綾・河野 伸)

のっちちゃんが昔からいろんな曲を聴いてくれているなかで割と最近の、しかも私が作った曲を選んでくれました。Perfumeのライブでは彼女たちの完璧なパフォーマンスと素晴らしい技術を使ったステージに感動するけど、その感動は完璧の隙間に透けて見える彼女たちの人間的な魅力からくるものなんだろうなって。生きることは楽しいだけじゃなく大変なこともあるけど、明るく表現し続けている彼女にこの曲を好きだと言ってもらえて、何か共鳴するものがあるようで嬉しいです。

15.猫背selected by 岩里祐穂(作詞家) (作詞:岩里祐穂 作曲・編曲:菅野よう子)

岩里さんが「真綾ちゃんに歌ってほしい歌詞ができたんだけど」と持ってきてくださったのが「猫背」です。いただいたコメントにも「46ある私の作詞曲で、唯一の“詞先”の歌」とありますが岩里さんご自身、詞先で書かれることはあんまりないと思うので、言葉が湧き出してきたっていうくらいのインスピレーションを与えられたのは、すごく嬉しいし光栄なことです。岩里さんはずっと若々しくて常に新しいことに挑戦し続けていて、私が普段から大人の女性の先輩として慕っている方です。

――ファンの皆さんと音楽仲間と、多くの方たちの愛情が詰まった2枚組のベスト盤になりましたが、真綾さんご自身ではいかがですか?

人に選んでもらうと決めて作った今回のベスト盤ですが、どちらのDISCの曲の並びも何回見ても味わいがあるなと思います。私がこれまでリリースしてきた255曲の全てにスポットを当てるのは物理的にできないですけど、この投票の期間に改めて255曲の全てを見える形で振り返ることができたのも、私にとっても、応援してくださっている方にとっても、良い時間になったんじゃないかなと思います。このベスト盤が出来上がったのを見ながら、来年4月のライブをどんな内容にしようかなと考えているところです。

――「坂本真綾 30周年記念LIVE “M30〜Your Best〜”」は有明アリーナにて2days。4月18日はRoute A<北川勝利バンド>、19日はRoute B<河野 伸バンド>で開催されるという情報も発表されました。

30周年の節目に北川さんバンドと河野さんバンド、どっちでやるのかと聞かれたら決められない自分がいました。この大きな空間でお祭りを楽しめる機会に、どっちのバンドとも過ごしたいんですよね。自分としては『両方やるって新しい試みで面白いじゃん!』と思ったけど、いざ準備となると大変なんですよ(笑)。でもきっとお客さんも両方観たかったと思うから、喜んでもらえるんじゃないかなと思います。普段あんまりライブに行かないという方も来てくださるんじゃないかなと思いますし、観たいと思ってくださった方みんなが観れるライブになったらいいなと思っています。

Text by 上野三樹