大根仁

Q1:サカナクションとの出会い

もちろん存在はずっと知っていたのですが、正直「へえ~良いバンドだねえ」くらいにしか思ってませんでした。ぶっ飛んだのは2012年のロックフェス「TAICO CLUB」でライブを観た時です。ロックバンドでありながら、エレクトロやダンスミュージック、テクノやビッグビートがごちゃまぜになった音楽性、熱くて冷たい低温火傷のようなステージング、当時の「TAICO CLUB」ではアウェイだったはずなのに、一瞬でオーディエンスを掴んだその姿に、心底痺れました。ライブ後、バックステージで初対面の一郎君に「ナメててごめんなさい!」と平身低頭お詫びをし、そのまま「ところで映画の音楽やらない?」と、映画『バクマン。』の仕事をオファーしました。

Q2:あえてサカナクションのBESTな曲を選ぶとしたら?

好きな曲はたくさんありますが、あえて一曲ということであれば、立場上、映画『バクマン。』主題歌である『新宝島』を選ばざるをえません。
歌詞がまったく上がってこなくて、映画最終仕上げの最終日、いよいよこの日に出来上がらなかったらとんでもないことになる…という状況の中、やってきたスーツ姿のビクター担当者は「間に合いませんでした!」と。
それからも待てど暮らせど歌詞が届かず、一郎君を呼び出して下北沢で酒を飲みながら歌詞のヒントになる言葉を探り合ったりしながら、ようやく出来上がった「新宝島」を初めて聴いた時の喜びと驚きは忘れることができません。映画の劇伴音楽があちこちで評価され、最終的に日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞した時は、我が事のように嬉しく誇らしく、メンバー全員を抱きしめたくなる想いでした。主題歌だけでなく、劇伴作りも大変だったんですよ…僕の仕事のやり方は、普通の監督よりもミュージシャンやバンドとの関係が深くなりがちなんですが、サカナクションとはより深く、より濃い関係性を築けたと思います。
いつかまた一緒に、次の目的地や夢の景色を探したいです。