the id : 2007.9.3

『 「レ・ミゼ」東京公演が終わりました 』

6月に開幕した「レ・ミゼラブル」東京公演は、おかげさまで8月26日にぶじ千秋楽を迎えることができました。猛暑の中、劇場に足を運んでくださった皆さん、どうもありがとうございました。
今年は日本公演が始まって20周年の節目の年。長年世界中でたくさんの人に愛され続けている、歴史ある作品の一部として参加できる喜びを改めて噛み締めながらステージに立たせていただきました。

私がエポニーヌを演じるのは今年で5年目でしたが、相変わらず毎回必死です。同じ役を長く務めるということは、そのぶん理解もどんどん深まるはずと想像していましたが、実際にやっているとハードルは上がるばかりで「慣れる」なんて感覚は私にはまだありません。成長するための痛みは必ずあります。だからこそ、乗り越えてやる!という意地のような気持ちもエネルギーになって走り続けてこれたし、いつも気を緩めることなく挑むことができました。そして毎回少しずつ何かを学び吸収することができたのだと思います。

5年目の東京公演で得た宝物は…
実はここだけの話、今年の公演で初めて、心の底からわき上がるような「楽しい」瞬間を、少し味わうことができました。それが宝物です。

なーんて書くと、「えっ、楽しくなかったの?」とネガティブな印象を与えてしまうかもしれませんが、そういうことじゃないんです。

この作品は私にとって、以前客席から観ていた頃は、華やかでかっこよくて、いつもパワーを与えてもらえる場所でした。帰り道には「民衆の歌」を口ずさみ、あの学生たちのように精いっぱい生きたい!と勇気がみなぎったものです。
出演者の立場となってからは、役者としてだけではなく人間として試され続ける試練の場になりました。つまり、とっても大変だけど、とにかくいろんなことを教えてくれる修行の場として今まで以上に奥深く、かけがえのない存在になったのです。
この場に身を置くかぎり常に試練の連続なのですが、その険しい道のりの向こうには必ず今まで見たこともないような清々しい景色が広がっているので、何度壁にぶち当たってもやめられません。坂を上って何かを手にして、また次の坂を上って…。そうとうなドM気質だなと、我ながら思います。

そんなわけでいつでもギリギリなので、正直「たっのしーい!」とスキップしながらやってますと言えば嘘になります。何ヶ月間も続く長い大会に出るスポーツ選手のような気分で、体調とメンタル面のメンテナンス、練習とイメトレと研究の繰り返し。もちろん他の仕事もしながらですので、開幕すると千秋楽までとにかく気が休まることはありません。
今まではそのプレッシャーの方が大きくて、心の底から「楽しい」と思う余裕はほとんどなかったのです。あるのは「しあわせ…」というジワッとした気持ちでした。

「楽しい!」と「しあわせ…」はちょっと違います。観客の皆さんからいただく温かい拍手や、共演者が放つ輝くオーラや、美しいメロディに「しあわせ…」と噛み締めることはこの上ない喜びで、この仕事をする上で最高の上質なご褒美でもあると私は思います。
「楽しい!」は、それよりもう少し気軽な気持ちです。「あっ!」という感じの、瞬間的な感動でもあります。軽いけど、これもとっても素敵なこと。きらっと光って、アクセサリーのように、あるいはデザートのように、心を豊かにしてくれます。私は今年初めて、その感覚を舞台上で味わいました。うまく言えないんだけど、そうなんです。これも、続けてきて良かった、こんな気持ちに出会えたと、けもの道の向こうでたどり着いた景色なのです。

そこに山があるから上ると言う登山家と似てるのかもしれませんが、私もそこに坂があるから上りたい、壁があるから乗り越えたいという欲求の赴くまま、ひたすらエポニーヌとしてステージの上を精いっぱい生きたいと思います。

引き続き福岡の博多座で9~10月にかけて公演があります。福岡は大好きな街ですので行くのが楽しみです。

ああ、まだまだ終わらない私の修行…でもそんなギリギリな自分も結構好き…
やっぱドMです。

*写真は今年2月に勉強のため「レミゼ」ニューヨーク公演を観に行ったときのもの。

*maaya*