一倉宏 メッセージ

「始まりもなく、終わりもない」と、博士は言った。

かつて、火星へ向けて宇宙飛行士を送った。KANNO YOKOのメロディに乗せて。あれは素敵な旅だったね。

おみやげの宇宙のかけらを、いまも大切にしている。

それから、地球が何周かして。驚くような星間メールが届いた。「蒼のエーテル」という。僕が知っている星たちの歌の中でも、BEST3に入る素晴らしい歌詞だ。それを伝えるため、メールにすぐに返信した。

それからまた、10周くらいしたのだね。本当にひさしぶりに。今回OSAWAさんのメロディに乗せて。今度はどこへの旅にしようか。もっと遠くへ。ずっとずっと遠くへ。信じられないほど。想像できないほど。宇宙の果てまでも。そんなことを考えたんだ。その時に思い浮かんだのが、S・W・ホーキング博士の言葉だった。

博士の登場するCMをつくる時に。博士の理論のいちばん面白いところを、いちばん簡単に言ってください。そう質問したんだ。返ってきた答えが、これだ。

「虚数の時間(imaginary time)で言えば、

宇宙には始まりも終わりもない」

どうだい? イメージできるかな。二乗すると負になる数、虚数(imaginary number)だってなかなかイメージできなかった元高校生には、それの時間の単位、なんて想像するのも難しい。でも、凄い。よくわからないけど。想像にも果てがあるなら、その先には何があるのだろう?

――― そんなイメージで、この詞を書きました。

あまりに遠くて、大変だったかもしれない。でも、嫌いじゃないってこと、知っているから。そういう旅を。宇宙の果て、時間の果てまで駆ける彼女のその姿を、どうぞ想像しながら聴いてください。