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坂本真綾 Fate / Grand Order Best「余韻」インタビュー

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Fate / Grand Order Best『余韻』 坂本真綾 Interview

坂本真綾×FGOの主題歌全てを集めた主題歌ベストアルバム『余韻』がリリースされます。11年間にわたる制作を振り返ってみていかがですか。

昨年末にリリースした最終章主題歌「時計」を作りながら、これで一区切りだし私のデビュー30周年が終わった後にFGOのタイアップ曲をまとめたベスト盤を出すのもいいよねという話は、随分前からしていました。今までも色んなアニメやゲーム作品の主題歌を歌わせていただく機会は本当にたくさんあったんですけど、FGOというのはすごく特殊で。昔のゲームはディスク1枚出たらそこで完成でしたけど、スマホゲームになるとどんどん更新されていって、明確に終わりがないものもあったりする中で、人気が出て想像以上に長い11年以上にわたる制作期間だったわけです。なので主題歌も最初は1曲だけのつもりで「色彩」を作り、そのリリースのだいぶ後、1〜2年後になってゲームのプレイヤーの皆さんが第一部のエンディングを迎える。そうすると、その結末を見た人が「主題歌はこういう意味だったのか」という体験をし、更にたくさん曲が聴かれたという経緯があったんです。

リリースから大ヒットまでのタイムラグがあるのは面白い現象ですよね。

そこまで曲と物語がリンクしたのは、このゲームの総監督である奈須きのこさんが私の作った歌詞の世界観を最大限に汲んでシナリオにも反映させてくれていたからなんです。だからものすごいフィット感だったんですよ。それ以降に作られた「逆光」「躍動」も、奈須先生とじっくり話し合いをして、ユーザーさんが初めて聴いた時よりも、物語が進んで結末まで知った時にもう一度感動できる曲を提供したいという想いがあって作っていったものです。なので「色彩」以降、コアなゲームのプレイヤーさんたちは曲がリリースされた段階で「これはこういう意味なんじゃないか」とか「あのキャラクターの気持ちなんじゃないか」といった、考察をしてくださるようになりました。FGOのために作られた曲であるという特別感と、主人公やキャラクターの心情が歌詞に表れているので、ただの主題歌やエンディングテーマとしてテロップを見ながら聴くBGMという以上に楽しんでくださった、本当に独特な盛り上がり方でした。

真綾さんにとっても、意外な展開だったと。

正直に言うと、最初は「スマホゲームの曲って、みんな1回聴いたら次は飛ばしちゃうんじゃないかな」なんて、ちょっとドライな気持ちでいましたから(笑)。でもそんな予想に反して、最終的には音楽をゲームのひとつの重要な要素にしていただいたのは、すごくありがたかったです。昔から、私の音楽を知ったきっかけというとアニメ「カードキャプターさくら」だったり「天空のエスカフローネ」を挙げてくださるファンの方が多い中で、FGOで知ってくださった方も本当に増えました。自分も年齢を重ねて30周年を迎えて、長く活動してきましたけど、FGOをきっかけに若いリスナーさんもたくさんライブに来てくださっているようですし、その影響は大きいなと感じています。

奈須きのこさんがFGOの全体プロットを書いているときに真綾さんの曲を聴いていたというお話もありましたが、物語の世界観と真綾さんの音楽はもともと呼応していたのかもしれないですね。

どうなんでしょう。奈須さんの中で具体的に「聴いていた」とおっしゃる曲をいくつか知ってはいますけど。奈須さんは芸術家なので、どういった部分からインスピレーションを受けていたのかまでは分からないです。ただ、奈須さんが本当に昔から私の曲を聴いてくださっていた中で、特にお好きだとおっしゃる曲を自分なりに分析してみると、結構「内面の葛藤」を歌ったような歌詞だったり、あるいはちょっとハードな印象のアップテンポな曲が多いのかな、という感じはしていて。だからFGOのために楽曲を、と言われた時も最初から「ちょっと暗めでアップテンポな曲」というのは自分でもイメージが湧きやすかったです。歌詞に関しては、奈須さんご自身が小説家でいらっしゃって、言葉にも鋭いこだわりや独特の感性を持っていらっしゃるので、本当は奈須さんが歌詞を書いた方が作品には合うんじゃないかなとか思ったんですけど。でも、任せていただいて1曲目の「色彩」を書いた時に、ものすごく手放しで絶賛してくださったんですよ。そこからは信頼していただいて、「次も、次も」と言う感じで、歌詞に関しては私が書くということが決まっていった感じでしたね。

ハードでエモーショナルな楽曲の世界観は「漢字二文字シリーズ」として、坂本真綾の新たな音楽性を広げました。

「色彩」をリリースした時は、la la larksに作っていただいたこの曲が、かっこいいけど自分で歌いこなせるかが不安で、演じるような気持ちで歌う曲なのかなと思っていたんです。andropの内澤崇仁さんに作っていただいた「独白」もすごくソリッドな印象の曲ですし。ただ、今となっては、30周年記念ライブでも「躍動」を歌ったりしましたけど、FGOの世界観にがっちり合わせて作っていただいた曲たちを、いつの間にか漢字二文字シリーズという自分の中の1つのジャンルとして歌えるようになりました。それもFGOの物語に引っ張ってもらったからこそ挑めた気がします。

多くの主題歌を制作し、そして声優としてもキャラクターを演じてきたFGOというゲーム作品に最も共鳴した部分、その特別さみたいなものってどういうところにありますか。

ひとつ、ずっと面白いなと思っていたのは、このお話には偉人がいっぱい出てくるんです。彼らは自分が未来でゲームのキャラクターになっているなんて思いもしないでしょうけど(笑)。現代を生きる私たちにとっては歴史上の人物はフィクションに近い感覚ですけど「その人はその人の時代でとにかく懸命に生きていた」ことは現実で。その解釈は未来で色々変わるかもしれないけど、生きている時のその人は私たちとそう変わらない、四苦八苦して色んな問題に取り組んでいた、とてもリアルな人間だったんだろうなということを、いつもこの作品を通して考えていたんです。そうした偉人たちの普通の部分を想像して、現代の私たちと対話ができたらどんな風だろう、と。自分もただ一生懸命に目の前のことに取り組むことが、本当にバタフライ効果のように、いつかどこかものすごく遠いところで誰かの役に立ったり、目に留まったりするのかもしれない。そんな可能性のことをよく考えていました。そしたら最後の最後、「時計」を作る際の打ち合わせで奈須さんが「バタフライ効果のように」とポロッと仰っていて「あ、やっぱりそうなんだ」と思ったんです。この主人公たちがしたことは、誰も知らないような小さなことかもしれないけど、巡り巡って世界のためになっている。奈須さんも決して自分のやっていることは偉大なことだなんて思っていなくて、本当に好きなことを書いていて、でもその向こうで誰かの背中を押したいという純粋な気持ちがある人なんです。私もそうだし、そういう小さな羽ばたきがそこかしこで起きていて「この世界がもっと良くなるといいのにね」という気持ちを持っている人たち同士なのかな、と思いました。

真綾さんも以前、いつか自分の歌がメッセージボトルみたいに時代を越えてどこかの誰かに届いたらいいと仰っていましたよね。

物を作っている人は誰もがおこがましいけれどそういうことを思っているのかもしれません。そうした根っこのところでクリエイター同士、通じ合えるものがあって共鳴できたんだと思います。そもそもFGOに出会う前から奈須さんの小説を読んだ時に本当に感銘を受けて、尊敬と共に、勝手にシンパシーを感じるようなところがあったんです。でも多分、奈須さんの小説を読んでいる人はみんな「あ、この人は私と同じこと考えてる!」って思うんじゃないかな。私はただの、そういう読者の一人でもあります。

Disc2のアンプラグドセッションについてもお伺いします。「躍動」のアンプラグドセッションはストリングスがおしゃれで華やかな躍動感溢れるアレンジで仕上がっています。

アレンジャーの山本(隆二)さんがすごいんですよ!「躍動」は30周年記念ライブで歌ったばかりだったので、レコーディングもすんなりいけると思ったんですけど。でも、このアンプラグドバージョンだったらどう解釈して歌おうかというのを色々試しながらやりました。よく聴き慣れている「躍動」ならすぐ歌えるけど、あえて何か新しい歌い方はないだろうかと探しながら歌ってみました。

ライブとはまた異なる魅力が詰まっていて新鮮でした。そして宮野真守さんに提供した「透明」はどのような経緯で制作されたんでしょうか。

「透明」はFGO劇場版の後半主題歌として宮野君に歌ってもらうことを前提に書いた曲です。実は一人称を「私」にしてほしいというのは、彼からのオーダーだったんですよ。彼が演じているキャラクターは一人称が「私」の男性なので宮野君は自分が演じるキャラクターの印象のまま歌うことを大事にされていて、なので歌詞でも「私」にしてもらいたいと。それはすごく素敵だなと感じましたし、作品への想いを大事にされているんだなと思いました。ただ、これは彼の名義のシングル曲でもありますし、歌に関しては普通に宮野真守として歌ってるんだと思うんですよね。彼のようにアーティスト活動もされている方は、自分の役のイメージで歌うといっても、やっぱりその時の宮野真守の最新シングルであることも忘れてはいけないし。彼が歌った時には、彼の物語でもあるとファンの方に捉えてもらいたいので。FGOが好きで聴く方とは、また違う受け取り方ができる歌詞が書けたらいいなと思ったんです。

それはまさに、声優でもありアーティストでもある真綾さんだからこそ理解し合えるところですよね。

そうですね。この頃も色んなアーティストさんに歌詞を書かせていただく機会がありましたが、その度に思っていたのは、「この声でこの人の人生があって歌うから届く言葉」ってあるよなということで。当時、コロナ禍でなかなかお客さんの前で歌えない時期でしたが、またいつか満員の客席のステージに立って、マモ君がみんなの歓声の中で懐かしい声を浴びながら歌い始めるところを想像しながら書いたのが「透明」です。

ライブでセルフカバーされたこともありましたが、「透明」は真綾さんご自身にもすごくフィットしてる曲ですよね。

自分で歌詞を書いても、やっぱり自分のために書いたものではないから、似合うように歌えるかなと思いながらレコーディングしたんですけどフィットしていたら良かったです。ライブでやった時に北川勝利さんがアレンジしてくれて、すごく良い感触はありましたし、マモ君が歌うオリジナルとはまた違う印象の曲にはなったのかなと思います。ちなみにライブでは北川さんにアレンジをしていただいたんですが、今回のレコーディングでは弦のアレンジだけ河野伸さんにお願いしました。30周年では「Route A」と「Route B」のバンマスとして別々にご一緒させていただいた北川さんと河野さんが二人ともスタジオにいてくださっている状態でレコーディングをしたのがすごく新鮮でした。周年ライブが終わってから、本当につい最近レコーディングしたものなんです。

では最新の真綾さんの歌声を楽しんでいただけるというわけですね。そして初回盤には2021年に東京オペラシティで行われた無観客配信ライブが映像作品として収録されています。真綾さんにとってどのような体験でしたか。

コロナ禍で、本来ならお客さんの前でやりたかった企画が配信という形になりました。でも、たくさんのストリングスの方にご参加いただいた、あの編成で東京オペラシティという特別な空間だからこそ生まれた響きがあったと思います。特に「独白」では扇谷研人さんのパイプオルガンと私だけで歌い始めるんですけど、あまりない経験でしたので、ぜひ映像で観ていただければと思います。

30周年が終わり、FGOとのコラボもこうして有終の美を飾り、ここからまた新しい何かが始まるといいですね。

もう今は30周年が終わって「ふぅ〜っ」と一息ついているところです。周りからの「そろそろ本腰を上げなさい」という雰囲気も感じてはいるんですけど(笑)。でも自然と何か新しい出会いを待っているのが、きっといいんだろうなと思います。今回のアルバム『余韻』をあらためて聴き返しても、la la larksさん、伊澤一葉さん、内澤崇仁さん、YOURNESSさんなど、本当に同年代から下の世代の方まで、すごいエネルギーと才能を持った人たちが参加してくださったなと思うんです。そういう刺激的な出会いが、また自然な形でやってくるのを待っていたいです。

「時計」の「真っ白に広がる 次のページへ」という歌詞の通り、FGO主題歌の制作を完結させた今、真綾さんはどんな「余韻」を感じていますか。

11年という月日を振り返って「よく頑張ったな」と思える誇らしさと、この作品のおかげで新しいものに挑めたことへの感謝が一番大きいです。寂しくて立ち止まってしまうのではなく、この寂しさを抱えたまま、清々しい気持ちでまた一歩を踏み出していけるような、この自分を支えて背中を押してくれるような「余韻」と一緒に次のページをめくって行けたらいいなと思っています。

TEXT:上野三樹

初回限定盤
通常盤

Fate / Grand Order Best余韻

  • 2026年7月29日発売

  • 初回限定盤:
    VTZL-273 / ¥4,950(税込)

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  • 通常盤:
    VTCL-60703〜4 / ¥2,750(税込)

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