第11回 GUEST:
演出家 佐藤 敏夫
佐藤さんは、私が8才の頃からずっとお世話になっている方で、私にとっては第二の父的な存在(ちなみに前回のゲストは“第二の母”だったけどね)。洋画の日本語吹替版のベテラン演出家さんで、大作という大作を数多く演出されています。最近はアニメやゲームの演出も。私もこれまで佐藤さんの担当された作品に数多く参加させていただいてきました。
とにかくこの方については「尊敬」の2文字に尽きます!とにかく、佐藤さんの演出には常に「愛」がある!その作品に対する愛、ひとつひとつの役柄に対する愛、役者やスタッフに対する愛です。佐藤さんを見ていると、プロってこういう人の事だよなぁと思うのです。仕事に心からの愛を注げる人は、まさに職人ですよね。もちろん私だけでなく、それはそれは沢山の役者さんたちから絶大な信頼と尊敬を集めていらっしゃる方です。その証拠に、年に何度か佐藤さんのご自宅で行われるパーティー(夏はビアガーデン!)には多くの役者さんたちが集まって、とても盛り上がるんですよ!(奥様の手料理も絶品なのです。)
そんな人望のあつい佐藤さんですが、仕事中はやっぱちょっとこわ?い雰囲気が。私は特に初めて会ったのが8歳のときですから、その時の厳格なイメージが強くていまだに緊張してしまいます。だからこの原稿をお願いするときも、どんな回答が返ってくるのか正直びびりまくりだったんですが、果たして佐藤さんから見た役者・坂本真綾とは?!ひゃー、びびっちゃう。

(illustrated by maaya.)

回答者:演出家 佐藤 敏夫
1)坂本真綾の第一印象は?
確か、小学校4年生の頃だったかな。物怖じしない可憐な少女で、か細い声なのに芯があって子役の中でも際立つ存在になれると思っていた。
声の仕事で子供の役があると大人の女性が演じることが多いけれど、その年令の子供が演じること程強い事はない。とは言え、子供らしさだけではなく感情を表現出来てはじめて「演じる」ことになる。真綾は大人の巧さを越えて子供らしさをしっかり演じられる感性を持った上手い女の子だったから大人から怖れられる存在だったんじゃないかな。

2)それに比べて、現在の印象は?
期待通り頑張ってくれているので嬉しいね。大人に怖れられる存在から真綾が大人になって今度は子供に怖れられる存在になりつつあるかな。子供の感性を残して子役を演じているのだから。

3)これまでに強く印象に残っている出来事、または作品
最初の仕事は恐竜の子供だったね。“The Land Before Time”。それから数多く頑張ってくれました。最近では、「ロミオとジュリエット」(ANB日曜洋画)、「スターウォーズEP1」(劇場公開)、「ER緊急救命室」のレイチェル・グリーン(NHK)、「ぼくのなつやすみ」(ゲームソフト)etc・・・

4)坂本真綾を○○にたとえると?(動物、植物、人、色など何でもOK)
動物ならハムスター。植物では、すみれ。色は水色。

5)あなたから見た、坂本真綾の魅力を教えてください。
役に喰らいついていくところかな。
オーディションで殆ど役を勝ち取っていると思うけれど何とかその役を自分のキャラクターに合わせて自分のものにしようとしているのでしょう。

6)「これだけはやめてほしい」と思うことはありますか?
特になし。前向きの姿勢を続けて欲しい。

7)今後の坂本真綾に期待する事、課題や希望、演じさせてみたい役柄など
役者として少し線が細い様な気がする。貧欲に図々しくなる位の方が真綾の別の魅力が出てくるんじゃないかな。

8)最後に、坂本真綾に向けてご自由にメッセージをどうぞ。
子役から大成する人は数少ないと云われている。
真綾はその数少ない一人として大いに頑張って欲しい。
舞台の魅力に取り憑かれるのもよし、シンガー・ソング・ライターとして唄を歌い続けるのも楽しいと思う。でも言葉に魂を入れて表現していくアテレコにも余力を残しておいてね。
ともかく、こういった事を人生のなりわいにしようとしているわけで、一生懸命もよいけれど、自分自身がどれだけ楽しめるかが他人を楽しませるバロメーターになることを心に置いて大いに楽しんでください。



ありがたい。ありがたいよー。普段なかなかこういう事って面と向かって聞けないんだよね。佐藤さんどうもありがとうございました。
初めて一緒にさせて頂いた仕事は佐藤さんのおっしゃる通り「謎の恐竜大陸The Land Before Time」というスピルバーグの作品、でもあの時私は小3でした。気の強い子供恐竜の女の子の役。ジャンプするシーンの「えいっ!」というかけ声がどうしてもうまく出せない私に、佐藤さんが自ら隣に来て一緒にジャンプをしながら指導してくれたのをよく覚えています。何度も「えい!」と声を出しながらジャンプしていたらマイクのコードに足をひっかけて転んでしまって、なんだかとても恥ずかしくて急に泣き出してしまったんだよね。佐藤さんはそんなとき厳しさを残したまま「よし、もうできるね?じゃあ本番いくよ」と、すぐに仕事モードに私を引き戻してくれたんです。あの日から、たとえどんなときも「できない」というこどばだけは吐かないぞという気持ちを、15年間持ち続けています。そういう強さを教わったのはあの日の佐藤さんからだったと思います。
で、線が細いとのご指摘!はい、肝に命じて頑張ります。図々しさかぁ。私ってほら、謙虚な女だからさー。地が出ちゃうんだよね!ははは!
最近は「ER 緊急救命室 VIII」のアフレコで毎週のようにお会いしていますが、私の演じるレイチェルは反抗期の女の子。ティーンエイジャーらしい強気なズル賢さを出せればと思っています。放送は来春からとのことですから、お楽しみに。